新聞記事で、違法なSNS広告への対応を広げる動きが紹介されていました。
著名人になりすました投資勧誘、偽の広告、偽サイトへの誘導など、SNSを入口にした詐欺被害は、今も深刻な問題になっています。
国や事業者が対策を強めることは大切です。
ただ、それだけで被害を完全に防げるわけではありません。
最後に自分の資産を守るのは、やはり自分自身の判断です。
今回考えたいのは、SNS詐欺広告にだまされないために、私たち一人ひとりがどんな意識を持つべきかということです。
なぜ今、そこまで注意が必要なのか
注意喚起だけを聞くと、「気をつけましょう」で終わってしまうかもしれません。
しかし、今回の新聞記事を見ると、これは単なる一般論ではなく、今まさに対策が強化されている問題だと分かります。
警察庁の資料では、2025年のSNS型投資・ロマンス詐欺は、認知件数、被害額ともに2024年から大きく増えています。
まず全体像を見ると、次のとおりです。
| 項目 | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| SNS型投資・ロマンス詐欺の認知件数 | 10,237件 | 15,168件 | +48.2% |
| SNS型投資・ロマンス詐欺の被害額 | 1,271.9億円 | 1,834.3億円 | +44.2% |
| うちSNS型投資詐欺の認知件数 | 6,413件 | 9,523件 | +48.5% |
| うちSNS型投資詐欺の被害額 | 871.1億円 | 1,288.0億円 | +47.9% |
表を見ると、SNS型投資詐欺だけでも、前年と比べて件数も被害額も約1.5倍になっています。
これは、単に「詐欺に気をつけましょう」という話ではありません。
被害が現実に増えており、しかも金額が非常に大きい問題だということです。
さらに注目したいのは、被害に至る入口の変化です。
警察庁資料では、SNS型投資詐欺の当初接触ツールについて、2024年と2025年を比べると次のようになります。
| 当初接触ツール | 2024年 | 2025年 | 前年比 |
|---|---|---|---|
| 1,481件 | 1,934件 | +30.6% | |
| YouTube | 58件 | 1,229件 | +2,019.0% |
| LINE | 1,120件 | 1,211件 | +8.1% |
| 投資のサイト | 659件 | 1,071件 | +62.5% |
| TikTok | 417件 | 830件 | +99.0% |
| 997件 | 822件 | -17.6% | |
| X(旧Twitter) | 408件 | 815件 | +99.8% |
中でも目立つのが、YouTubeの伸びです。
表のとおり、YouTubeを入口とした認知件数は、他のツールと比べても突出した伸びになっています。
また、警察庁資料では、SNS型投資詐欺の被害者は50代が最多とされています。
これは、決して高齢者だけの問題ではありません。
なお、年齢に関係なく全体で見ると、1件あたりの被害額は約1,350万円です。
一度被害に遭うと、家計に与える影響は非常に大きいと言えます。
これまで詐欺広告というと、SNSの投稿やダイレクトメッセージ、怪しい投資サイトを思い浮かべる方が多かったかもしれません。
しかし、動画を見るために日常的に開いているYouTubeでも、投資詐欺などへの接触が大きく増えています。
つまり、怪しいサイトを自分から探しに行った人だけが被害に遭っているわけではありません。
普段使っているSNSや動画サービスの中で、自然に広告や投稿が目に入り、そこから詐欺に誘導される可能性があるということです。
だからこそ、総務省もSNS事業者に対し、違法広告などへの対応を広げる方向に動いています。
ただし、こうした指針に罰則があるわけではありません。
事業者側の対策が進むことは大切ですが、それだけで被害を完全に防げるわけではないという点も忘れてはいけません。
これまで問題になってきた、著名人になりすました投資勧誘だけではありません。
特殊詐欺などの被害金を口座間で動かす「送金バイト」の募集とみられる投稿、化粧品や医療機器の効能をうたう薬機法違反の疑いがある広告など、削除要求の対象を広げる流れになっています。
ここまでの金額になると、「少し騙された」では済みません。
長年かけて貯めたお金、退職金、老後資金、家族のための資金が、大きく損なわれる可能性があります。
今、あえて注意喚起が必要なのは、被害額が大きいだけでなく、詐欺の入口がより日常的なサービスに入り込んできているからです。
「自分は大丈夫」と思っている人ほど危ない
詐欺被害の話を聞くと、多くの方は「自分は大丈夫」と思うかもしれません。
明らかに怪しい広告には引っかからない。
うまい話には乗らない。
知らない人からの勧誘は信用しない。
普段の冷静な状態であれば、その通りだと思います。
しかし、詐欺は、こちらが万全な状態のときだけを狙ってくるわけではありません。
仕事で疲れているとき。
家族のことで不安を抱えているとき。
収入や借金の返済など、お金の不安で切迫しているとき。
投資や老後資金について、ちょうど気になっていたとき。
こうしたタイミングで、自分の不安にぴったり合うような広告やメールが目に入ると、普段なら疑える人でも、判断が鈍ることがあります。
私の知る限りでも、ITリテラシーが高く、普段ならまず騙されないような方が、疲れや油断の中で実際に詐欺に遭ってしまった話を聞いたことがあります。
詐欺に遭う人は、知識がない人だけではありません。
タイミング、疲労、不安、思い込みが重なると、誰でも判断を誤る可能性があります。
疲れているときは、重要な判断をしない
詐欺広告や詐欺メールの怖いところは、判断を急がせることです。
「今だけ」
「残りわずか」
「急いで登録」
「このままだと損をする」
「有名人も利用している」
こうした言葉で、冷静に考える時間を奪ってきます。
だからこそ、少しでも迷ったときは、その場で判断しないことが大切です。
疲れているとき、夜遅い時間、気持ちが焦っているときは、特に注意が必要です。
投資の申し込み、口座開設、送金、クレジットカード情報の入力、個人情報の登録などは、その場で決めない。
一晩置く。
翌日にもう一度見る。
家族や信頼できる人に相談する。
公式サイトから自分で検索し直す。
これだけでも、かなりリスクを下げることができます。
詐欺被害を防ぐためには、知識だけでなく「判断を先送りする勇気」も必要です。
SNS広告は、入口として疑って見る
SNS広告のすべてが悪いわけではありません。
ただ、投資、資産運用、副業、暗号資産、健康食品、美容商品など、お金や不安に関わる広告は、最初から少し疑って見るくらいでちょうどよいと思います。
特に注意したいのは、著名人の写真や名前を使った広告です。
有名人が勧めているように見える。
テレビ番組やニュース記事のように見える。
大手企業や公的機関のように見える。
こうした見せ方でも、本物とは限りません。
むしろ、信頼感を利用するために、あえて著名人や有名企業の名前を使っているケースがあります。
警察庁も、こうした広告を見分けるポイントとして、動画の口の動きと声が合っていない、未認証アカウントである、LINE登録へ誘導される、「必ずもうかる」「元本保証」といった表現がある、といった点に注意を促しています。
実際にSNS広告を見るときは、次のような点を確認するだけでも、かなり危険な広告を避けやすくなります。
特に、広告からLINE登録へ誘導される流れは要注意です。
広告で興味を引き、LINEなどの閉じた連絡手段に移してから、投資話や送金へ誘導する流れが多く見られます。
警察庁資料でも、SNS型投資詐欺の被害時の連絡ツールはLINEが9割超とされています。
広告そのものだけでなく、その後にLINEへ移動させる流れまで含めて警戒する必要があります。
広告を見て興味を持ったとしても、その広告から直接申し込まないことです。
本当に必要だと思うなら、公式サイトを自分で検索し、URLや運営者情報を確認する。
金融商品であれば、金融庁や登録業者の情報も確認する。
「広告を見た流れのまま申し込まない」
この習慣は、かなり大切だと思います。
広告を減らすことも、防衛策の一つになる
詐欺広告に触れる機会を減らすことも、一つの防衛策になります。
SNSや動画サービスは、無料で使える代わりに広告が表示されるものが多くあります。
もちろん、すべてを有料版にする必要はありません。
以前から、家計管理では不要なサブスクを見直すことが大切だとお伝えしてきました。
ただし、毎日のように長時間使っているサービスであれば、広告を非表示にできる有料版を検討する価値はあります。
たとえば、動画サービスやSNSで詐欺広告を頻繁に目にするなら、有料版にして広告接触を減らすことも考えられます。
ただし、有料版にすれば安心というわけではありません。
警察庁資料では、SNS型投資詐欺の当初接触手段は、広告が約4割、ダイレクトメッセージが約37%、投稿が約13%とされています。
つまり、広告を減らしても、ダイレクトメッセージや投稿など、広告以外の入口は残ります。
有料版は万能な対策ではなく、あくまで広告接触を減らすための一つの方法です。
一方で、今回特に目立つYouTubeについては、当初接触の多くが広告経由とされています。
2025年のYouTubeを入口とした1,229件のうち、バナー等広告によるものは1,024件で、約83%を占めています。
その意味では、よく使う動画サービスで広告接触を減らすことには、一定の防衛効果があると考えられます。
これは、単に快適に使うためだけではありません。
詐欺広告を見る機会を減らす。
不要な広告に時間を奪われない。
不安をあおる情報に触れる回数を減らす。
こう考えると、利用頻度の高いサービスに限って有料化することは、家計管理と矛盾するものではありません。
何でもサブスクを増やすという話ではなく、リスクを減らし、時間を守るために必要なものだけを選ぶという考え方です。
資産形成には「守る力」も欠かせない
お金の話というと、どう増やすかに目が向きがちです。
NISA、投資信託、預金金利、資産運用。
もちろん、資産を増やす力は大切です。
しかし、それと同じくらい、資産を守る力も大切です。
どれだけ一生懸命働いて貯めたお金でも、一度詐欺に遭えば、一瞬で失う可能性があります。
しかも、詐欺被害はお金だけの問題ではありません。
自分を責めてしまう。
家族との関係が悪くなる。
人を信用できなくなる。
将来への不安が一気に大きくなる。
こうした精神的なダメージも非常に大きいものです。
だからこそ、詐欺に遭わないことは、家計管理の基本でもあります。
増やす前に、まず守る。
この意識を持っているかどうかで、家計管理の安全性は大きく変わります。
資産形成は、増やす力と守る力の両方があって、初めて安定して続けられるものだと思います。
まとめ:注意一秒、被害一生
「注意一秒、怪我一生」という言葉があります。
お金の世界でも、同じことが言えると思います。
一度の油断で、これまで築いてきた資産を大きく失うことがあります。
逆に言えば、少し立ち止まるだけで、防げる被害もあります。
SNS広告を見たら、すぐに信じない。
お金を動かす前に、一晩置く。
公式情報を自分で確認する。
家族や信頼できる人に相談する。
急がされても、その場で判断しない。
疲れているときは、大事なお金の判断をしない。
家計管理は、節約や貯蓄だけではありません。
自分と家族の資産を守ることも、非常に大切な家計管理です。
せっかく築いてきたお金を、詐欺で無駄に減らさないようにする。
そのためにも、「自分は大丈夫」と思い込まず、日頃から少しだけ警戒心を持っておきたいですね。
参考資料
- 日本経済新聞「違法SNS広告 対象拡大」
- 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」