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何が起きたのか

まず事実を整理します。

9月の変動型金利(最優遇)

銀行変動型前月比
三菱UFJ1.195%+0.25
三井住友1.525%+0.25
三井住友信託1.08%据え置き
みずほ1.025%据え置き
りそな0.95%据え置き

引き上げたのは三菱UFJと三井住友の2行で、残る3行は9月適用分を据え置きました。ただし据え置いた3行も、10月には引き上げる見通しと報じられています。5行の平均で見ると、変動型は前月比0.1ポイント高い1.155%です。

一方、10年固定型は5行そろって引き上げになりました。三菱UFJが3.630%、三井住友が3.700%、みずほが3.450%、りそなが3.955%、三井住友信託が4.195%。5行平均は前月比0.088ポイント高い3.786%です。

大手5行の住宅ローン金利の動きを示す図
9月は変動型を2行が引き上げ、3行は据え置き。10年固定型は5行すべてが引き上げました。

変動型と固定型で、上がり方がまったく違うことに気づかれたでしょうか。この差には理由があります。次の章で説明します。

なぜ今、上がったのか

住宅ローンの変動型金利は、短期プライムレート(短プラ)という金利を基準にしています。短プラは銀行が優良企業に短期で貸すときの金利で、日銀の政策金利の影響を受けやすい金利です。

日銀は2026年6月16日の金融政策決定会合で、政策金利を0.75%程度から1.00%程度へ引き上げました。約31年ぶりの水準です。これを受けて各行が短プラを0.25ポイント引き上げ、住宅ローンの変動金利に波及したというのが今回の流れです。

変動型の金利は4月と10月に見直す銀行が多いのですが、三菱UFJなどは10月を待たずに引き上げに踏み切りました。

これに対して固定型は、10年国債利回りなどの長期金利を反映します。長期金利は日銀の政策決定を待たずに市場が先回りして動くため、固定型のほうが先に、大きく上がっていました。10年固定型が3%台後半、変動型が1%台という差は、そこから生まれています。

変動型と固定型の金利が上がる経路を示す図
変動型は短期金利、固定型は長期金利の影響を受けるため、上がる時期と幅が異なります。

整理すると、こうなります。

  • 変動型……日銀の政策金利の影響を受ける。上がり始めたばかり
  • 固定型……市場の長期金利に連動。すでに大きく上がっている

この差は、数字にはっきり出ています。直近1年の上昇幅は、変動型が約0.47ポイント、10年固定型が約1.68ポイント。固定型のほうが3倍以上の速さで上がってきました。

「今から固定に借り換えれば安心」と単純に言えないのは、この差があるからです。あとの「では、どうすればいいのか」で改めて触れます。

「返済額は変わりません」の落とし穴

ここが本題です。

5年ルールを採用している変動型・元利均等返済では、金利が上がっても毎月の返済額はすぐには変わりません。次の2つの取り決めがあるためです。

  • 5年ルール……金利が変わっても、返済額の見直しは5年ごと
  • 125%ルール……見直すときも、それまでの返済額の1.25倍が上限

一見すると、借りている人を守ってくれるありがたい仕組みに見えます。実際、急に返済額が跳ね上がることは防いでくれます。

ただ、免除されているのは返済額の増加であって、利息の増加ではありません。

金利が上がった分の利息は、きっちり発生しています。返済額が同じなら、増えた利息はどこから出てくるのか。元金に充てるはずだったお金から出ています。

数字で見ると

残高3,000万円、残り25年、毎月の返済額が107,712円の方を例にします(当初金利0.6%で計算)。

適用金利毎月の返済額うち利息うち元金
0.6%107,712円15,000円92,712円
0.85%107,712円21,250円86,462円
1.10%107,712円27,500円80,212円
1.35%107,712円33,750円73,962円

返済額の欄は、一円も動いていません。動いているのは中身です。

金利が0.6%から1.35%に上がると、1年間で減る元金は約112万円から約89万円へ、22万円ほど鈍ります。

返済額が同じでも元金の減りが遅くなる仕組みを示す図
返済額が変わらなくても、利息の割合が増えれば元金の減りは遅くなります。

通帳の引き落とし額は変わらない。家計の実感も変わらない。でも、借金は予定より減っていない。これが、今回の金利上昇でいちばん起きやすいことです。

先送りされた分は、どこへ行くのか

5年後の見直しで返済額が上がり、それでも足りなければ次の5年でまた上がります。125%ルールで抑えられた分は、最終的に完済時の一括請求という形で残ることがあります。

なお、金利が大きく上がると毎月の返済額を利息が上回る未払利息が発生する、という警告をよく目にします。返済を続けているのに元金がまったく減らない状態です。

ただ、実際に計算してみると、印象とはだいぶ違います。

当初0.5%・5,000万円・35年で借りた方(毎月の返済額129,793円が据え置かれた前提)で、未払利息が生じる金利水準を出すと、こうなります。

経過年数残高未払利息が生じる金利
借入直後5,000万円3.12%
3年後約4,605万円3.38%
5年後約4,338万円3.59%
10年後約3,660万円4.26%
15年後約2,964万円5.26%
20年後約2,250万円6.92%

返済が進んで残高が減るほど、未払利息が生じる金利水準は上がっていきます。 さらに5年ルールがある場合、5年ごとの見直しで返済額が125%の上限まで上がれば、その時点の水準は4.49%まで跳ね上がります。

つまり、この35年ローンの例では、すぐに未払利息が発生する水準ではありません。(今から1.195%で借りる方の場合は3.50%が出発点になります)

ただし、借入額・返済期間・金利の見直し方法によって結果は変わります。特に返済期間が長い場合は話が別です。50年ローンでは毎月の返済額が小さい分、借入直後で2.26%、10年後でも2.76%。35年ローンよりはっきり低い水準で未払利息の領域に入ります。あとで触れる超長期ローンのリスクは、こういうところにも顔を出します。

いずれにしても、いま警戒すべきは未払利息ではなく、その手前ですでに起きている「元金が思うように減らない」状態のほうです。

なお、この5年ルール・125%ルールはすべての金融機関にあるわけではありません。ネット銀行を中心に、採用していないところもあります。採用していない銀行では、金利上昇がそのまま毎月の返済額に反映されます。

ご自身がどちらなのかは、借入時の契約書(金銭消費貸借契約証書)か、銀行のサイトの商品説明書で確認できます。まず、ここを確認してください。

困るのは、借りている人だけではない

金利上昇の話は住宅ローンに集中しがちですが、影響はもっと広い範囲に及びます。整理してみました。

負担が増える側

① 変動型で借りている人

住宅ローン利用者の約8割が変動型です。前章で見たとおり、いちばん人数の多い層が、いちばん気づきにくい形で影響を受けます。

② 賃貸経営をしているオーナー

これは当事者として実感していることでもあります。アパートローンは事業性の融資という性格が強く、住宅ローンのような激しい優遇競争が働きません。5年ルールのような緩衝装置もない。つまり、基準金利の上昇が素直に、そして早く、返済額に跳ね返ります。

同じ「金利上昇」でも、住宅ローンより賃貸経営のほうが先に、直に効いてきます。

③ 中小企業・自営業

借入コストが上がれば、設備投資は控えられます。投資が減れば、そこで働く人の給料にも回ってきます。

④ これから家を買う人

意外に見落とされていますが、影響は返済額だけではありません。金融機関によっては、実際の適用金利より高い審査金利を使って返済能力を確認します。審査の方法も使う金利も金融機関ごとに異なり、通常は公表されていません。

ここでは、金利の前提が変わると借入可能額がどう変わるかを試算します。年収600万円の方が返済比率35%(毎月17.5万円)で35年借りる場合です。

審査に使う金利借入可能額
1.195%約6,000万円
3.0%約4,547万円
4.0%約3,952万円

同じ月17.5万円の返済でも、計算に使う金利によって借入可能額は大きく変わります。 予算が変われば、選べる物件も変わる。「金利が上がると返済がきつくなる」以前に、「そもそも買える家が変わる」という話です。

なお、実際の審査結果は、金融機関の基準や年齢、既存の借入などによって異なります。

⑤ 住宅メーカー・不動産事業者

買える人が減れば、売れ行きは鈍り、在庫は積み上がります。

⑥ 賃貸で住んでいる人

ここが盲点です。「自分はローンを組んでいないから関係ない」と思っている方にも、家賃を通じて回ってきます。

不動産投資の情報サイト・健美家の調査(2025年10月時点)では、金利上昇やコスト高騰を受けて「所有物件の賃料を上げた」と回答した投資家が24.3%にのぼりました。金利上昇分を賃料に転嫁できなければ、支払利息が家賃収入を上回る「逆ザヤ」に陥ります。オーナー側も、上げざるを得ない局面に入りつつあります。

⑦ 国

国債の利払い費が膨らみます。これは将来の税や社会保障の形に跳ね返ってきます。

一方で、得をする側

金利上昇は悪いことばかりではありません。ここも公平に書いておきます。

⑧ 預金者

長く続いた「預けても増えない」時代が終わりつつあります。まとまった預金のある高齢世帯にとっては、利息収入の回復はプラスです。

⑨ これから保険や年金商品に入る人

これから新たに契約する一部の生命保険や個人年金保険では、予定利率の改善が期待できます。すでに契約している分の利率が上がるわけではありません。

⑩ 輸入物価

円高方向に振れれば、輸入品の価格は下がる方向に働きます。食料もエネルギーも輸入に頼る日本では、家計への影響は小さくありません。

金利上昇で負担が増える人と恩恵を受ける人を整理した図
金利上昇の影響は、借入・預金・事業など、その人の立ち位置によって変わります。

この章のまとめ

つまり、「金利が上がると困る」ではなく、「自分はどちら側にいるのか」を確かめることが先です。

借入が多く預金が少ない現役世代は負担側、借入がなく預金が多い世代は受益側。同じニュースでも、立ち位置によって意味がまるで変わります。

頭金ゼロと、50年ローンという流れ

今回の日経記事が「頭金ゼロ 若年層に負担」という見出しを立てたのには理由があります。

日経記事によれば、三井住友トラスト・資産のミライ研究所の調査で、30代の住宅購入者のうち物件価格に占める頭金が「ゼロ」または「約1割」と答えた人は、1月時点で合計67%。40代でも59%を占めています。

かつては「頭金は2割から3割用意する」のが一般的な目安でした。それが、頭金ゼロで購入するケースも珍しくなくなっています。

これは若い世代が無計画だという話ではありません。低金利と住宅価格の高騰が、そうさせたというのが実際のところでしょう。物件価格が上がり続ける中で頭金が貯まるのを待っていたら、いつまでも買えない。低金利なら借りたほうが早い。合理的な判断だったのです。

同じ理由で、返済期間を40年から50年まで延ばす超長期ローンへの関心も高まっています。この超長期ローンについては、以前50年住宅ローン、本当に大丈夫?月々払えるだけで判断してはいけない理由でも取り上げました。

ただし、前提が変わりました

頭金ゼロも超長期ローンも、低金利が続くという前提の上に成り立っていた選択です。その前提が崩れつつあります。

  • 頭金ゼロ = 借入額が最大 = 金利上昇の影響を最大限に受ける
  • 期間を延ばす = 毎月は楽になるが、総返済額は膨らみ、金利変動リスクを抱える期間そのものが長くなる

もっとも、50年ローンは誰でも組めるわけではありません。完済時年齢を80歳未満とする金融機関では、50年間をフルに組めるのは原則として20代です。30代以降は、年齢に応じて借入期間が短くなります(それでも40年を超える期間は利用できます)。

頭金ゼロと50年ローンの注意点を示す図
毎月の負担を抑える仕組みは、借入額や金利変動リスクを先へ送る面もあります。

28歳で組めば、完済は78歳。就職して数年の時点で、78歳までの返済計画を立てるということになります。その50年間に金利がどう動くかは、誰にも分かりません。分からないものに、50年間さらされ続ける。それが超長期ローンの本質です。

日経記事の中で、ミライ研の矢野礼菜研究員は、住宅価格や生活コストの上昇を受けて十分な頭金を用意できない世帯が増えている、と指摘しています。そして記事は、返済期間を延ばせば毎月の負担は抑えられるものの総返済額は膨らみ、金利変動リスクを長期にわたって抱えることになる、と続けています。

同感です。毎月の支払いを抑える工夫は、リスクを消しているのではなく、先へ送っているだけです。

不動産をやってきた者として

ここからは、20年間不動産に関わってきた一人としての話をさせてください。

私は、いい時期に買えただけです

私が不動産を購入したのは、リーマンショックの後でした。

地価は下落し、金利は低下傾向。買う側にとっては二重の追い風です。安く買えて、安く借りられた。だからこそ、家賃収入を積み上げていくインカムゲイン中心の賃貸経営が、素直に成り立ちました。

これは、私の判断が優れていたからではありません。タイミングに恵まれたのです。 その自覚があります。

今は、当時と正反対です

価格は高騰し、金利は上昇局面。買う側にとっては二重の逆風です。

物件の利回りと借入金利の差、いわゆるイールドギャップが、上下から押しつぶされています。金利上昇分を家賃に転嫁できなければ、支払利息が収益を上回ります。

私自身、これまでどおりの賃貸経営はできないと考えています。 家賃を積み上げていくだけでは足りず、売却も含めた出口、つまりキャピタルゲインも視野に入れて組み立て直す必要がある。20年のあいだ相場は何度も動いてきましたが、今回は方針そのものを変える局面だと考えています。

不動産価格は、経済に重くのしかかる

そして、ここからが本当に申し上げたいことです。

不動産価格の下落は、その物件を持っている人だけの問題では終わりません。経済全体に、重くのしかかります。

日本のバブル崩壊がそうでした。地価の下落が担保価値を毀損し、不良債権となり、金融機関が貸せなくなり、企業が投資できなくなり、失われた30年へつながっていった。

今の中国も同じ構図です。不動産価格の下落が個人消費を冷やし、地方財政を痛め、経済全体の重石になっています。

不動産は、金額が大きく、借入を伴い、担保になる。だから価格が下がると、金融を通じて経済全体に波及します。株価の下落とは影響の広がり方が違うのです。

都心では、兆しが出ています

不動産調査会社の東京カンテイによると、7月の中古マンションの平均希望売り出し価格は、都心6区(千代田・中央・港・新宿・文京・渋谷)で前月比1.7%安の70㎡あたり1億8,195万円。3カ月連続の下落です。水準そのものは依然として高値圏ですが、急騰局面は一服しました。

ただし、同じ7月の首都圏全体は前月比+1.2%の7,547万円で、24カ月連続の上昇です。都心6区では3カ月連続の下落となりましたが、現時点では地域によって動きが分かれており、市場全体が下落に転じたとまではいえません。

日経記事の中で、住宅ローン比較サービス「モゲチェック」を手がけるMFSの塩澤崇氏は、金利が1%上昇すると不動産価格には15%の下落圧力がかかる、との見方を示しています。郊外の物件のほうが価格調整を受けやすく、都心部との価格差が広がるという指摘もありました。

金利上昇局面の不動産市場と経営方針の変化を示す図
都心6区では調整の兆しがある一方、首都圏全体は上昇が続いており、地域差を見極める必要があります。

だから、政策は慎重に

私は、利上げそのものが間違っているとは思いません。物価の状況を見れば、金利のある世界へ戻していく必要はあるのでしょう。

ただ、不動産をやってきた者として、価格の下落が経済に何をもたらすかを、二度見てきました。一度は日本のバブル崩壊として、もう一度は今の中国として。

国内の個人消費がまだ弱く、ようやく回復の兆しが見えかけている段階です。ここで利上げが続けば、景気の腰折れを招きかねません。

金融政策には、目先の要請だけでは測れない重さがあります。どうか、慎重に進めていただきたい。これが、一FPとしての、そして一不動産オーナーとしての率直な願いです。

では、どうすればいいのか

ここからは実務の話です。立場ごとに整理します。

住宅ローン利用者や購入予定者が確認することを示す図
すでに借りている方、これから買う方、子どもの購入を支援する方で、確認すべき点は異なります。

すでに変動型で借りている方

① まず3つの数字を確認する

  • 現在の残高
  • 残りの返済期間
  • 現在適用されている金利

意外なほど、この3つを即答できない方が多いです。年に一度届く残高証明書か、銀行のアプリで確認できます。

② 5年ルール・125%ルールの有無を確認する

先に書いたとおり、金融機関によってあったりなかったりします。契約書か商品説明書で確認してください。ルールがある場合は、次の見直しがいつ来るのかもあわせて確認しておきましょう。

③ 慌てて固定に借り換えない

これがいちばん大事です。

9月の新規借入向け金利で見ると、変動型は1%前後から1%台半ば、10年固定型は3%台後半が中心です。2ポイントを超える差がついています。今から固定に移るということは、この差額を「安心料」として先払いすることを意味します。

ただし、いま借りている銀行で固定型へ変更する場合と、他行へ借り換える場合とでは、適用金利も優遇幅も手数料も異なります。また10年固定型は、金利が固定されるのは原則10年間で、完済までの全期間固定ではありません。11年目以降の金利がどうなるかは、そのときの情勢次第です。

さらに借り換えには、事務手数料・保証料・登記費用などで数十万円かかります。変動金利がどこまで上がれば元が取れるのか、期間はどれくらいかかるのか。そこを計算せずに動くのは危険です。

金利上昇のニュースが流れると、必ず「今すぐ固定へ」という声が大きくなります。ですが、判断材料は人によって違います。残高が少なく残期間も短い方なら、多少上がっても総額への影響はわずかです。逆に、残高が大きく残期間が20年以上ある方は、真剣に検討する意味があります。

④ 繰上返済という選択肢

金利が上がる局面では、繰上返済の効果も大きくなります。ただし、手元資金を減らしすぎるのは禁物です。生活防衛資金は必ず残してください。いくら残せばよいかは、生活防衛資金はいくら必要か。万一に備えるお金を先に確保するで整理しています。

これから買う方

① 「借りられる額」ではなく「返し切れる額」で決める

先に見たとおり、同じ返済額でも、審査に使われる金利の前提が高くなれば借入可能額は小さくなります。金融機関から示された上限額を、そのまま「無理なく返せる額」と考えないこと。 これが大切です。

上限まで借りない。これに尽きます。

② 頭金を、可能な範囲で入れる

「頭金を入れるより手元に残して運用したほうが合理的」という考え方は、低金利下では成り立ちました。金利1%台、そして今後2%台も視野に入る局面では、その前提を検算し直す必要があります。

③ 期間を延ばして毎月を下げる前に、物件価格を見直す

50年ローンで買える物件と、35年ローンで買える物件。前者を選ぶということは、リスクを50年抱えるということです。

50代の読者の方へ

このブログをお読みの方の多くは、ご自身の住宅ローンはすでに残りわずか、あるいは完済済みという方だと思います。

ですが、この記事の内容は、決して他人事ではありません。

お子さんが、まさに家を買おうとしている年代だからです。

そのとき、親としてどう関わるか。

  • 「金利が安いうちに買え」——これは、もう通用しない助言です
  • 「頭金は入れなくていい」——前提が変わりました
  • 資金援助を考えているなら、住宅取得等資金の贈与税の非課税制度は令和8年(2026年)12月31日が期限です
  • ただし、援助しすぎてご自身の老後資金を削らないこと

この非課税制度は、一定の要件を満たせば、省エネ等住宅で1,000万円、それ以外の住宅で500万円まで贈与税がかからない仕組みです。この記事を公開している時点で、期限まで残り4か月ほど。適用には要件があり、非課税枠に収まる場合でも贈与税の申告が必要です。年内に動くかどうかで、使えるかどうかが変わります。

お金は、使って初めて価値が生まれます。お子さんの住宅資金を援助することも、立派な「使い方」です。

ただし、それはご自身の生活が成り立つ範囲での話です。援助した結果、ご自身の老後が苦しくなり、最終的にお子さんが介護と生活の両方で負担を負う。それでは本末転倒です。

渡す前に、必ずライフプランで確かめてください。

まとめ

長くなりましたので、要点を整理します。

① 金利が上がっても、返済額はすぐには変わらない

変わらないからこそ、気づきにくい。返済額が同じでも、利息が増えた分だけ元金の減りは鈍っています。まず、ご自身の契約に5年ルールがあるかを確認してください。

② 影響は、借りている人だけに来るのではない

賃貸経営、中小企業、これから買う人、賃貸に住んでいる人、そして国。一方で、預金者にはプラスに働きます。「困る」の前に、自分はどちら側かを確かめること。

③ 前提が変わった

頭金ゼロも超長期ローンも、低金利が続くという前提の上の選択でした。その前提が崩れた以上、選択も見直す必要があります。

④ 金利は動かせないが、動かせるものはある

日銀の政策は、誰にも動かせません。ですが、借入額・返済期間・頭金・繰上返済・そして家計の余力は、自分で動かせます。

住宅ローン金利上昇への備えを4点にまとめた図
変えられない金利環境を恐れるより、家計側で調整できる項目を一つずつ点検します。

最後に、この記事でいちばんお伝えしたかったことを書きます。

金利が上がったから困るのではありません。金利が上がっても大丈夫な設計になっていないから、困るのです。

金利1%の上昇で家計が大きく苦しくなるとすれば、それは返済計画の余裕が少なくなっているサインです。病気、転職、教育費の増加——別の変化が重なる前に、設計を見直す必要があります。金利上昇は、そのサインを表に出してくれたとも言えます。

逆に言えば、今のうちに設計を見直しておけば、これから何が来ても慌てずに済みます。

ご自身の住宅ローン、お子さんの住宅購入、あるいは保有されている不動産。金利のある世界で、どう組み立て直すか。お一人で抱えず、一度ご相談ください。数字を並べるだけでなく、その方の人生にとって何が大切かというところから、一緒に考えます。

参考

※本記事の試算は一定の前提を置いた概算です。実際の返済額・借入可能額は金融機関や個別の条件によって異なります。金利や制度の適用条件は、契約先の金融機関や税務署などで最新情報をご確認ください。