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家計管理は、人生を小さくするためではありません。自分や家族にとって本当に価値のあることに、お金を使えるようにするための土台です。

家計管理は、節約だけではない

家計管理というと、真っ先に「節約」を思い浮かべる方が多いかもしれません。

食費を削る。電気をこまめに消す。欲しいものを我慢する。

もちろん、無駄な支出を減らすことは大切です。実際に、これまでお金のことで生活に困っている方の相談を受ける中では、まず支出を見直すことが大きなテーマになることも多くありました。

ただ、家計管理の目的は、何でも削って、ただお金を残すことではありません。

家計管理の大きな目的は、現在の収入と支出を把握し、自分の状況に合ったお金の使い方を考えることです。

夫婦がレシートや家計資料を整理しながら支出を見直す様子
家計管理は、我慢を増やすためではなく、お金の使い方を整理するためのものです。

無駄があれば削る。でも、余裕があるなら、価値のあることにはきちんと使う。この両方を考えることが、本当の家計管理だと思います。

家計の状況は、人によってまったく違う

人によって、家計の状況はまったく違います。支出を減らすことが最優先の方もいれば、反対に、十分な資産があるのに不安が強くてお金を使えない方もいます。

特に高齢世帯では、資産があってもなかなか使えない方が少なくありません。将来が不安だから使えない。子どもに残したいから使えない。何となくもったいなく感じて使えない。

その気持ちもよく分かります。

若い家族と高齢夫婦それぞれが家計について考える比較イメージ
家計の悩みは、世帯や年齢によって違います。削るだけでなく、活かし方も考える必要があります。

金融庁資料で見る、年齢による資産と負債の違い

金融庁の資料では、金融資産が高齢世帯に大きく偏っていることが示されています。

1999年時点では、世帯主70歳以上が金融資産の18.4%、60~69歳が29.0%で、60歳以上の合計は47.4%でした。それが2025年の推計(2019年の報告書時点)では、70歳以上が40.4%、60~69歳が25.6%で、60歳以上の合計は66.0%となっています。

つまり、1999年には金融資産の半分弱だった60歳以上の割合が、2025年には約3分の2まで高まる見込みです。特に70歳以上の割合は、18.4%から40.4%へ大きく上昇しています。

金融資産は、60歳以上の世帯へ大きくシフト

金融庁資料の数値を、1999年と2025年推計で比較しやすいように再構成しています。

1999年
47.4%
2025年推計
66.0%
60~69歳
70歳以上
60歳未満
60~69歳70歳以上60歳以上合計
1999年29.0%18.4%47.4%
2025年推計25.6%40.4%66.0%

出典:金融庁「高齢社会における資産形成・管理」報告書をもとに作成。金融庁ページ

一方で、同じ金融庁資料には、世帯主の年齢階級別の貯蓄・負債の状況も示されています。若い世代は住宅ローンなどの負債を抱えやすく、貯蓄より負債が大きい時期があります。反対に、年齢を重ねるにつれて住宅ローンなどの負債は減り、貯蓄が増えていく傾向があります。

若い世代は負債が多く、高齢世帯は負債が少ない

貯蓄現在高と負債現在高を、年齢階級ごとに比較した図表です。単位は万円です。

30歳未満
貯蓄361
負債468
負債保有率 47.3%
30~39歳
貯蓄600
負債1,056
負債保有率 62.5%
40~49歳
貯蓄924
負債961
負債保有率 64.0%
50~59歳
貯蓄1,596
負債607
負債保有率 56.0%
60~69歳
貯蓄2,129
負債267
負債保有率 28.8%
70歳以上
貯蓄2,059
負債115
負債保有率 14.7%

出典:金融庁「高齢社会における資産形成・管理」報告書をもとに作成。元資料は総務省「全国消費実態調査」等を基にしています。

こうして見ると、日本では高齢世帯に金融資産が多く集まっている一方で、そのお金を十分に活かしきれていない面もあるのではないかと感じます。

金融資産に関する資料やグラフを確認する様子
統計資料を確認すると、年齢によって資産と負債の状況が大きく異なることが分かります。

お金は、使う時期によって引き出せる価値が変わる

もちろん、老後資金や医療費、介護費への不安を無視して使ってよいという話ではありません。将来に備えることは必要です。

ただ、お金は天国に持っていくことはできません。生きているうちに、自分や家族にとって価値のあることに使ってこそ、お金は意味を持ちます。

年齢を重ねるほど、体力や気力、購買意欲は少しずつ変化していきます。若い頃なら自然に楽しめた旅行や趣味も、年を重ねると体力的に難しくなることがあります。

だからこそ、同じ100万円でも、使う時期によって引き出せる価値は変わります。

たとえば、同じ家族旅行に使う100万円でも、30代や40代で子どもと一緒に出かける旅行と、80代になってから夫婦で出かける旅行では、感じる感動や得られる経験の質は同じではないかもしれません。

家族で過ごす時間、趣味、学び、健康づくり、親孝行。こうしたお金の使い方には、その時期だからこそ生まれる価値があります。

家族旅行で思い出を作る日本人家族の様子
同じ金額でも、使う時期によって得られる経験や思い出の価値は変わります。

使うお金と、残すお金を分けて考える

だからこそ、若い方も、年齢を重ねた方も、家計管理をする価値があります。

若い方にとっては、使えるお金と貯めるお金を早めに把握し、購買意欲や行動力があるうちに価値ある経験へお金を使うため。年齢を重ねた方にとっては、不安だけでお金を抱え込みすぎず、残りの人生で本当に大切なことにお金を活かすためです。

大切なのは、使わないことでも、使いすぎることでもありません。今使ってよいお金と、将来のために残すお金を分けて考えることです。

使うお金と残すお金を整理している夫婦の手元
使うお金、貯めるお金、備えるお金を分けることで、判断がしやすくなります。

不安があるなら、ライフプランで確認する

その判断を支えるのが、家計管理であり、さらにその先にあるライフプランです。

もし老後の不安があるから使えないのであれば、ライフプランを作って、将来の収入、支出、資産の見通しを確認することが役に立ちます。「これくらい残しておけば大丈夫」と分かれば、安心して使えるお金も見えてきます。

また、子どもにお金を残すことだけが、親としてできることではありません。人生の生き方や、お金の活かし方を伝えていくことも、大切な財産になります。

高齢夫婦がライフプラン資料を見ながら安心して話し合う様子
将来の見通しが分かると、安心して使えるお金も見えてきます。

お金は、使って初めて価値を生むものです。

家計管理は、人生を小さくするためのものではありません。むしろ、自分や家族にとって本当に価値のあることに、お金を使えるようにするための土台です。