少し大きな話を、させてください。
「人生でいちばん大事なものは何ですか」と聞かれたら、あなたは何と答えるでしょうか。
家族、と答える方もいるでしょう。仕事、趣味、友人、信仰、生きがい——人によって答えは違うはずです。価値観は人それぞれで、そこに正解はありません。
ただ、私はFPという仕事を通じて多くの方と接するなかで、ある一つの考えに行き着きました。
人それぞれの大事なもののさらに土台にあるものは、結局のところ二つに集約されるのではないか、と。
それが、「健康」と「お金」です。
なぜ、この二つなのか
家族との時間を大切にしたいと思っても、健康を損なえば一緒に過ごす時間そのものが奪われます。お金が尽きれば、子や孫に頼ることになり、本来あげたかったものをあげられなくなる。
仕事に打ち込みたいと思っても、体が動かなければ続けられません。趣味を楽しむにも、旅行に出るにも、孫にお年玉を渡すにも、健康とお金のどちらかが欠けると、できることが急に減ってしまう。
つまり、健康とお金は、それ自体が人生の目的ではありません。けれど、他の大切なものを守り、選び、楽しむための土台になっているのです。
土台が揺らぐと、その上に乗っているものすべてが揺らぎます。逆に、土台がしっかりしていれば、その上で何を大切にするかは自由に選べる。選択肢が増えるということ、それ自体が幸福に近いのではないか——私はそう考えています。
私自身が、気づかされた話
少しだけ、自分の話をさせてください。
私は長年、会社員として働いてきました。仕事は嫌いではなく、組織の中で役割を果たしながら、それなりに充実した日々を送っているつもりでした。
ところが、定年が近づいてきたある時期から、自分の周りで立て続けにいろいろなことが起こりました。
その最たるものが、両親や同僚の死でした。
ずっとそばにいるはずだった人、明日もまた会社で顔を合わせるはずだった人が、ある日突然いなくなる。葬儀の場に立ち、人の命の有限さを、頭ではなく身体で理解した瞬間でした。
——自分はいつまで生きられるのだろうか。
——今の人生は、本当に充実しているのか。
——これまでやりたかったことを、やってこられただろうか。
——このままの人生で、後悔はないのか。
——そもそも、このまま会社員を続けていていいのか。
朝から晩まで、平日のすべての時間を会社に差し出して生きてきた。それが当然だと思っていた。けれど、残された時間を意識した瞬間、「時間がない」と気づいたのです。
決断と、ひとつの発見
そこで私が下した決断が、定年前の早期退職でした。
仕事が嫌だったわけではありません。ただ、人生にはもっといろいろなことを経験する時間があるはずで、それを試してみたかった。
ただし、いざ早期退職を考えると、今度はお金の不安が頭をもたげます。「この先の生活、本当に大丈夫だろうか」と。
そこで、自分自身のライフプランを、自分の手でつくってみました。収入と支出を並べ、資産を整理し、寿命を仮置きして、何十年分かのキャッシュフローを描いてみる。
地味な作業でしたが、できあがったときの手応えは、今でも忘れられません。
漠然と抱えていた不安が、具体的な数字と見通しに変わった瞬間でした。「ここまでは大丈夫」「ここからは工夫が要る」「この時期にこういう判断をすればいい」——。
不安が、安心に変わったのです。
そのときに、私はもう一つのことに気づきました。この経験は、自分一人のものにしておいてはいけない、と。
世の中には、お金の不安を抱えたまま、本当にやりたいことを我慢している方が大勢いらっしゃるはずです。健康なうちに、好きなことに集中できるはずの時間を、漠然とした不安のために手放している方が。
ライフプランを自分の手で描けば、お金の不安は驚くほど軽くなる。これをもっと多くの方に届けなければいけない——そう決意して、私はFPの道に進みました。
恩返しとしての、二年間
退職してから、私はすぐに自分の事務所を開いたわけではありません。
これまで会社員としてお金に困らない恵まれた環境で過ごしてこられたのは、自分一人の力ではなく、この日本や社会の仕組みのおかげだという思いがありました。少しでも、その恩返しをしたい。そして、FPとしての経験も積みたい。
そこで、自治体での家計改善支援に、二年間取り組ませていただきました。
経済的に厳しい状況にある方々のご相談を受け、家計を整理し、見通しを立てるお手伝いをする仕事です。そこでお会いした方々から、私のほうがたくさんのことを学ばせていただきました。
お金の悩みは、決して恥ずかしいことではないこと。
見通しが立った瞬間、人の表情は驚くほど変わること。
そして、お金に困らない状態とは、たくさん持っていることではなく、不安なく日々を送れていることだということ。
この二年間の経験が、今の私の仕事の軸になっています。
私が、この仕事を続ける理由
そんな経緯があって、私は今、独立系FPとして「将来安心サポート」を運営しています。
私の願いは、はっきりしています。一人でも多くの方に、お金に困らない生活を実現してほしい。そして、その先にある幸福を感じてほしい。
健康については、私は専門家ではありません。お医者さまや、生活習慣の専門家の領域です。けれど、もう一つの土台である「お金」については、私の知識と経験で、お役に立てることがあります。
幸福そのものをお届けすることはできません。家族との関係や、生きがいの見つけ方は、私の手の届くところにはない。
でも、幸福のための土台を整えるお手伝いなら、できます。お金の不安を減らすこと、将来の見通しを立てること、必要のない出費を見直すこと——こうした地道な作業を通じて、その方の人生の選択肢を、少しでも増やすこと。
それが、私のできる仕事だと思っています。
このブログでお伝えしたいこと
このブログでは、お金にまつわる具体的なテーマを、さまざまな角度から取り上げていきます。老後資金、退職金、新NISA、家計の見直し——どれも一見、無味乾燥な話題に見えるかもしれません。
けれど、その一つひとつの背景にあるのは、いつも同じ問いです。
どうすれば、この方の選択肢が増えるだろうか。
どうすれば、お金の不安が減って、本当に大事なことに目を向けられるだろうか。
数字や制度の話の奥に、「あなたの幸福のために」という想いがある——そのことだけは、ブログ全体を通じて、忘れずにお伝えしていきたいと思っています。
最後に
人生で大事なものは、人それぞれです。あなたが何を大切にされているか、私にはわかりません。
ただ、その大切なものを守り、楽しみ、次の世代に渡していくためには、土台が要ります。健康とお金という、地味だけれど確かな土台が。
私にできるのは、そのうちの一つ、お金の土台づくりのお手伝いです。
両親や同僚の死を通じて、私は「時間は有限だ」ということを、遅まきながら学びました。あなたがこの記事を読んでくださっている今、この瞬間も、人生の貴重な一部です。
その時間を、お金の漠然とした不安に奪われてほしくない。
そう思いながら、このブログを書いています。