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新聞記事で、単身高齢者への終活支援について取り上げられていました。

内容は、身寄りがない高齢者に対して、社会福祉協議会などが入院手続きや死後事務などを支援できるようにする動きです。

これまで、身寄りのない高齢者が入院や施設入所をするとき、身元保証人や緊急連絡先、医療費の支払い、亡くなった後の葬儀や納骨、家財処分などを誰が担うのかが大きな課題になっていました。

民間の終身サポートサービスもありますが、費用が高額になる場合があり、生活に余裕がない方には利用しにくい面があります。

そこで、2026年6月に改正社会福祉法が成立し、社会福祉協議会などが低額または無料で、日常生活支援、入院・入所手続き、死後事務などを支援する事業を行えるようになります。施行は2028年4月の見通しです。

単身高齢者に広がる終活支援。身寄りがなくても安心できる社会に近づくか

改正法では、経済的に困窮している人などに対して、一定の資力条件のもとで無料または低額で提供される方向です。

私は、これはとても大切な動きだと感じました。

自治体で生活困窮者支援(家計改善支援)に関わってきた中で、単身で身寄りがなく、高齢で、生活にも不安を抱えている方を実際に見てきたからです。

お金の問題、住まいの問題、医療の問題、介護の問題、身元保証の問題、死後の手続きの問題。

こうした課題は、一つひとつ別々に見えるかもしれません。

しかし、本人の生活の中では、すべてつながっています。

だからこそ、今回のような制度の拡充は、これからの社会にとって欠かせないものだと思います。

地域包括支援センターだけでは、すべてを担いきれない

高齢者の相談先として、地域包括支援センターがあります。

地域包括支援センターは、高齢者の総合相談、権利擁護、介護予防、関係機関との連携などを担う、とても重要な窓口です。

困っている高齢者がいたときに、まず相談を受け止め、必要な制度や支援機関につなぐ役割があります。

ただし、地域包括支援センターが、本人の代わりに身元保証人になるわけではありません。

入院費の支払いを代行したり、葬儀や納骨、家財処分まで実行したりするところまで、通常の業務として担うわけでもありません。

つまり、包括支援センターは大切な入口ではありますが、実際の生活支援や死後事務まで一手に担う仕組みではないということです。

今回の記事で取り上げられている社会福祉協議会などの支援は、その先の「実際に誰が動くのか」という部分を補うものだと思います。

相談を受ける場所はあっても、実際に手続きを進める人がいない。

この空白を埋めることが、今回の制度の大きな意味ではないでしょうか。

地域包括支援センターと、今回の終活支援の違いを整理すると、次のようになります。

項目 地域包括支援センター 社会福祉協議会などの終活支援
主な役割 高齢者の総合相談・制度へのつなぎ 入院手続き、生活支援、死後事務などの実行支援
支援の性格 相談・調整・見立て 実際の手続きや支援を担う
対象 高齢者全般 身寄りがない、低所得など支援が必要な高齢者
得意なこと 困りごとの整理、制度案内、関係機関との連携 家族が担ってきた実務の一部を支える
限界 身元保証人や死後事務の実行主体にはなりにくい 人員・財源・対応範囲の整備が必要

つまり、地域包括支援センターが不要になるわけではありません。

むしろ、地域包括支援センターが相談を受け止め、必要に応じて社会福祉協議会などの具体的な支援につなぐ流れが大切だと思います。

これまでは、誰かの善意で何とかしていた

これまでも、身寄りがなく、入院や施設入所、死後の手続きに困る方はいました。

ただ、以前は遠い親戚、職場の関係者、友人、近所の知人など、誰かが何とか対応していた面があったのではないかと思います。

本人に近い誰かが、病院との連絡を取る。

入院に必要な書類を一緒に確認する。

役所や福祉機関との間に入る。

亡くなった後の対応について、何とか動いてくれる。

これまでは、誰かの善意で何とかしていた

そうした支えが、制度というよりも、人のつながりや善意によって成り立っていた部分があったと思います。

しかし、高齢化が進み、単身世帯が増え、地域や家族のつながりも以前より薄くなっています。

これまで善意で支えていた仕組みだけでは、もう回らなくなってきている。

今回の制度の動きは、そうした現実を国がようやく制度として受け止め始めたものだと感じます。

制度のすき間に落ちる人がいる

私が生活困窮者支援に関わっていたときにも、制度と制度の間に落ちてしまう方を見てきました。

生活困窮者支援、地域包括支援センター、社会福祉協議会、医療機関、介護事業所、成年後見制度、行政の各部署。

支援機関はいろいろあります。

しかし、それぞれに役割や責任の範囲があります。

そのため、現場では、

制度のすき間に落ちる人がいる

「ここまではできます」

「ここから先は別の機関に相談してください」

「この制度では対象になりません」

ということが起こります。

もちろん、各機関の職員が冷たいという話ではありません。

むしろ、多くの現場職員は限られた人員と時間の中で、何とか支えようとしています。

ただ、範囲を超えた対応をして何か問題が起きた場合、なぜそこまで関わったのかと責任を問われる可能性があります。

そのため、どうしても慎重になり、リスクを避ける動きになりやすい面があります。

本人から見ると、あちこちに相談しているのに、なかなか問題が前に進まない。

支援者から見ると、助けたい気持ちはあっても、制度上どこまで踏み込めるのか分からない。

こうした状態が、これまで少なくなかったのではないかと思います。

民間サービスだけでは、使える人が限られる

身元保証や死後事務を支援する民間サービスもあります。

身元保証、日常生活支援、任意後見、死後事務、葬儀や納骨、家財処分などを一括して支援するサービスです。

こうしたサービスは、必要な方にとって大きな安心につながります。

一方で、費用が高額になる場合があります。

契約時の費用、預託金、月額費用、サービス利用料など、内容によってはまとまったお金が必要になります。

記事では、民間の高齢者等終身サポート事業者の場合、契約金が100万円前後から200万円前後、預託金が50万円から、サービス利用料が1時間5,500円などの例が紹介されていました。

法律専門職に見守り、財産管理、任意後見、遺言、死後事務などをセットで依頼する場合も、契約時に30万円前後から70万円前後かかる例があります。

一方で、東京都文京区社会福祉協議会のように、入会金と年会費を合わせて2万5,000円という低額の例も紹介されています。

もちろん、費用は大まかな目安であり、実際には地域、契約内容、本人の状況によってケースバイケースです。

資産や収入に余裕がある方であれば、選択肢の一つになると思います。

しかし、生活に余裕がない単身高齢者にとっては、簡単に利用できるものではありません。

法律や制度は各種あります。

成年後見制度、日常生活自立支援事業、民間の終身サポート、行政の相談窓口。

それぞれ意味のある制度です。

ただ、現場感覚としては、「これはできるが、これはできない」という部分があり、帯に短し、たすきに長しと感じることもあります。

だからこそ、資力が十分でない方でも利用しやすい、公的性格のある支援が必要なのだと思います。

主な支援制度やサービスの違いを整理すると、次のようになります。

支援先・制度 主な役割 得意なこと 限界・注意点
社会福祉協議会などの終活支援 生活支援、入院・入所手続き、死後事務など 低額または無料で利用しやすい可能性がある 人員・財源・対応範囲の整備が必要
民間の終身サポート事業者 身元保証、生活支援、死後事務など 幅広い支援を契約で頼める 費用が高額になる場合がある
日常生活自立支援事業 判断能力に不安がある方の金銭管理等 日常的な金銭管理、福祉サービス利用援助 身元保証や死後事務までは基本的に対象外
成年後見制度 判断能力が低下した方の法的支援 財産管理、契約支援、本人保護 利用開始に時間がかかり、死後事務は限定的

どの制度にも意味があります。

ただ、どれか一つで全部を解決できるわけではありません。

本人の状況に応じて、必要な制度や支援を組み合わせることが大切です。

社会福祉協議会に負担をかけすぎない仕組みも必要

今回の制度では、社会福祉協議会などが重要な担い手になると考えられます。

社会福祉協議会は、地域福祉の現場で非常に大きな役割を担っています。

日常生活自立支援、地域の見守り、生活困窮者支援との連携、ボランティア調整、災害時支援、地域活動の支援など、業務は多岐にわたります。

私自身、社会福祉協議会の現場が多忙であることも見てきました。

決して余裕がある中で仕事をしているわけではありません。

賃金面も含め、十分に報われているとは言いにくい中で、地域のために踏ん張っている方も多いと思います。

社会福祉協議会に負担をかけすぎない仕組みも必要

これは社会福祉協議会だけの問題ではありません。介護、生活困窮者支援、障害福祉、地域福祉など、福祉の現場全体に共通する課題でもあります。

ただ、今回の制度では社会福祉協議会が重要な担い手になるため、さらに身寄りのない高齢者への支援を担ってもらうのであれば、人員、財源、専門性の確保は欠かせません。

制度を作るだけで、現場に負担を押しつける形になってはいけないと思います。

支援を受ける高齢者の安心だけでなく、支援する側が安心して動ける仕組みも必要です。

誰が責任を持つのか。

費用はどうするのか。

契約内容はどう確認するのか。

本人の意思をどう尊重するのか。

トラブルが起きたときに、誰がどう対応するのか。

こうした部分まで整えてこそ、本当に使える制度になると思います。

本人が自分ごととして考えにくい難しさ

この問題が難しいのは、制度だけの話ではないからです。

多くの方は、自分が将来、身寄りがなく、誰かに手続きを頼まなければならない状況になることを、なかなか現実として受け入れたくないと思います。

「自分はまだ大丈夫」

「人に迷惑をかけたくない」

「できれば誰にも頼りたくない」

そう考える方も多いのではないでしょうか。

本人が自分ごととして考えにくい難しさ

特に今の高齢者には、周囲に迷惑をかけたくないという思いが強い方が多いように感じます。

しかし、支援を使うことは、迷惑をかけることではありません。

むしろ、必要なときに必要な制度につながることは、自分の生活を守るだけでなく、周囲の負担を減らすことにもつながります。

何も準備しないまま困った状態になると、結果的に周囲や支援機関が慌てて対応することになります。

早めに相談し、必要な支援につながっておくことは、自分のためでもあり、周囲のためでもあります。

相談しやすく、利用しやすい制度にしてほしい

今回の制度の拡充は、身寄りのない高齢者にとって大きな安心につながる可能性があります。

ただし、制度があっても、知られていなければ使われません。

相談しにくければ、必要な人に届きません。

費用が分かりにくければ、不安で利用できません。

手続きが複雑すぎれば、途中であきらめてしまう方も出ると思います。

だからこそ、制度の中身だけでなく、分かりやすさ、使いやすさ、相談しやすさが大切です。

相談しやすく、利用しやすい制度にしてほしい

地域包括支援センター、社会福祉協議会、生活困窮者支援、医療機関、介護事業所、行政が連携し、本人がどこに相談しても必要な支援につながる。

そのような仕組みになってほしいと思います。

そして、支援を受けることが特別なことではなく、必要な備えの一つとして自然に受け止められる社会になってほしいです。

まとめ:終活支援は、特別な人だけの問題ではない

身寄りのない高齢者への終活支援は、一部の人だけの問題ではありません。

高齢化が進み、単身世帯が増えている今、誰にとっても関係のあるテーマです。

お金があっても、頼れる人がいなければ困ることがあります。

制度を知っていても、実際に動いてくれる人や機関がなければ、手続きが進まないことがあります。

これまで誰かの善意で何とかしてきた部分を、これからは制度として支える必要があります。

まとめ:終活支援は、特別な人だけの問題ではない

そのためには、本人が安心して相談できる仕組みと、支援する側が安心して動ける仕組みの両方が必要です。

終活支援は、人生の最後を整えるだけの話ではありません。

今を安心して生きるための支援でもあります。

今回の制度が、身寄りのない高齢者や生活に不安を抱える方にとって、本当に使いやすいものとして広がっていくことを期待したいと思います。

参考資料

  • 日本経済新聞「単身高齢者、社協も終活支援」(2026年7月11日)
  • 厚生労働省「地域包括ケアシステム」
  • 厚生労働省「身寄りがない人の入院及び医療に係る意思決定が困難な人への支援に関するガイドライン」
  • 厚生労働省「日常生活自立支援事業」
  • 消費者庁「高齢者等終身サポート事業の利用に関する注意点」