日本経済新聞は、東京電力の10月使用分(11月請求分)の家庭向け電気料金が、過去最高となる見通しだと報じました。8月の貿易統計(速報値)にある燃料輸入価格を基に日本経済新聞が試算したところ、国の認可を受けた規制料金の標準家庭モデルで約9,300円です。9月使用分より約1,000円高くなる見通しです。
「過去最高」と聞けば不安になります。ただ、約1,000円の上昇を分けて見ると、そのうち約910円は、夏のあいだ実施されていた国の支援がなくなる分です。燃料価格の上昇による影響は、約100円にとどまります。
つまり、今回の値上がりは、主に支援が終わる反動です。ただし、今後の電気料金を押し上げる要因は、それだけではありません。
電気は、高いからといって契約をやめることができない、暮らしに欠かせないインフラです。今回は、現在の電気料金、自由化と規制が併存する仕組み、地域による料金差、そしてその背後にある日本のエネルギー問題を整理します。
夏の支援は、9月使用分で終わります
今回の電気・ガス料金支援は、2026年7月使用分から9月使用分までの3か月間、使用量に応じて料金を値引きする仕組みです。

| 使用月 | 電気・低圧(1kWh当たり) | 都市ガス(1㎥当たり) | 標準的な世帯への支援額 |
|---|---|---|---|
| 7月 | 3.5円 | 14円 | 約1,500円 |
| 8月 | 4.5円 | 18円 | 約2,100円 |
| 9月 | 3.5円 | 14円 | 約1,500円 |
表の「約1,500円」「約2,100円」は、電気と都市ガスを合わせた標準的な世帯の想定額です。電気だけを見ると、東京電力の標準家庭モデルにおける9月使用分の支援は約910円でした。
支援を受けるための申請は必要ありません。契約している小売電気事業者や都市ガス事業者が、毎月の料金から自動的に差し引きます。
反対に、支援の手続きとして個人情報や手数料を求められることもありません。資源エネルギー庁は、支援に便乗した不審な電話やメールについて注意を呼びかけています。
注意したいのは、「使用月」と「請求月」が同じとは限らないことです。東京電力の標準家庭モデルでは、支援がなくなる10月使用分が11月請求分に反映されます。実際の請求時期は、検針日や契約先によって異なります。
10月以降、負担を押し上げる要因は3つあります
今後の電気料金を見るときは、補助の終了、燃料価格、託送料金を分けて考える必要があります。

支援が終了する
低圧電力の支援は、9月使用分の3.5円/kWhで終了します。
月260kWh使う家庭なら約910円、月600kWh使う家庭なら約2,100円が、支援終了によって請求へ戻ります。使用量が多い家庭ほど影響も大きくなります。
燃料価格が上昇している
日本経済新聞によると、2026年2月末以降の中東情勢を受け、原油、石炭、LNGの輸入価格が上昇しています。8月28日付の同紙によると、LNGの7月の輸入価格は、5月と比べて約1割高くなりました。
日本では、発電に使う燃料の多くを海外から輸入しています。燃料価格の変化は、燃料費調整という仕組みを通じて、数か月遅れて電気料金へ反映されます。
東京電力の10月使用分は、燃料価格の影響だけでも9月使用分より約100円上がる見込みです。今回はまだ規制料金の上限に達していませんが、燃料価格の上昇が続けば、その後の料金にも影響します。
東京電力では、燃料価格が高騰した2022年に規制料金の上限へ達し、標準家庭モデルの料金が5か月連続で当時の過去最高となる9,126円に据え置かれました。2023年6月の料金改定で上限に相当する水準は約1万2,700円へ引き上げられています。今回の約9,300円はこの水準には届いていませんが、過去最高の更新は4年ぶりです。
なお、支援単価が4.5円から3.5円へ縮小した9月使用分でも、大手電力10社すべてが前月より値上がりしました。各社の平均的な使用量における上げ幅は252円から509円で、支援の縮小に燃料価格の上昇が重なった結果です。
託送料金が改定される
託送料金は、発電所から家庭まで電気を届ける送配電網の利用料です。契約者が直接支払うのではなく、小売電気事業者の料金に含まれています。
北海道、東北、東京、中部、関西、四国、九州、沖縄の一般送配電事業者8社は、労務費、物価、金利などの上昇を理由に収入見通しの変更を申請し、すでに承認されています。東京電力パワーグリッドは9月4日に経済産業大臣の承認を受け、9月11日に約款変更を届け出ました。新しい託送料金は2026年11月1日から適用されます。
たとえば東京電力パワーグリッドの低圧平均単価は、税抜きで1kWh当たり8円58銭から9円65銭へ上がります。ただし、この差額がすべての契約者へ、そのまま同額で転嫁されるとは限りません。最終的な反映方法は、小売事業者や料金プランによって異なります。
このほか、2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金は、1kWh当たり4円18銭です。月260kWhなら約1,087円になります。契約先を変更しても原則として避けられない、使用量に応じた負担です。
電気代には、大きな地域差があります
冒頭の約9,300円は、東京電力の規制料金・標準家庭モデルの数字です。全国一律の電気料金ではありません。

2026年9月使用分について、大手電力10社の規制料金を月260kWhという同じ条件で試算すると、次のようになります。
| 順位 | 電力会社 | 月額 | 九州電力との差 |
|---|---|---|---|
| 1 | 関西電力 | 6,989円 | −208円 |
| 2 | 九州電力 | 7,197円 | ― |
| 3 | 中国電力 | 7,833円 | +636円 |
| 4 | 北陸電力 | 8,009円 | +812円 |
| 5 | 四国電力 | 8,016円 | +819円 |
| 6 | 東北電力 | 8,205円 | +1,008円 |
| 7 | 中部電力 | 8,211円 | +1,014円 |
| 8 | 東京電力 | 8,276円 | +1,079円 |
| 9 | 沖縄電力 | 9,175円 | +1,978円 |
| 10 | 北海道電力 | 10,410円 | +3,213円 |
※エネチェンジが2026年8月31日に公表した、月260kWh使用時の試算です。各社の標準的な規制料金プランを対象とし、燃料費調整額、再エネ賦課金、9月使用分の支援を含みます。実際の料金は、契約内容、使用量、検針日などによって異なります。
同じ260kWhでも、最も安い関西電力と最も高い北海道電力では、月3,421円、年間にすると約4万1,000円の差があります。
この差には、各社が保有する発電設備、原子力・火力・水力・再生可能エネルギーの構成、燃料の調達条件、送配電網を維持する費用などが関係しています。
実際の家計負担では、料金単価だけでなく使用量も重要です。寒冷地では冬の暖房などで使用量が増えやすく、同じ料金単価でも請求額が大きくなる場合があります。
ニュースの数字だけで判断せず、まず自分の検針票や明細で、契約先、料金プラン、使用量、請求額を確認することが出発点です。
九州や関西が比較的安い背景
九州電力と関西電力の料金が比較的低い背景の一つに、原子力発電所の稼働があります。

原子力発電所が稼働すると、その分、LNGや石炭などを使う火力発電を抑えられます。資源エネルギー庁も、関西電力が高浜原発3号機・4号機の再稼働によって火力燃料費を削減し、2017年8月から電気料金を値下げした事例を紹介しています。
九州電力でも、川内原発と玄海原発の計4基が稼働しています。原子力だけで地域間の料金差をすべて説明することはできませんが、燃料費を抑える一つの要因になっていることは確かです。
2023年6月に規制料金が改定された際、北海道、東北、東京、北陸、中国、四国、沖縄の7社は値上げしました。一方、中部、関西、九州の3社は値上げを申請しませんでした。各社の電源構成や燃料費の違いが、料金差として表れた例です。
ただし、現在の料金だけで原子力発電の是非を決めることはできません。安全対策、事故が起きた場合の損害、廃炉、使用済み燃料、最終処分なども含めて考える必要があります。
自由化したのに、なぜ規制料金が残っているのか
電力の小売は、2016年に全面自由化されました。家庭でも、電気を購入する会社や料金プランを選べるようになりました。

一方、自由化以前から大手電力が提供してきた「従量電灯」などの規制料金は、経過措置料金として今も残っています。競争が十分でない地域で規制料金をなくすと、利用者の選択肢が少ないまま料金が上がるおそれがあるためです。東京電力では、家庭の約5割が規制料金を利用しています。
また、発電と小売には競争が導入されましたが、送配電網は同じ地域に複数つくることが現実的ではありません。送配電事業は地域独占を前提とし、国の規制を受けています。
つまり、電力制度は単純に「すべて自由化された」のではありません。競争に任せる部分と、安定供給や利用者保護のために規制する部分が併存しています。
規制料金には、燃料費調整の上限があります。基準となる燃料価格の1.5倍を超えた部分は、料金へ自動的に転嫁できません。一方、自由料金には上限を設ける義務がなく、実際には上限のないプランが多くなっています。
燃料価格が大きく上昇したとき、規制料金は利用者を守る防波堤になります。しかし、上限を超えた燃料費が消えるわけではありません。料金へ転嫁できなければ電力会社が負担し、国が補助すれば納税者が負担し、料金を改定すれば利用者が負担します。
費用が消えず、負担する人が変わります
ここに、電力制度の分かりにくさがあります。

請求書から値引きされれば、家計の負担は一時的に軽くなります。しかし、補助の財源は税金です。値引きされた金額と同じ負担が、その家庭へそのまま戻るわけではありませんが、社会全体で見れば費用の置き場所を変えていることになります。
日本経済新聞によると、2023年1月以降、電気・ガス料金の支援へ投入された国費は、今回分を含めて累計約5.6兆円に達する見込みです。
物価や燃料価格が急騰したとき、期限を区切って家計を支えることには意味があります。一方、補助を繰り返しても、輸入燃料への依存や発電設備、送配電網の問題は解決しません。
また、規制料金の上限によって電力会社だけに費用を負わせ続ければ、設備の更新、保守、人材の確保、将来の電源投資へ影響する可能性があります。電気料金を抑えることと、安定供給を維持することの両方を考えなければなりません。
問題は、規制や支援が存在すること自体ではありません。電力会社、利用者、納税者のうち、誰が、どの費用を、どれだけ負担しているのかが見えにくいことです。
原発停止と輸入燃料が残した問題
東日本大震災後、国内の原子力発電所は停止し、新しい規制基準への適合審査と安全対策が進められました。その間、原子力に代わって火力発電の比率が上がり、LNG、石炭、石油などの輸入が増えました。

資源エネルギー庁によると、原発がすべて停止していた2014年には、電源構成に占める化石燃料への依存度が88%まで上昇しました。原発停止後の燃料輸入増加は、電気料金だけでなく、日本の貿易収支にも大きな影響を与えました。
安全を最優先にすることは当然です。福島第一原発事故によって故郷へ戻れない方がいること、廃炉や賠償が今も続いていることを軽く扱うことはできません。
一方で、審査や安全対策に長い時間がかかった間、火力燃料費と輸入額が増え、その負担を家計や企業が負ってきたことも事実です。安全性を確保しながら、判断をより迅速に進められなかったのかという検証は必要です。
原発を動かせば、すべて解決するわけではありません。再生可能エネルギーを増やす場合も、天候による変動を補う火力、蓄電設備、地域間を結ぶ送電網が必要です。原子力にも、安全対策や廃炉、使用済み燃料などの課題があります。
今後はAIやデータセンターの普及などによって、電力需要の増加が見込まれています。原子力、再生可能エネルギー、火力、蓄電、送電網、省エネルギーを、どのように組み合わせるのか。電気料金の問題は、そのまま日本のエネルギー安全保障の問題でもあります。
家計で確認したいこと
エネルギー政策を家庭だけで変えることはできません。それでも、家計で確認できることはあります。

支援がない場合の電気代を把握する
現在の明細に支援額が表示されていれば、その金額を請求額へ足し戻します。それが、ほかの条件が変わらないと仮定した場合の、支援がない電気代です。
たとえば低圧で月260kWhなら、支援終了による増加は約910円です。あらかじめ家計へ織り込んでおけば、請求が来てから慌てずに済みます。
規制料金か自由料金かを確認する
明細の契約種別を確認してください。「従量電灯」などは規制料金、「スタンダード」「スマート」といった名称は自由料金であることが多いものの、名称だけで判断せず、契約先の商品説明を確認するのが確実です。
自由料金には、燃料費調整の上限がないプランや、卸電力市場の価格を反映する市場連動型のプランがあります。毎月の単価だけでなく、料金がどのような条件で変わるのかを見る必要があります。
明細の内訳を見る
電気料金は、主に次の項目で構成されています。
- 基本料金または最低料金
- 使用量に応じた電力量料金
- 燃料費調整額
- 再生可能エネルギー発電促進賦課金
- 国の支援による値引き
電力量料金、燃料費調整額、再エネ賦課金は、いずれも使用量の影響を受けます。基本料金は、契約アンペアや料金プランの見直しで変わる場合があります。
プラン変更は、料金の決まり方まで比べる
安いプランへ変更すれば、必ず得になるとは限りません。燃料価格や市場価格が上がったときに、どこまで料金へ反映されるのか。解約金や契約期間はあるのか。年間の使用量で比較する必要があります。
電気代だけでなく、通信費、保険料、サブスクリプションなども含め、固定費全体から効果の大きいところを見直す方法もあります。
健康を削る節電はしない
電気代を抑えるために、冷暖房を我慢することは避けてください。特に高齢者や小さな子どものいる家庭では、熱中症や体調悪化につながる危険があります。
フィルターの清掃、カーテンや断熱による熱の出入りの抑制、使っていない機器の待機電力、契約アンペアの確認など、生活の質を大きく落とさないところから始めます。
まとめ
東京電力の10月使用分が約9,300円となる見通しなのは、燃料価格の上昇だけが原因ではありません。約1,000円の上昇の大部分は、夏の支援約910円がなくなる反動です。
ただし、その後も安心できるわけではありません。

- 燃料価格が上昇している
- 11月から託送料金が改定される
- 再エネ賦課金など、使用量に応じた負担がある
- 地域や電源構成によって、料金水準に大きな差がある
補助金は、請求書に表れる負担を一時的に軽くします。しかし、発電や送配電に必要な費用そのものを消すことはできません。電力会社が負担するのか、利用者が負担するのか、納税者が負担するのか。変わるのは、負担する人と支払う場所です。
そして、地域による料金差の背後には、原子力、火力、再生可能エネルギー、送配電網など、日本がどのように電力を確保するのかという問題があります。
電気料金のニュースを、単なる家計の値上げとして見るのではなく、誰が費用を負担し、これからどのような電源を残していくのかという問題として考える。その視点を持っておきたいと思います。
出典・参考資料
- 日本経済新聞「東電、家庭の電気代最高 10月9300円、政府支援終了で」(2026年9月17日)
- 日本経済新聞「きょうのことば 電気料金の支援 一般家庭で1500円負担減」(2026年9月17日)
- 日本経済新聞「9月電気代、補助金減額や燃料高で全社値上げ」(2026年8月28日)
- 資源エネルギー庁「エネルギー価格の支援について」
- 資源エネルギー庁「電気・ガス料金支援に関する詐欺メールにご注意ください」
- 資源エネルギー庁「燃料費調整制度について」
- 資源エネルギー庁「電力自由化で料金設定はどうなったの?」
- 東京電力パワーグリッド「託送供給等約款の変更届出について」
- 経済産業省「2026年度の再生可能エネルギー発電促進賦課金単価」
- 資源エネルギー庁「なぜ関西電力は電気料金を値下げできたのか?」
- 資源エネルギー庁「エネルギー白書2016」
- 資源エネルギー庁「エネルギー動向(2025年6月版)」
- エネチェンジ「電気代の値上げ最新情報まとめ」(2026年8月31日更新)
※本記事に掲載した電気料金は、一定の使用量や料金プランを前提としたモデル試算です。実際の請求額は、地域、契約先、料金プラン、使用量、検針日などによって異なります。原子力発電を含む各電源には、それぞれ費用、安定供給、安全性、環境負荷などの課題があります。本記事は特定の電源や電力会社を一律に支持・批判するものではありません。制度や数値は2026年9月時点のものです。