「教育費はどう備えればよいですか」
よくいただく質問です。ただ、私はいつも先に、別のことを確認しています。
前回は、教育費、住宅費、老後資金の3つを同じ時間軸に並べて考える必要がある、というお話をしました。
今回は、そのうちの教育費を取り上げます。
教育資金は、人生の3大資金の一つです。私が家計相談を受けてきた中でも、ご家庭による差が特に大きいと感じる資金です。
そして、相談の場でよく聞かれるのが「どう備えればよいですか」という質問です。
私はこの質問に、いつもこう聞き返しています。
備え方は、いつ必要になるかによって変わるからです。
教育費は、家庭によってこれだけ違う
まず、おおよその目安を見ておきます。
文部科学省の「令和5年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校卒業までの15年間にかかる学習費の総額は、すべて公立に通った場合で約614万円、すべて私立に通った場合で約1,969万円です。同じ15年間でも、3倍以上の開きがあります。

大学に進むと、さらに費用がかかります。日本学生支援機構の「令和6年度学生生活調査」では、大学学部の昼間部に通う学生の学費と生活費を合わせた金額は、年間平均で約202万円。前回の令和4年度調査から10.7%増加しています。
また、下宿やアパートなどで暮らす学生は、自宅から通学する学生より、学生生活費が年間で平均54万円高くなっています。
ただし、これらはあくまで平均です。
私が家計相談を受けてきた中でも、小さい頃からインターナショナルスクールに通わせ、教育に多くのお金をかけているご家庭もあれば、すべて公立で進むご家庭もあります。
どちらが良い悪いという話ではありません。それだけ、ご家庭の教育方針や家計状況によって差が生まれるということです。
裏を返せば、家計の見通しを立てることで、教育について選べる道を増やせるということでもあります。
「どう備えるか」の前に「いつ使うか」
では、なぜ金額より先に時期を確認するのでしょうか。
同じ「教育費の準備」でも、上のお子さんの進学まであと3年の場合と、まだ生まれたばかりで大学進学まで18年ある場合とでは、選べる備え方が違うからです。
ここから示す期間と備え方は、あくまで一つの目安です。家計の余裕、すでにある預貯金、リスク許容度などによって、適切な方法は変わります。

5年以内に使うお金
5年以内に使う予定のお金は、預貯金を中心に備えるのが基本です。
数年先に必要になるお金を値動きのある商品に置くと、使う時期に元本が減っている可能性があります。増やすことより、必要なときに必要な額を用意できることを優先します。
10年以上先に使うお金
10年以上先に使うお金は、投資を取り入れる選択肢もあります。
長期・積立・分散を前提に、投資信託などを活用する方法が考えられます。ただし、期間が長ければ必ず増えるわけではなく、投資に元本保証はありません。
教育資金は使う時期を大きくずらしにくいお金です。投資に回すのは、値下がりしても進学計画に影響しない範囲にとどめる必要があります。
いちばん判断が難しい「5年から10年」
5年から10年程度先に使うお金は、投資するには期間がやや短く、全額を預貯金で持つには時間があります。
この場合は、例えば投資と預貯金を半分ずつに分けるなど、両方を組み合わせる方法があります。半分はあくまで一例であり、一律の基準ではありません。
預貯金を持っておけば、使う時期に相場が大きく下がっていても、まずは預貯金から支出し、投資した分をすぐに売らずに済む可能性があります。
ただし、相場が必要な時期までに回復する保証はありません。最初から投資に回しすぎないことが大切です。

投資で備える場合も、必要な時期が近づいたら、少しずつ預貯金へ移していきます。使う直前まで値動きのある商品に置いたままにしないことが、教育資金を守るうえで重要です。
学資保険は、仕組みを確認して選ぶ
預貯金や投資のほかに、学資保険で備える方法もあります。
学資保険には、契約者である親などに万一のことがあった場合、その後の保険料の払い込みが免除される仕組みや、進学時期に合わせてまとまったお金を受け取れる商品があります。

保障と貯蓄を一つの契約で用意できることは、学資保険の特徴です。一方で、保障と貯蓄を分けた場合より内容や費用を比較しにくい面もあります。
すでに必要な死亡保障を別の生命保険で確保している場合は、保障が重複していないか確認が必要です。貯蓄や運用の部分についても、預貯金や投資信託などと分けて準備した場合と比べてみることが大切です。
また、途中で解約すると、受取額が払込保険料の総額を下回ることがあります。返戻率、受け取る時期、保険料払込免除の条件を契約前に確認してください。
学資保険がすべて悪いという話ではありません。自分で貯蓄を続けるのが苦手で、強制的に積み立てられる仕組みが合う方もいます。
ただし、「保障もついているから安心」という理由だけで決めず、ほかの備え方と比較して選ぶことが大切です。
これは以前、「保険で貯蓄する時代」は終わるのかでお伝えした「保険と投資の役割を分けて考える」という考え方にもつながります。
家庭で貯めるお金以外の支えも確認する
教育資金というと、家庭で貯めるお金だけを考えがちです。しかし、児童手当や修学支援制度など、教育費に回せる公的な支えもあります。

児童手当
児童手当は、所得制限がなく、高校生年代まで支給されます。支給額は、お子さんの年齢や第3子以降に該当するかによって変わります。
児童手当は教育費だけを目的とした制度ではありませんが、将来の教育資金として積み立てることもできます。
生活費と分けて貯めたい場合は、受取後に貯蓄用の口座へ移すなど、使い込まない仕組みを作っておくと管理しやすくなります。
高等教育の修学支援新制度
大学や専門学校などへの進学時に利用できる「高等教育の修学支援新制度」には、授業料・入学金の減免と、返還が不要な給付型奨学金があります。
2025年度からは、多子世帯の学生について、所得制限なく、国が定める一定額まで授業料・入学金の減免を受けられるようになりました。ただし、給付型奨学金とは要件が異なり、学業要件などもあります。
制度を確認するときは、まず返済の必要がない支援から調べ、それでも不足する場合に貸与型奨学金を検討するのが基本です。
貸与型奨学金は、卒業後に原則としてお子さん本人が返済します。いくら借り、卒業後にどのように返すのかを、家族で話し合っておきたいところです。
祖父母などからの援助
祖父母などの扶養義務者が、通常必要と認められる教育費を、必要な都度、直接その費用に充てるために贈与する場合は、原則として贈与税の対象になりません。
一方、数年分をまとめて受け取り、預貯金や投資に回した場合などは、贈与税の対象になる可能性があります。
なお、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置は、2026年3月31日で新たな信託などができる期間を終了しました。同日までに拠出された金銭などについては、引き続き制度の対象となります。
税務上の扱いは贈与の方法や状況によって異なるため、まとまった援助を受ける場合は、事前に税務署や税理士へ確認してください。
公的支援は家計の助けになりますが、利用には要件があり、制度が将来変わる可能性もあります。確実に受けられると決めつけず、最新の条件を確認したうえで計画に取り入れましょう。
教育費だけを優先しすぎない
教育費は、親としてどうしても優先したくなる支出です。
しかし、教育費を優先しすぎて老後資金を損なうと、将来、生活費や介護費の不足によって、結果的にお子さんの負担になる可能性があります。
大学進学の時期は、住宅ローンの返済や、ご自身の老後準備が本格化する時期と重なりやすいものです。
教育費だけを切り離さず、住宅費や老後資金と並べたうえで、家計からどこまで準備できるのかを考える。これが前回お伝えした「同時に考える」ということです。
まとめ:正解は、ご家庭ごとに違う
教育資金の備え方に、すべての家庭に当てはまる正解はありません。
大切なのは、次の順番で考えることです。
- いつ、いくら必要になりそうかを確認する
- 使う時期と家計状況に合わせて、預貯金・投資・保険を使い分ける
- 公的な支援や家族からの援助も確認する
- 住宅費・老後資金とのバランスを考えて準備額を決める

平均や一般論だけに、ご家庭を合わせる必要はありません。教育方針と家計の実態に合った方法を選ぶことが大切です。
まずは、進学などの予定と「そのお金を使うのは何年後か」を書き出すところから始めてみてください。
参考資料
- 日本経済新聞「教育資金どう備える/家計に合ったため方を」(2026年8月1日)
- 文部科学省「令和5年度子供の学習費調査」(2026年1月16日訂正版)
- 日本学生支援機構「令和6年度学生生活調査」
- こども家庭庁「児童手当制度のご案内」
- 文部科学省「高等教育の修学支援新制度」
- 国税庁「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税」
※本記事は一般的な情報の提供を目的としたもので、個別の商品の購入や契約を推奨するものではありません。制度の内容や要件は変更される場合があります。ご利用の際は、必ず最新の情報を各機関の窓口や公式サイトでご確認ください。税務上の取扱いについては、税務署または税理士へご相談ください。