日本経済新聞の「ドコモ、低料金から品質へ」という見出しを見て、まず違和感を覚えました。「ドコモは低料金だっただろうか。今も高い料金を払っている人は多いのではないか」と思ったからです。
もう一つ引っかかったのが、「品質へ」という言葉です。ドコモといえば、つながりやすさを評価し、多少高くても安心だからと使い続けてきた方もいるでしょう。その品質を、これから改善すると言うのです。
私はこれまでも、高い料金プランを使い続けているなら、格安SIMやサブブランド、オンライン専用プランを含めて比較してほしいとお伝えしてきました。今回も、その考えは変わりません。
品質を理由に高い料金を払うなら、その価値を実際に受け取れているのか。値上げを受け入れる前に、自分の契約を確かめたいと思います。
12月から値上げ。「低料金から」は、家計の実感と合うのか
NTTドコモは、2026年12月1日から、一部の既存料金プランを値上げします。日経記事によると、対象は「eximo(エクシモ)」など50を超えるプランで、約3,000万人。月額110〜550円、平均7%の値上げとされています。

公式発表で確認できる主な増額は、次のとおりです。金額は税込です。
| 料金プラン | 月額の増額 | 12か月分の負担増 |
|---|---|---|
| eximo | 550円 | 6,600円 |
| irumo(3・6・9GB) | 330円 | 3,960円 |
| ahamo | 165円 | 1,980円 |
| irumo(0.5GB) | 110円 | 1,320円 |
年間の金額は、増額が12か月続いた場合です。2026年中は12月利用分からの改定となります。自分のプランがいくら上がるかは、契約内容ごとに確認する必要があります。
対象は新規受付を終えたプランが中心ですが、ahamoも含まれています。ahamoはデータ容量や料金の仕組みも変わり、40GB・60GB・120GBの3段階制になります。オンライン専用だから、今後も同じ条件で使えると思い込まない方がよいでしょう。
一方、「低料金から」という見出しには、背景があります。2021年ごろには、携帯料金の引き下げを求める動きの中で、各社が低料金プランを打ち出しました。ドコモも2021年3月、20GB・税込2,970円のahamoを提供しています。
ですから、値下げ競争がなかったわけではありません。ただ、その時期があったことと、今の自分の携帯代が安いかどうかは別です。高い主力プランを長く使っている方には、「低料金から」という言葉が実感と合わないのではないでしょうか。
大切なのは、会社側の競争の歴史よりも、自分が毎月何に、いくら払っているかです。
高い料金を支える「つながりやすさ」は、今も得られているか
ドコモの通信品質については、日経記事も課題を伝えています。2023年以降、通信品質や料金プランの競争力の低下が目立つようになり、ドコモは基地局整備を進めてきました。それでも、記事の中で斎藤副社長は、通信品質の改善は「道半ば」と述べています。
第三者の調査を見ても、ドコモなら何でも一番という状況ではありません。
Opensignalの2026年4月のレポートでは、auが「一貫した品質」と「信頼性」で単独首位でした。一方、ドコモはカバレッジ(人が生活する地域での電波のカバー状況)や5Gダウンロード速度に強みがあります。つながる範囲、実際の通信速度、安定して用事を済ませられるかは、それぞれ別の評価です。

電波の表示が出ていても、必要なときにページが開かない、決済が進まないのであれば、利用者にとっては困ります。「エリアが広い」という説明だけでは、毎日の使いにくさは解消されません。
もちろん、全国の調査結果が、そのまま自宅や通勤経路での使いやすさを決めるわけでもありません。場所や時間帯、使う端末によって、通信の状態は変わります。
だからこそ、昔の評判だけでなく、今の自分の生活で確かめることが必要です。自宅、職場、通勤経路で不満なく使えているか。混雑する時間に、必要な操作ができているか。その実感を基に判断したいところです。
つながりやすさを理由に高い料金を払ってきた利用者に、改善が道半ばのまま追加の負担を求める。その説明だけで納得してもらえるとは、私は思いません。
会社の収益改善と、利用者が払い続ける理由は別
日経記事によると、ドコモの携帯電話市場でのシェアは、2021年3月の37%から2026年3月には33%へ低下しました。消費者向け通信事業も、2026年4〜6月期まで10四半期連続の営業減益とされています。
会社には、物価や人件費の上昇に対応し、設備投資を続け、収益を立て直したい事情があります。通信網を維持するために費用がかかることも分かります。
ただ、会社の収益を改善したいという事情は、利用者が今の契約を続ける理由にはなりません。自分が必要とする通信やサービスに、その料金を払う価値があるかどうかは、家計の側で判断することです。

今回の値上げは、KDDIが2025年8月、ソフトバンクが2026年7月に値上げした後、ドコモが続く形となりました。各社の料金が同じになったという意味ではありませんが、大手3社とも値上げに動いたことは、利用者にとって重い事実です。
私は、利用者が競争の恩恵を十分に感じられるのか、疑問に思います。品質改善やサービスの充実を掲げるなら、料金を上げたという結果だけでなく、何がどれほど良くなったかを示してほしいものです。
新規受付を終えたプランを使い続ける人にも、負担増は及びます。長く契約していることが、自分に合う料金を保証してくれるわけではありません。
高い料金を取るなら、それに見合う品質とサービスを示す。それができていないなら、利用者が契約を見直すのは当然です。
明細を開き、家族全体でいくら変わるかを比べる
昔から使っている、家族も同じ会社だから、変更が面倒だから。大手の契約を続ける理由には、さまざまなものがあります。
ただ、その理由が、今の使い方にも合っているかは一度確かめてみてください。確認の出発点は、広告の最安料金ではなく、自分の明細です。

通信料・端末代・オプションを分ける
携帯電話の請求には、通信料のほか、端末の分割代金、通話料、補償、動画サービスなどが含まれていることがあります。合計額だけでは、どこを変えれば下がるのかが分かりません。
まずは内訳を分け、使っていないオプションや、別の契約と重複しているサービスがないかを確認します。通信会社を変えても、購入済み端末の残りの代金までなくなるわけではありません。
データ容量は、実際の使用量から選ぶ
直近数か月のデータ使用量を確認します。自宅や職場でWi-Fiを使い、毎月少量しか通信していないのに、大容量のプランを続けていないでしょうか。
反対に、外出先で動画や仕事に多く使う方なら、安さだけで容量を減らすと不便になります。必要な容量と通話の使い方を決めてから、候補を比べる方が整理しやすくなります。
家族割・セット割は、変更後の合計で確かめる
「家族割があるから安い」と思っていても、割引後の金額が他社より安いとは限りません。一方で、一人が移ると、残る家族の割引が変わる場合もあります。
携帯電話だけでなく、光回線などとのセット割も含めて、変更前後の家族全体の支払額を比べます。割引を得るために、必要以上に高い別サービスを続けていないかも見てください。
仮に夫婦2人の合計が月2,000円下がれば、1年で2万4,000円です。今回の値上げ額だけでなく、もともとの料金を見直す意味があります。
通信費は、一度契約を整えれば、その効果が毎月続く固定費です。食費の買い物をその都度我慢する前に、こうした支出から確認したいと思います。
安いプランを選ぶことと、回線を変えることは別
乗り換える際は、格安SIM、サブブランド、オンライン専用プランを、ひとまとめに考えないことも大切です。
MVNOと呼ばれる格安SIMの事業者は、大手通信会社の設備を借りてサービスを提供しています。一方、UQ mobileはKDDI、ワイモバイルはソフトバンクが提供するブランドです。ahamoも、ドコモ自身が提供する料金プランです。

そのため、大手の高いプランを見直すことは、必ずしも大手の会社そのものから離れることではありません。同じ会社の別ブランドやプランへの変更で、負担を減らせる場合もあります。
ただし、通信品質にも不満があるなら、料金を変えるだけでなく、どの回線を使うかまで確認します。ドコモ回線の無線網の混雑や障害が原因であれば、同じ回線を使う別のサービスへ移っても、その影響を受ける可能性があります。
また、同じ回線を使っていても、通信速度がすべて同じとは限りません。MVNOでは事業者側の設備の混雑なども関係します。会社名や回線名だけで、いつでも快適に使えると決めつけない方がよいでしょう。
候補を選ぶときは、自宅・職場・通勤経路で使えるか、今の端末が対応しているか、申し込みや初期設定を自分でできるかを確認します。店舗での支援が必要な方は、その窓口や費用も含めて比べてください。
安いプランに変えるために、毎日の使い勝手まで我慢する必要はありません。一方、必要のない大容量や付帯サービスのために、高い料金を払い続ける必要もありません。自分に必要なものを残し、料金に見合わない部分を見直すことが大切です。
まとめ ― 昔の安心感だけで、高い契約を続けない
「ドコモだから安心」「家族も同じだからお得」。その判断が今も当てはまるかは、料金と実際の使い勝手で確かめる必要があります。

私は、昔から使っているという理由だけで、大手の高いプランを払い続けることは勧めません。格安SIMやサブブランド、オンライン専用プランも比較し、必要な通信を確保しながら支出を減らせるなら、変更を考えてよいと思います。
通信会社には、値上げの理由を説明するだけでなく、利用者が実感できる品質改善を求めたい。利用者の側も、その説明を聞くだけで契約を続けず、自分にとって払う価値があるかを判断する。その両方が必要です。
品質を理由に高い料金を払うなら、その品質を今の暮らしで得られているか。まずは明細を開き、惰性で続けている契約がないかを確かめてみてください。
参考資料
- 日本経済新聞「ドコモ、低料金から品質へ 12月平均7%値上げ 通信改善に注力」(2026年9月27日)
- NTTドコモ「『ahamo』をリニューアル、『ドコモ mini2』『ドコモ MAX 60歳以上割』の提供を開始、および一部料金プランの月額料金を改定」(2026年9月25日、別紙1・別紙4)
- NTTドコモ「『ahamo』の月額料金を税別2,700円(税込2,970円)に改定」(2021年3月1日)
- Opensignal「Japan, April 2026, Mobile Network Experience Report」(測定期間:2026年1月1日〜3月31日)
- Opensignal「最新の日本モバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポートを発表」(2026年4月28日)
- UQ mobile「iPhoneを格安SIMで使う」(auとの通信仕様について)
- ソフトバンク「『ソフトバンク』『ワイモバイル』『LINEMO』でRCSを2026年春に提供開始」(2026年2月19日、サービスの提供主体について)
- インターネットイニシアティブ「Internet Infrastructure Review Vol.53」(MNO・MVNO間のネットワーク接続構成について)
※料金・制度・サービスの説明は2026年10月時点の情報です。料金表の増額は税込で、年間の負担増は12か月分として計算しています。通信品質の調査結果は記載した測定期間のもので、個々の場所・時間・端末での利用状況を保証するものではありません。契約変更前に、改定後の料金、割引条件、端末の対応状況、残債や手数料などを各社の公式案内で確認してください。紹介した通信会社との間に広告・紹介等の関係はありません。