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シリーズ「人生の選択肢を増やす家計管理」は、今回で第22回になります。

家計管理には順番があり、一つずつ理由があります。その理由をたどりながら、この連載がどこを目指してきたのかをお話しします。

第1回で、自由で有意義な人生は家計管理から始まる、とお伝えしました。そこから、家計簿、固定費と変動費、先取り貯蓄、生活防衛資金、年間支出、口座の整理、ライフプラン、教育費、NISA、生命保険まで、一つずつ確認してきました。

これまでにも、第16回・第17回で、それまでの内容を整理しています。ただ、そのあとに教育費、住宅費、老後資金、NISA、生命保険が加わりました。家計の土台から投資や保険の判断まで、全体を一本の流れとしてお伝えするのは、今回が初めてになります。

そして、最後にお伝えしたいことがあります。

家計管理は、節約のためだけにあるのではない

家計管理と聞くと、支出を切り詰めることだと思われるかもしれません。

しかし、第3回でお伝えしたとおり、家計管理は我慢するためのものではありません。自分や家族が大切にしたいことに、お金を使えるようにするための整理です。

そして、収入が多いか少ないかは、出発点ではありません。同じ収入でも、しっかり貯められている家庭もあれば、毎月ぎりぎりという家庭もあります。その差は、収入の大きさではなく、お金の流れをつかめているかどうかにあります。

家計管理は、それ自体が目的ではないことを示す図
お金が漏れていく状態から、使いたいことへ向ける状態へ。

だからこそ、まず今の状態を知ることから始めます。

なお、第2回でお伝えしたように、家計は一人で抱えるものでもありません。家族で話せる状態にしておくことが、あとになって効いてきます。

なぜ、見える化が最初なのか

理由は単純です。分からないものは、減らせないからです。

何にいくら使っているのかが分からないまま節約を始めても、削りやすいところから削ることになります。その結果、生活の満足度だけが下がって、長続きしません。

支出を把握してから見直す流れを示す図
どこへ向かうか分からないまま走ると、遠回りになります。

第4回でお伝えしたとおり、家計簿は完璧につけるためのものではありません。お金の流れの傾向をつかむための道具です。

方法は、家計簿アプリでも、Excelでも、手書きでも構いません。アプリについては「家計簿アプリは何がいい?マネーフォワード MEが便利な理由」と「マネーフォワード ME以外の家計簿アプリも選択肢になる」で紹介しています。自分が続けられるものを選べば十分です。

なぜ、固定費が変動費より先なのか

支出が見えてきたら、次は分類です。

第7回で、支出を固定費と変動費に分けました。そのうえで、第8回では固定費から見直しています。

順番に理由があります。固定費は、一度見直せば効果が続くからです。

保険料、通信費、サブスクリプション。これらは毎月自動的に出ていきます。一度整えれば、翌月以降も同じ効果が続きます。しかも、日々の我慢が要りません。

一方の変動費は、第9回でお伝えしたとおり、削ることが目的ではありません。満足度の低い支出から整える。生活の質を落とさずに済ませることが大切です。

固定費は一度の見直しで効果が続くことを示す図
一度で終わる作業と、毎回がんばる作業の違いです。

そしてもう一つ、見落としやすいのが年間支出です。

第12回で取り上げましたが、毎月は黒字なのに貯金が増えない、という家庭は少なくありません。税金、車検、年払いの保険料など、毎月ではないけれど必ず来る支出が原因です。年間で見て、毎月の積立に変えておくと、家計は安定します。

なぜ、「余ったら貯める」ではないのか

第10回でお伝えした先取り貯蓄も、理由があっての順番です。

意思の力に頼らないためです。

生活していれば、お金の使い道は必ず出てきます。予定外の買い物、外食、日用品のまとめ買い。気づけば月末には思ったほど残っていない。これは誰にでも起こります。

給与を先に貯蓄と生活費へ分ける図
順番を入れ替えるだけで、意思の力に頼らずに済みます。

だから、給料が入った時点で先に貯蓄分を分けてしまう。残ったお金で生活する。順番を変えるだけで、家計はかなり安定します。

金額は、手取りの2割が難しければ1割でも構いません。大切なのは、少額でも黒字家計を続けることです。

なぜ、投資より先に生活防衛資金なのか

ここが、この連載でいちばんお伝えしたかった順番かもしれません。

第11回で、生活防衛資金を取り上げました。万一のときに生活を守るためのお金です。

投資より先に確保しておきたい理由は、二つあります。

一つは、相場が下がったときに、売らずに済むからです。手元に現金がないと、急にお金が必要になったときに、値下がりしている資産を売らざるを得なくなります。本来増やすためのお金が、逆に家計を不安定にしてしまいます。

生活防衛資金があると値下がり時に売らずに済むことを示す図
手元に現金があると、下がった資産を売らずに待てます。

もう一つは、不安につけ込まれにくくなるからです。お金に余裕がないときほど、焦りが生まれます。SNS詐欺広告から資産を守る。「自分は大丈夫」と思う人ほど注意したいでも触れましたが、お金の不安が強いときは、普段なら疑える話でも判断が鈍ることがあります。

生活防衛資金は、急な支出に備えるためだけのものではありません。不安なときに、少し立ち止まって考える余裕をつくるお金でもあります。

なぜ、預け先を整理するのか

第13回から第15回にかけて、銀行口座の整理を取り上げました。

口座を増やしすぎると、家計は見えにくくなります。生活用、貯蓄用、予備用というように役割を決めれば、2〜3口座でも十分に管理できます。

口座に役割を決めて整理する図
口座の数ではなく、役割が決まっているかどうかです。

なぜネット銀行が選ばれる?楽天銀行・ドコモSMTBネット銀行(旧 住信SBI)の特徴と選び方」で取り上げたネット銀行も選択肢になりますが、必ず使わなければならないものではありません。自分の生活に合うかどうかで判断すれば十分です。

ここまでが、家計の土台です。

なぜ、商品より先にライフプランなのか

土台が整うと、次は将来を見る段階に入ります。

第18回では、教育費・住宅費・老後資金を同時に考える理由をお伝えしました。晩婚化により、この3つが重なる家庭が増えているためです。第19回では、教育費の目安と備え方を整理しました。

そして第17回で取り上げたのが、ライフプランです。

ライフプランが商品選びより先に来る理由は、いつ使うお金なのかで、置き場所が決まるからです。3年後に使うお金と、20年後に使うお金では、適した置き場所が違います。それを知らないまま商品を選ぶと、必要なときに使えない、という事態が起こります。

もう一つ、ライフプランには大切な役割があります。

教育・住宅・老後・家族の未来という時期を示す図
いつ使うかが決まると、置き場所もおのずと決まります。

将来の不足額が見えるだけではありません。今、使ってよいお金も見えてきます。

将来が見えないと、人は必要以上に貯めようとすることがあります。しかし、人生には、その時期だからこそ価値を引き出せるお金の使い方があります。子どもと過ごす時間、体力があるうちの旅行、新しいことを学ぶための自己投資。すべて先送りにしてしまうと、後になってお金があっても、同じ経験はできないかもしれません。

なぜ、NISAと保険が最後なのか

土台があり、将来の見通しが立って、はじめて商品の判断ができます。

第20回で取り上げたNISAは、商品ではなく、利益を非課税にする制度です。長期の資産形成には有効ですが、生活費や近く使う予定のあるお金まで投資に回してはいけません。投資額は、制度の上限ではなく、家計から決めます。

第21回の生命保険も同じです。保険は、不安の大きさで決めるものではありません。遺族に必要なお金から、遺族年金や貯蓄などを差し引いた不足額で決めます。実際に計算してみると、思っていたより保障が要らなかった、ということもあります。

土台と将来設計の上に商品判断があることを示す図
土台がないまま商品から入ると、判断の基準を持てません。

先に商品を決めることはできません。必要な額が分かってはじめて、何をどれだけ備えるかが決まるからです。

そして、資産運用そのものについても、同じことが言えます。運用は、増やすこと自体が目的ではありません。家計管理と同じで、人生の選択肢を増やすための手段です。

お金は、使って初めて価値が生まれる

ここまで、家計管理の順番と、その理由をたどってきました。

最後に、この連載でお伝えしたかったことをお話しします。

お金は、あればあるほどいい。多くの方がそう思いますし、実際、あって邪魔になるものではありません。

ただ、お金は使って初めて価値が生まれるものです。通帳の数字が増えること自体に意味があるわけではありません。だから、本当に必要なのは、自分にとって必要な額のお金です。

その額は、人によって違います。

どんな暮らしをしたいのか。何歳まで働きたいのか。子どもの進路をどこまで支えたいのか。老後をどこで、どう過ごしたいのか。大切にしたいものが違えば、必要な額も変わります。

では、その額はどうやって算定すればいいのか。

これは、難しい問題です。数字の計算だけでは答えが出ません。どう生きたいか、何を大切にしたいかという、生き方の話にまでつながっていきます。

必要な額は人によって違うことを示す図
通帳の数字ではなく、何に使えたかが残ります。

ファイナンシャルプランナーは、数字を計算するだけの仕事ではないと思っています。そこまで一緒に考えなければ、相談される方が本当の意味で安心を実感することは難しいからです。

その答えを見つけるきっかけが、家計管理であり、ライフプランです。

まとめ:一度、道筋を立ててみないと分からない

家計管理は、節約のためだけのものでも、投資の準備のためだけのものでもありません。

お金に判断を縛られず、自分の価値観に合った選択ができる。そういう状態をつくるためのものです。それが、自由な人生に近づく道だと思っています。

順番を振り返ると、こうなります。

  1. まず、お金の流れを見える化する
  2. 支出を分けて、固定費から整える
  3. 先取り貯蓄で、黒字家計を仕組みにする
  4. 投資より先に、生活防衛資金を確保する
  5. 預け先を整理して、家計を見えるようにする
  6. いつ、何に、いくら必要かを知る
  7. ライフプランで、将来と今をつなぐ
  8. そのうえで、NISAや保険を判断する

一つずつ理由がありますが、すべてを完璧にこなす必要はありません。今の自分にできるところから始めれば十分です。

そして、最初から答えを持っている必要もありません。

自分にいくら必要なのか。何を大切にしたいのか。それは、考えているだけでは、なかなか見えてきません。

一度、道筋を立ててみないと、人は分からないものです。

見える化からNISA・保険まで八つの順番を示す図
八つ全部を今すぐそろえる必要はありません。

まずは、今のお金の流れを知るところから。この連載が、その最初のきっかけになれば嬉しく思います。

シリーズ「人生の選択肢を増やす家計管理」は、今回で一区切りとします。ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

シリーズ全記事

土台をつくる

見える化する

支出を整える

貯める仕組みをつくる

預け先を整理する

将来を見通す

土台の上で判断する

前の記事:
生命保険はいくら必要?公的保障と貯蓄から不足額を計算する

※本記事は、シリーズで取り上げた内容を一般的な考え方として整理したものです。実際に適した進め方は、収入、支出、資産、家族構成、お勤め先の制度などによって異なります。