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📰 今回のニュース(日本経済新聞 2026年6月6日)

2026年3月、国土交通省が普及を後押しする「残価設定型住宅ローン」が本格導入された。住宅価格の高騰・金利上昇で月々の返済負担が増す中、「月の返済を抑えながら住宅を持てる」新たな仕組みとして注目されている。

そもそも「残価設定型住宅ローン」とは?

まず、普通の住宅ローンとの違いから説明しよう。

【通常の住宅ローン】
5,000万円の家を買うなら、5,000万円をまるごとローンで借りて返済する。シンプルだ。

【残価設定型住宅ローン】
「20年後にこの家は3,000万円で売れるだろう」と事前に設定する(これが残価)。そして5,000万円-3,000万円=2,000万円だけローンを組む。月々の返済は2,000万円分だけなので、通常より大幅に安くなる——これが売りだ。

通常の住宅ローン
5,000万円
全額を返済
毎月コツコツ返済
残価設定型住宅ローン
返済対象
2,000万円
残 価
3,000万円
(将来の売却想定額)
A|返済額軽減
(住み続ける)
B|買い取り
(残債0円)
⚠️ 利息は残価を含む5,000万円全体にかかります
(総支払額は通常ローンより多くなる場合があります)
通常ローンと残価設定型の違い(概念図)

この仕組み、どこかで見たことはないだろうか。スマートフォンの「2年後に端末を返せば月々格安」という残価設定——発想の根っこは同じだ。自動車ローンでも広まり、今度はついに住宅にまで浸食してきた。「将来の価値を担保に今の負担を軽くする」構造は一致している。

スマートフォン・車・住宅ローン——3つの残価設定契約

ローン満了後の「2つの選択肢」

残価設定月(事前に決めたタイミング)が来たら、2つのオプションから選べる。

A
返済額軽減オプション
月々の返済額がさらに軽減される。長期間が経過すると利払いのみになる場合もある。将来的に「新型リバースモーゲージ(自宅を担保に老後資金を受け取る仕組み)」への転換も可能。
B
買い取りオプション
JTI(国が関与する住みかえ支援機構)が住宅を買い取り、ローン残高が0円になる。Aを選んだ後、任意のタイミングでBへ移行することも可能。

一見、柔軟で魅力的に見える。しかし問題はここからだ。

FPが指摘する「3つの問題点」

問題1|利息は「5,000万円全体」にかかる

月々の返済は2,000万円分で済む。しかし利息は残価3,000万円を含む5,000万円全体にかかり続ける。「月が安い=お得」ではなく、総支払額では通常ローンより多くなる可能性がある。必ず総返済額で比較してほしい。

⚠️ 月々の返済額だけを見て「お得」と判断するのは危険。総返済額・総利息負担をシミュレーションして比較することが必須だ。

問題2|対象は「割高な物件」に限られる

このローンが使えるのは「認定長期優良住宅」のみ。高品質な住宅であることは良いが、通常の物件より購入コストが高くなりやすい。月の返済を抑えた分が、物件価格に上乗せされる形になりかねない。

問題3|「売れない」リスクは購入者が負う

地震・水害・大規模災害で物件が損傷した場合、JTIが想定通りに買い取らないリスクがある。「火災保険があるから大丈夫」と思うかもしれないが、地震保険の保険金は最大でも建物評価額の50%が上限だ。大地震で住宅が大きなダメージを受けても、残りの損害は購入者が自分で負担するしかない。

さらに重要な点がある。国が作った保険制度は銀行の損失をカバーするものであり、購入者を守るものではない。銀行はリスクを回避できる一方、購入者には同等の保護がない——この非対称な構造こそが最大の問題点だ。

⚠️ 非対称なリスク構造
銀行はリスクを保険で回避できる。しかし購入者には同等の保護がない——この「非対称な構造」こそが、この制度の最大の問題点だ。

国が後押しする「背景と本音」

なぜ国土交通省はこの制度を後押しするのか。公式説明は「住宅取得支援」と「住宅ストック型社会への転換」だ。

しかし調べると、もう少し複雑な事情が見えてくる。住宅価格はマンションで2019年比53%上昇。このままでは「高すぎて買えない」層が増え、住宅市場全体が冷え込む。建設業・住宅業界・金融機関にとっても大きな打撃だ。

国が保険制度まで作って銀行を守りながら、リスクは購入者に押しつける——この構造を、消費者はしっかり認識しておく必要がある。

政府の苦しい事情も、わかる。でも——

ここで一度、立ち止まって考えたい。政府の立場も、理解できる部分はある。

住宅価格が高騰し、若い世代がマイホームを持てない社会は、経済の停滞につながる。建設業・金融・不動産が冷え込めば、雇用にも影響する。国として経済を動かし続けなければならない——その苦しい事情は否定しない。

しかしだからこそ、FPとして声を大にして言いたい。

その経済的な課題を解決するコストとリスクが、最終的に住宅購入者に転嫁されていないか?ということだ。

「月々が安くなる」という入口の魅力に引き寄せられ、出口のリスクを十分に理解しないまま契約する——それが一番怖いシナリオだ。

国が後押しする制度だから安心、ではない。「誰が得をして、誰がリスクを負うのか」を冷静に見る目を、消費者は持ってほしい。

FPとして伝えたいこと

FPが夫婦にローンについて説明する相談シーン

住宅ローンは「月の返済額」だけで選んではいけない。以下の3点を必ず確認しよう。

総支払額はいくらか(利息込みで通常ローンと比較する)

将来の選択肢は狭まらないか(災害・市場低迷で売れないリスク)

リスクは誰が負う構造になっているか

新しい仕組みには必ず「誰かが得をする理由」がある。「国が推進しているから安心」と鵜呑みにせず、契約前にFPや専門家に相談することを強くお勧めしたい。

まとめ

  • 残価設定型住宅ローンは月払いが安く見えるが、利息は総額にかかる
  • 認定長期優良住宅限定で物件コストが割高になりやすい
  • 地震保険は最大50%上限——災害時のリスクは購入者が負う
  • 銀行のリスクは保険でカバーされるが、購入者のリスクはカバーされない
  • 政府の経済的事情は理解できるが、リスク構造を正しく把握することが重要
  • 「月が安い=お得」ではなく、総コストとリスクで判断すること

「残価設定型ローン、実際に自分に合うか判断したい」という方は、ぜひFP相談でシミュレーションしてみましょう。通常ローンとの比較、将来のライフプランに照らした検討を、一緒に行います。