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前回の続きです。もう一つの「個人が買える国債」

前回、個人向け国債は「あり」なのか? 金利上昇で変わる現金の置き場所を書きました。金利が上がってきたことで、久しぶりに預金以外の「置き場所」として現実的な選択肢になってきた、という内容です。なお、前回の記事では2026年8月募集分の利率を紹介しました。今回は9月募集分の数字で見ていきます。

その流れで、もう一つ触れておきたい商品があります。新窓販国債(しんまどはんこくさい) です。

個人が購入できるもう一つの国債として新窓販国債を紹介する図
新窓販国債は、銀行や証券会社などを通じて購入できる国債です。

正直に書きます。私自身、この商品を相談の場で聞かれたことは、ほとんどありません。個人向け国債はテレビや新聞で目にする機会が増えましたが、新窓販国債はまだそこまで知られていない。ところが最近、個人向け国債に注目が集まったことで、「似た商品」として並べて紹介される機会が増えてきました。

そして、並べて見ると、こちらのほうが利率が高く見えます。今回の9月募集分でいえば、約1ポイントの差があります。

ただ、この1ポイントの差だけで判断すると、後で困ることになりかねません。今回は、新窓販国債という商品を知っていただいたうえで、どこに注意すべきかを整理します。

新窓販国債とは、どんな商品か

正式には「新型窓口販売方式」で売られる国債のことです。銀行や証券会社、ゆうちょ銀行などの窓口で、毎月募集されています。

個人向け国債との違いを、まず商品の骨格だけ押さえておきます。

  • 満期は 10年・5年・2年 の3種類。すべて固定金利
  • 購入は 額面5万円から5万円単位(個人向け国債は1万円から1万円単位)
  • 購入の上限は、国債の種類ごとに1回の申込みあたり額面3億円(2年・5年・10年それぞれの上限で、合計額の上限ではありません)
  • 利子は 年2回、半年ごと
  • 個人だけでなく、法人や団体も購入できる
  • 満期まで持てば、額面どおりの金額が戻る
  • 途中で現金化したいときは、市場で売却する
新窓販国債の満期と金利タイプ、中途売却の仕組みを示す図
10年・5年・2年はいずれも固定金利で、途中換金は市場での売却になります。

最後の一行が、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。あとで詳しく書きます。

なお、国が発行しているという意味では、個人向け国債と同じです。信用リスクの面で個人向け国債より劣る商品、というわけではありません。

※「窓口販売」という名前ですが、対面の窓口に限られるわけではありません。ネット証券でも購入できます。ただし、取扱金融機関の一覧に名前があっても、すべての年限を扱っているとは限らず、募集期間の一部では扱っていない場合もあります。購入前に、ご自身の使っている金融機関に確認してください。

9月募集分の数字を並べてみる

まず、実際の数字を見てください。すべて財務省の発表に基づく、2026年9月募集分です(税引前)。

商品満期までの期間表面利率応募者利回り
個人向け国債 変動10年10年年1.95%(初回)年1.95%(半年ごとに見直し)
個人向け国債 固定5年5年年2.24%年2.24%
個人向け国債 固定3年3年年1.96%年1.96%
新窓販国債 10年約9年8か月年2.7%年2.943%
新窓販国債 2年約1年11か月年1.7%年1.672%

※個人向け国債は額面100円につき100円で買うため、応募者利回りは表面利率と同じです。新窓販国債は直前に発行された国債と同じ銘柄として追加で発行されるので、購入時点から満期までがちょうど10年・2年になるとは限りません。

※新窓販国債は、年限ごとに募集期間が違います。9月分は10年が9月4日〜29日、2年が9月2日〜29日。5年は募集の開始が遅く、9月分は9月9日に条件が発表される予定で、募集期間は9月11日〜30日、発行日は10月13日です。募集期間や発表日は年限ごとの入札日を基準に決まるため、毎月同じ時期に固定されているわけではありません。買いたい年限がある場合は、募集期間を先に確認してください。

表だけを見ると、個人向け国債の1.95%と新窓販国債の2.943%には、約1ポイントの差があります。ただし、この2つは同じ意味の数字ではありません。

毎年受け取る利子の計算に使うのは、新窓販国債では表面利率の2.7%です。 1.95%との差は0.75ポイント。額面100万円なら、年率に換算した利子の差は7,500円(税引前)です。ただし、個人向け国債の1.95%が適用されるのは初回の半年間で、その後は半年ごとに見直されるため、実際の1年間の差は確定していません。

応募者利回り2.943%のほうには、98円16銭で買って満期に100円で戻ってくる差額も含まれているので、その分だけ数字が大きくなります。

2026年9月募集分の個人向け国債と新窓販国債の数字を比較した図
1.95%は個人向け国債の初回適用利率、2.943%は新窓販国債の応募者利回りで、数字の意味が異なります。

これだけ見れば、新窓販国債のほうが有利に見えます。

なぜ、これだけ差がつくのか

差がつく理由は、金利の決め方が違うからです。

個人向け国債の変動10年は、次の式で決まります。

基準金利 × 0.66

9月募集分でいえば、基準金利は2.96%でした。これに0.66を掛けて、1.95%です。市場の金利がそのまま反映されるわけではありません。その代わりに、発行から1年経てば国が額面で買い取ってくれる中途換金の仕組みが用意されている、という設計になっています。財務省も、0.66という数字は「10年固定利付国債を今後10年間保有した場合に得られる金利収入とのバランスや、中途換金などの商品性を総合的に勘案した」結果だと説明しています。

この掛け算方式は、もともと引き算方式でした。平成23年(2011年)6月までに発行された変動10年は「基準金利−0.80%」で計算されていましたが、低金利時に適用利率が低くなりすぎないよう、2011年7月発行分から現在の掛け算方式に見直されています。

低金利の時代に、利率が下がりすぎないようにするための見直しでした。ただし、金利が上がってくると作用は逆になります。9月募集分の基準金利2.96%で計算すると、現在の方式では1.95%ですが、旧方式なら 2.96−0.80=2.16%。いまの水準では、旧方式のほうが高い利率になります。

一方、新窓販国債は市場実勢に基づいて発行のたびに決まるので、市場金利がほぼそのまま反映されます。

つまり、市場金利が上昇していく局面では、0.66を掛ける個人向け国債と、市場実勢を映す新窓販国債の差は広がりやすくなります(発行時期や価格によって差は変わります)。日本経済新聞(2026年8月29日「マネーのまなび」)に掲載されたグラフを見ると、半年前には約0.7ポイントだった差が、8月には0.9ポイントを超えています。9月には、その差がさらに約1ポイントまで広がりました。

差が開いているのは、新窓販国債が急に良くなったからではありません。個人向け国債が、金利上昇分を6割6分だけ取り込む設計だからです。ここは押さえておいてください。

個人向け国債と新窓販国債で金利上昇時の利率差が生じる理由を示す図
適用利率の決め方と中途換金の仕組みが異なるため、表面の数字だけでは比較できません。

「表面利率2.7%」なのに「利回り2.943%」の意味

新窓販国債の説明で、いちばん分かりにくいのがここです。

9月募集分の新窓販国債10年(第383回)の条件を、そのまま書き出します。

  • 表面利率:年2.7%
  • 応募者利回り:年2.943%
  • 募集の価格:額面100円につき 98円16銭
  • 償還金額:額面100円につき100円
  • 償還期限:令和18年6月20日

数字が2つ出てきますが、意味が違います。

表面利率(2.7%) は、受け取る利子の計算に使う率です。額面100万円なら、年間2万7,000円の利子(税引前)が半年ごとに分けて支払われます。

応募者利回り(2.943%) は、そこに「安く買える分」を足したものです。額面100円のものを98円16銭で買い、満期には100円で戻ってくる。この差額1円84銭も、実質的な利益になります。利子とこの差額を合わせて、1年あたりに直したのが応募者利回りです。

新窓販国債を見るときは、応募者利回りのほうを見てください。 ただし、これは購入価格で買って満期まで持ち続けた場合の利子と償還差益を、年率に直した数字です。途中で売却した場合、この利回りになるとは限りません。

新窓販国債の表面利率と応募者利回り、購入価格と償還価格の関係を示す図
応募者利回りは、購入価格と額面との差を含めて満期保有を前提に年率換算した数字です。

もう一つ、購入時の細かい注意点があります。新窓販国債は、直前に発行された同じ銘柄として追加で発行されるため、購入時に「初回の利子の調整額」を上乗せして払い込みます。9月債では額面100円につき0.8210958円(111日分)です。

これは、初回の利払日に6か月分の利子が支払われる一方で、その中には購入者が保有していなかった期間の分も含まれているためです。その期間分を先に払っておく、という調整の仕組みで、損得の話ではありません。ただ、申込時に思ったより多く支払うことになるので、知らないと驚きます。

最大の違いは、途中で換金したいとき

ここが本題です。

個人向け国債は、発行から1年経てば、いつでも国が額面で買い取ってくれます。直前2回分の利子相当額が差し引かれますが、元本割れは起きません。国が「必ず額面で買い取る」と約束している設計です。

新窓販国債には、この仕組みがありません。途中で現金化するには、市場で売るしかありません。売値はそのときの市場価格なので、元本割れすることがあります。財務省も、国が買い取る中途換金制度がないため、買い手がつかないと売却できない場合があると説明しています。

個人向け国債と新窓販国債の中途換金方法の違いを示す図
個人向け国債には国の中途換金制度がありますが、新窓販国債は市場価格での売却です。

どのくらいの振れ幅なのか、試算してみます。9月募集分の新窓販国債10年(表面利率2.7%、98円16銭で購入)を、1年後に売却した場合の概算です。

1年後の市場利回り売却価格の目安額面100万円あたり
1.94%(1ポイント低下)約105.9円約 +7.7万円
2.94%(変わらず)約98.2円ほぼ増減なし
3.94%(1ポイント上昇)約91.1円−7.1万円

(筆者試算。売却価格の変化を示す概算で、受取利子・経過利子・税金・金融機関の手数料等は含めていません。実際の売却価格は取扱金融機関や市場環境によって異なります)

金利が1ポイント上がると、100万円あたり7万円前後の値下がりです。1年間に受け取る利子2万7,000円を、大きく超える下落幅になります。

もちろん逆もあります。金利が下がれば値上がりして、売却益が出ます。ただ、現在は金利上昇の局面にあります。市場金利が上昇する場面では債券価格が下がるため、途中で売却すると不利になりやすい——この値動きを理解したうえで持つ商品だと思っています。

なお、個人が売却して損失が出た場合、確定申告をすれば、一定の条件のもとで上場株式等の譲渡益や配当等と損益通算できる場合があります。ただ、それは「損が出たあとの話」です。前提として、途中売却を織り込んで買う商品ではありません。

いまは変動10年を勧める理由

ここからは私の考えです。

いまの局面では、個人向け国債の変動10年のほうが良いと考えています。

金利上昇局面で個人向け国債の変動10年を選ぶ考え方を示す図
変動10年は半年ごとに利率が見直され、年0.05%の最低金利も設けられています。

理由は単純で、これから金利がどうなるか、誰にも分からないからです。

これから金利がどうなるかで、有利・不利は入れ替わります。3つに分けて考えてみます。

  • 金利が下がっていく場合:新窓販国債が有利です。高い利回りを先に確保できます
  • いまの水準で横ばいの場合:満期まで持つ前提なら、新窓販国債のほうが有利です
  • さらに上がっていく場合:変動10年は半年ごとに利率が上がります。ただし最終的にどちらの受取額が多くなるかは、金利の上昇幅や、上がる時期によって変わります

新窓販国債が不利になりやすいのは、3つ目の場合です。ただし上昇幅が小さかったり、上がる時期が遅かったりすれば、最初から2.943%を確保していた新窓販国債のほうが、結果的に有利になることもあります。

それでも変動10年を勧めるのは、いまが金利上昇の途中に見えることと、将来の金利を当てにいかなくて済むからです。

同じ見方は、専門家からも出ています。日本経済新聞(2026年8月29日「マネーのまなび」)は、「今はまだピークとは言いがたい」という見方を紹介したうえで、変動10年を選ぶほうがよさそうだと結んでいます。

今回の新窓販国債10年は、表面利率2.7%が2036年6月の満期まで変わりません。 応募者利回り2.943%は、98円16銭で買って満期まで持った場合の年率換算です。購入後に長期金利が4%になっても、受け取る利子の計算に使う2.7%は変わりません。

日銀は段階的に政策金利を引き上げてきました。この先どこで止まるのかは、誰にも分かりません。分からないからこそ、どちらに転んでもそこそこ困らない選択が、生活のためのお金には合っていると考えます。それが変動10年です。

変動10年には、金利が下がった場合の下限(年0.05%)も設定されています。上にはついていけて、下は守られている。有利さでは新窓販国債に負けますが、判断を間違えたときのダメージが小さいのは、こちらです。

「今がピークかどうか」を当てにいく商品ではない、という言い方もできます。将来の金利を当てにいかなくて済む点が、変動10年の利点です。

新窓販国債を選ぶなら、「満期まで動かさないお金」で

とはいえ、新窓販国債が悪い商品だとは思いません。使い方の問題です。

もし選ぶなら、条件は一つだけです。

満期まで手をつけないと、決められるお金であること。

生活費でも、教育費でも、車の買い替えでも、住宅の修繕費でもない。10年近く使う予定がないと言い切れる長期の資金。それなら、いまの利回りを確保するのは、十分に合理的な判断だと思います。

新窓販国債に回す資金と回さない資金を示す図
生活費や教育費などとは分け、満期まで使わない予定の長期資金で検討します。

逆に言えば、途中で換金する前提なら、この商品は向きません。 「必要になったら売ればいい」という考え方で買うと、必要になったタイミングと金利が上がったタイミングが重なったとき、元本を削って取り崩すことになります。

もし10年は長いと感じるなら、2年物という選択肢もあります。9月募集分の応募者利回りは1.672%。10年ほどの高さはありませんが、拘束される期間は短くて済みます。

そして、生活防衛資金は国債に回さないでください。個人向け国債でも1年間は原則として換金できませんし、新窓販国債なら元本割れの可能性まで加わります。手元にすぐ動かせるお金を確保したうえで、その先の話です。

法人・団体も買える。ただし、12月から風景が変わります

新窓販国債のもう一つの特徴が、個人以外も購入できることです。法人、団体、マンションの管理組合なども対象になります。個人向け国債は、これまで個人しか買えませんでした。

ただ、この違いは間もなく小さくなります。

2026年12月募集(2027年1月発行)分から、個人向け国債は販売対象が広がり、名称も「個人向け国債プラス」に変わる予定です。 商品の中身は変わらず、買える人が「プラス」される、という趣旨の改称です。

対象に加わるのは、財務省の資料によると次のような法人・団体です。

  • 非営利法人(一般社団法人、一般財団法人、学校法人、医療法人、社会福祉法人、特定非営利活動法人、宗教法人 など)
  • 非上場法人(非上場株式会社(資本金5億円未満)、合同会社、合資会社、合名会社)
  • マンション管理組合 など

一方、金融機関、上場株式会社、資本金5億円以上と見込まれる株式会社などは、引き続き販売対象外です。なお、個人事業主の方はこれまでどおり「個人」として購入できますので、今回新たに関係するのは、主に非上場の中小法人ということになります。

個人向け国債プラスで一部の法人や団体も購入対象になることを示す図
2026年12月募集分から、一部の法人等にも個人向け国債の販売対象が広がる予定です。

マンション管理組合にとっては、これまでの定期預金、新窓販国債、マンションすまい・る債などに加えて、発行後1年を過ぎれば額面で中途換金できる選択肢が増えることになります。修繕積立金という性質を考えると、この違いは小さくありません。私自身、区分マンションを保有していた経験があるので、関心を持って見ているところです。

ここでお伝えしたいのは、「法人・団体も買えるから新窓販国債」という理由は、3か月後には弱くなるということです。いま検討している方は、この予定を頭に入れておいてください。

まとめ——どちらが上、ではありません

整理します。

個人向け国債 変動10年新窓販国債 10年
利率(9月募集分)年1.95%(初回・半年ごとに見直し)表面利率 年2.7%(満期まで固定)/応募者利回り 年2.943%
金利が上がったとき半年ごとに利率が上がる受け取る利子は変わらない
途中で換金1年経過後、額面で国が買取。元本割れなし市場で売却。元本割れの可能性あり
向いているお金少なくとも1年間は使う予定がなく、その後の換金のしやすさを重視するお金満期まで使う予定のない長期の資金

新窓販国債は、知られていないだけで、悪い商品ではありません。ただ、高い利回りだけを見るのではなく、途中で売るときは市場価格しだいで元本割れすること、そして個人向け国債のような国の買取制度がないことを、合わせて確認してください。 表の数字だけを比べて選ぶと、その裏側を引き受けていることに気づきません。

結論は、こうです。

  • いまの金利上昇局面では、個人向け国債の変動10年を軸に考える
  • 新窓販国債を選ぶなら、満期まで持ち切る前提のお金だけにする
  • どちらにしても、生活防衛資金は別に確保しておく
個人向け国債の変動10年と新窓販国債10年の違いと、使い分けの考え方をまとめた図
商品の利率だけでなく、使う時期と目的から資金の置き場所を決めることが大切です。

そして、いちばん大事なのは、「利率が高いから」ではなく「このお金をいつ使うのか」から考えることです。使う時期が決まっていれば、選ぶべき商品はかなり絞られます。決まっていないなら、柔軟性を残しておくほうが安全です。

商品の比較は、本来はその後の話です。

ご自身の資金がどちらに当てはまるのか判断に迷う場合は、ライフプランを一度整理してみると、驚くほどはっきりします。ご相談はいつでもお受けしています。

出典

  • 財務省「個人向け国債の発行条件等」(令和8年9月2日 報道発表)
  • 財務省「新窓販国債10年 令和8年9月債 発行条件」
  • 財務省「新窓販国債についてのよくある質問(Q&A)」
  • 財務省「現在募集中の個人向け国債・新窓販国債」
  • 財務省「個人向け国債の金利についてのよくある質問」
  • 財務省「個人向け国債の販売対象となる法人等」
  • 財務省「『個人向け国債の法人等への販売対象拡大』に関するQ&A」
  • 日本経済新聞 2026年8月29日「マネーのまなび『変動10年』金利上昇に強く」

※本記事の利率等は2026年9月2日時点のものです。募集ごとに条件は変わりますので、購入前に必ず財務省または取扱金融機関の最新情報をご確認ください。