「家計のゲーム支出2.4倍」。日本経済新聞の見出しを見て、「なぜ、そこまでゲームにお金を使うのだろう」と目が止まりました。
物価高で日々の支出を抑えている一方、趣味にはお金を使う。記事には、期間限定のアイテムが欲しくなる心理や、キャッシュレス決済の手軽さについての説明がありました。では、その仕組みに流されず、自分の家計ではどう付き合えばよいのでしょうか。
私も子どもの頃はゲームで遊んでいたので、その面白さは分かります。趣味を楽しむことまで否定したいわけではありません。ただ、お金と同じくらい気になるのが、終わりを決めずに使ってしまう時間です。
好きなことだからこそ、お金と時間の両方に上限を決めて楽しむ。今回は、数字の読み方と家計管理の両面から考えます。
「2.4倍」は、どの家庭も使いすぎたという意味ではない
日経記事によると、総務省の家計調査で、二人以上の世帯の「ゲームソフトなど」への支出は、2026年7月に前年同月の2.4倍になりました。ゲームの課金や周辺機器を含む項目で、総務省はスマホゲームの課金がけん引したと説明しています。
一方、同じ7月の消費支出全体は、1世帯当たり30万1,245円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比3.6%減。食料への支出も実質1.3%減っています。家計全体の支出が減る中で、ゲーム関連の支出は増えていたわけです。
ただし、ここで確認したいのは、「2.4倍」が世帯当たりの平均支出を比べた数字だということです。

ゲームソフトなどへの年間支出は、2025年に1世帯当たり2,306円でした。これは、2010年以降で最高の金額です。月額に換算すると約192円ですが、ゲームにお金を使わない世帯も含めた平均です。実際に課金する人の月々の金額とは違います。
新聞には、クロス・マーケティングの担当者による「一部の高額利用者が全体を押し上げた可能性がある」という見方も紹介されていました。支出が一部の世帯に集中する品目では、高額支出の影響で平均が動くことがあります。ただし、今回の増加がどれほどその影響によるものなのかまでは、示された情報からは分かりません。
同じ紙面には、別の方向を示す数字もあります。Sensor Towerの推計では、日本のスマホゲームのアプリ内課金収益は、2025年8月から2026年7月までの1年間で、前年同期比5.1%減でした。
家計調査のゲーム関連支出と、スマホゲームのアプリ内課金収益では、対象も集計範囲も期間も違います。この二つを並べて、一部の人の課金が増えたことの証明にはできません。
少なくとも、「どの家庭もゲームに2.4倍使うようになった」と読むのは違います。平均の増加と、自分の家計の使いすぎは、分けて考える必要があります。
追加課金を促す仕組みを知る
スマホゲームには、無料で始められ、追加のアイテムなどにお金を払う仕組みがあります。欲しいものが一度手に入れば終わりとは限らず、新しいキャラクターやイベントが次々に登場します。

その一つが、何が出るか分からない電子くじの「ガチャ」です。欲しいものが当たらなければ「あと1回」、当たるかもしれないと思えば「次こそは」と、追加でお金を使いたくなることがあります。
期間限定なら、「今を逃すと手に入らないかもしれない」という気持ちも重なります。日経記事でも、希少性の高さから、食費を節約してでも手に入れたいという心理が働くとの専門家の見方が紹介されていました。
さらに、スマホから簡単に決済できるため、財布から現金を取り出すときのように、支出を立ち止まって考える機会が少なくなりがちです。1回の金額が小さければ、合計がいくらになったかも見失いやすくなります。
ここまで使ったのだから、欲しいものが出るまでやめたくない。そう感じたときも、過去に使ったお金と、これから払うお金は分けて考えたいところです。追加で払っても、これまでの支出が戻るわけではありません。
企業が魅力的な商品やサービスを作ることと、利用者が使いすぎるほど追加課金を促すことは、別の問題です。売り上げを伸ばす工夫だけでなく、支出額の分かりやすい表示や購入の確認など、使いすぎを防ぐ配慮も求めたいと思います。
ゲームに限らず、次々に欲しいものが現れる趣味には、終わりがありません。欲しくなってから毎回判断するよりも、先に使える金額を決めておく方が、自分の暮らしを守りやすくなります。
楽しみ費は、必要なお金を確保してから決める
では、いくらまでなら使ってよいのでしょうか。
まず、生活費、返済、将来に必要な貯蓄を確保します。そのうえで、ゲームや推し活、ほかの趣味も含めて、楽しみに使える金額を決めます。収入や家族構成によって違うので、すべての家庭に共通する割合に合わせる必要はありません。

「食費節約、趣味は別腹」という新聞の言葉は印象的ですが、食料支出の減少とゲーム支出の増加が、同じ家庭で起きたかどうかは、この統計からは分かりません。
ただ、実際に生活に必要な食事や支払いを削って課金しているなら、支出の順番を見直したいところです。家計を整えるときは、まず保険料、通信費、使っていないサブスクなどを確認します。趣味を続けるためにも、暮らしの土台を先に守ることが大切です。
楽しみ費は、予算に入れてよい支出です。使うたびに後ろめたくなるよりも、使える枠を決め、その範囲で楽しむ方が、家計も続けやすくなります。
お金と同じように、時間にも区切りをつける
私が、お金以上にもったいないと感じるのは、何となく続けてしまう時間です。時間は、資産や収入に関係なく、誰にとっても1日24時間しかありません。お金は後から取り戻せることもありますが、過ぎた時間は戻りません。

もちろん、楽しんだ時間まで無駄だとは思いません。友人と遊ぶ、家族で会話する、仕事や家事の合間に気分を切り替える。ゲームにも、その人にとって意味のある時間の使い方があります。
気になるのは、やめようと思いながら続けてしまい、睡眠や仕事、家族との時間まで削ってしまうことです。無料だから家計には響かないと思っていても、時間には影響が出ます。
私の孫もゲームが好きで、放っておけばいつまでも遊んでいます。そこで、遊ぶ時間を決めさせています。ゲームが面白いことは分かるからこそ、ほかのことをする時間も残してほしいと思っています。
時間を使いすぎれば必ず課金につながる、というわけではありません。ただ、時間とお金は別々にルールが必要です。「何時まで遊ぶか」と「お金を使うときはどうするか」を、一緒に決めておきたいところです。
趣味のために、予定を空けて楽しむ。それと、気づけば予定していたことが何もできず、一日が終わってしまうのとでは違います。始める前に終わりを決めることが、楽しみを暮らしの中に収める工夫になります。
大人・子ども・祖父母、それぞれにできること
大人は、月の上限と合計額を見えるようにする
ゲームへの課金を複数のアプリや決済方法に分けていると、全体の金額が見えにくくなります。月に1回は履歴や明細をまとめて確認し、今月の楽しみ費が残りいくらかを確かめます。

月3,000円なら、1年で3万6,000円です。年額に直したうえで、それだけ払う価値を感じているかを考えてみてください。本人が満足していて、家計の枠にも収まっているなら、使ったこと自体を責める必要はありません。
上限を守りにくい場合は、カードを登録したままにせず、必要な分だけプリペイド残高に入れる方法もあります。ただし、足りなくなるたびに追加すれば、上限にはなりません。追加チャージも含めた月の総額で管理します。
子どもは、時間と購入のルールを一緒に決める
何時まで遊ぶか、宿題や睡眠との順番をどうするか、お金を使うときは誰に相談するか。子どもと話し合って、具体的に決めます。
端末やゲーム機の保護者向け機能も役立ちます。利用時間の制限、購入時の承認、アプリ内購入の制限など、使っているサービスに合う機能を確認してください。すべての機能が一律に月額上限を設定できるわけではありません。
親のカード情報や購入を承認するパスワードを、子どもが自由に使えないようにすることも必要です。本人の我慢だけに頼らず、家庭のルールを設定でも支えるようにします。
祖父母も、親が決めたルールに合わせる
かわいい孫に頼まれると、ゲームや課金用のカードを買ってあげたくなるものです。ただ、親が決めた上限とは別に渡してしまうと、家庭のルールを崩すことになります。
プレゼントする前に、親と確認する。誕生日などに特別な枠を設けるなら、その扱いも一緒に決める。祖父母だからこそ、目の前の喜ぶ顔だけでなく、これからの金銭感覚にも目を向けたいと思います。
まとめ ― 上限を決めて、楽しみに使う
「ゲーム支出2.4倍」という数字だけでは、個々の家庭が使いすぎているかどうかは分かりません。見るべきなのは、平均との大小より、自分の支出が暮らしに合っているかです。

私は、趣味の楽しみを減らしてほしいのではありません。生活に必要なお金や、大切な時間まで、いつの間にか使ってしまうことを避けてほしいのです。
楽しむ前に、使えるお金と遊ぶ時間を決める。使った後は、金額と満足度を確かめる。企業の仕組みを知ったうえで、自分の側にも歯止めを用意しておくことが大切です。
好きなことを長く楽しむために、お金と時間の両方に上限を持つ。「別腹」にも枠を決めることが、家計を守りながら楽しむための一歩になります。
参考資料
- 日本経済新聞「家計のゲーム支出2.4倍 7月、総務省調査 食費節約、趣味は『別腹』」(2026年9月16日)
- クロス・マーケティング「ゲームに関する調査(2026年)スマホゲーム編」(2026年7月22日公表。月1回以上スマホゲームをプレイする全国15〜69歳の男女1,200人を対象)
- Sensor Tower「2026年日本のゲーム市場インサイト:グローバルに業界を牽引する日本のゲーム、戦略、IP」(日本のモバイルゲームのアプリ内課金収益の推計)
- Google「Google Playでの購入の承認」(購入の承認設定はGoogle Playの課金システムを通じた購入が対象)
※数値やサービスの説明は2026年10月時点の情報です。2026年7月の家計調査と2025年の年間支出額は、紹介した新聞記事の掲載値です。家計調査と民間の市場推計は、対象・集計範囲・期間が異なります。端末やサービスの設定・利用条件は変更されることがあります。