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家計を整え、余裕資金で資産運用を始めるとき、どの制度を使い、何を買えばよいのでしょうか。

よく聞かれるのが、次の質問です。

「NISAは始めた方がよいですか」
「S&P500とオルカンでは、どちらがよいですか」

この二つは、制度の選び方と商品の選び方という別の問題です。今回は、NISAを優先して使いたい理由を確認したうえで、S&P500に連動する投資信託とオルカンの違いを整理します。

NISAは、商品ではなく非課税制度

通常、株式や投資信託を売却して利益が出たり、配当や分配金を受け取ったりすると、その利益には原則として約20%の税金がかかります。

たとえば、投資によって100万円の利益が出ても、課税口座では約20万円が税金として差し引かれます。一方、NISA口座で対象商品から得た売却益や分配金などは、制度の範囲内で非課税になります。同じ商品へ投資するのであれば、課税口座よりもNISAを優先して利用する合理性があります。

課税口座とNISA口座の税金の違いを示す図
NISA口座で買うか、課税口座で買うか。同じ商品でも手元に残る額が変わります。

NISAそのものが利益を生むわけではなく、あくまで税制上の入れ物です。その中に何を入れるかによって、値動きもリスクも大きく変わります。

「NISAをしているから安心」ではなく、「NISAを使って何に投資しているのか」を理解することが大切です。

なお、NISA口座で損失が出た場合、その損失を課税口座の利益と相殺する損益通算や、翌年以降へ繰り越すことはできません。非課税という利点だけでなく、この点も理解して利用する必要があります。

資産運用を始めるなら、NISAを優先して活用したい

NISAのもう一つの利点は、必要になったときに保有商品を売却できることです。

老後資金を準備する制度としてはiDeCoもありますが、iDeCoは原則として60歳まで資産を引き出せません。掛金が所得控除になる利点がある一方、使える時期には制限があります。

その点、NISAは売却時期を自分で決められるため、生活の変化に合わせて活用しやすい制度です。

NISAとiDeCoをどう使い分けるかは、以前の記事「住宅ローンも教育費もまだある50代が、NISAとiDeCoを考えるとき」で整理しています。

売却できるNISAと原則60歳まで引き出せないiDeCoを比べる図
NISAは必要な時期に売却できますが、元本が保証されているわけではありません。

「売却できる」ことと、「いつでも損をせずに現金化できる」ことは違います。相場が大きく下落しているときに売却すれば、損失が確定する可能性があります。預金のように元本が守られた状態で、いつでも引き出せるわけではありません。

こうした違いを理解したうえで資産運用を始めるなら、NISAを優先して活用する価値があると思います。

NISAは、若い人だけの制度ではない

若い人は、長い運用期間を確保しやすく、積立投資の時間を味方にできます。そのため、NISAを早く始める価値は大きいと思います。

しかし、NISAは若い人だけの制度ではありません。

20代から60代以降までNISAを使えることを示す図
年齢だけではなく、いつ使うお金なのかで投資を判断します。

50代や60代以降でも、運用できる期間を確保できるならNISAを利用する選択肢があります。年齢だけで判断せず、いつから取り崩すのかまで考えて活用することが大切です。

NISAで何を買えばよいのか

NISA口座を開設すると、次に迷うのが商品選びです。

金融機関によって、取り扱う商品や販売方針は異なります。「一番人気の商品です」と案内されても、販売会社の順位だけで決めず、少なくとも次の点は自分でも確認したいところです。

  • 何に投資する商品なのか
  • どの国や企業に、どの程度分散されているのか
  • 購入時や保有中に、どのような費用がかかるのか
  • どの程度の値下がりがあり得るのか
NISAの商品を投資先、分散、費用、値下がりから確認する図
勧められた商品をそのまま選ばず、中身と費用を確認します。

ここからは、よく比較されるS&P500に連動する投資信託と、全世界株式に投資するオール・カントリー型の投資信託を見ていきます。

S&P500は、米国の成長に投資する選択肢

S&P500は、米国を代表する大型企業約500社で構成される株価指数です。

アップル、マイクロソフト、アマゾンなど、世界的に事業を展開する企業が多く含まれています。個別企業の株式を一社だけ買う場合と比べ、約500社へ分散して投資できることが特徴です。

代表的な投資信託の一つに、eMAXIS Slim 米国株式(S&P500)があります。S&P500指数への連動を目指す商品です。この記事では、以降、この投資信託を分かりやすく「S&P500」と表記します。

S&P500が米国企業約500社へ投資することを示す図
S&P500は約500社へ分散しますが、投資する国は米国に集中します。

S&P500は、米国企業の成長に期待する方にとって分かりやすい選択肢です。一方で、約500社へ分散されていても、投資する国は米国に集中します。米国株式市場の低迷や為替変動の影響を受ける点は理解しておく必要があります。

オルカンは、世界全体に分散する選択肢

eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)は、日本を含む先進国と新興国の株式へ幅広く投資する商品です。この商品の愛称が「オルカン」です。

「新NISA&『オルカン』投資」は、日経トレンディの「2024年ヒット商品ベスト30」で第1位に選ばれました。投資に詳しくない方にも「オルカン」という呼び方が広く知られるきっかけになった出来事です。

オルカンは、特定の国の将来を自分で予想するのではなく、世界全体の成長を取り込もうとする選択肢です。一つの商品で、多くの国と企業へ分散しやすい点が特徴です。

オルカンが世界各国へ分散投資することを示す図
オルカンは世界へ分散しますが、各国へ均等に投資する商品ではありません。

「全世界」といっても、各国へ均等に投資するわけではありません。株式市場の規模に応じて構成されるため、米国株式が大きな割合を占めています。

2本は、初心者が最初に検討したい有力な選択肢

私は、NISAで長期の積立投資を始める初心者にとって、S&P500とオルカンは、最初に検討したい有力な選択肢だと考えています。

どちらも購入時手数料がかからず、保有中の運用コストも、現在は最安値クラスです。多くの企業へ分散でき、複雑な商品をいくつも組み合わせなくても、どちらか一つから始められる分かりやすさもあります。

オルカンとS&P500の純資産総額が大きいことを示す図
2本には、他の投資信託と比べても大きな資金が集まっています。

この2本に大きな資金が集まっていることは、純資産総額からも確認できます。純資産総額とは、その投資信託が保有している資産から負債を差し引いた、ファンド全体の規模を示す金額です。

2026年8月12日に公表されていたYahoo!ファイナンスの投資信託純資産残高ランキング(2,466本)では、オルカンが第1位、S&P500が第2位です。

投資信託・純資産総額 上位6本
2026年8月12日現在・単位:兆円
順位投資信託純資産総額
3位インベスコ 世界厳選株式オープン(為替ヘッジなし・毎月決算型)約4.26兆円
4位SBI・V・S&P500インデックス・ファンド約3.07兆円
5位アライアンス・バーンスタイン・米国成長株投信Dコース約3.01兆円
6位楽天・全米株式インデックス・ファンド約2.67兆円

出典:Yahoo!ファイナンス「投資信託ランキング(純資産残高)」。百万円単位の公表値を兆円単位へ換算し、小数第3位を四捨五入。

3位の投資信託が約4.26兆円であるのに対し、オルカンとS&P500はいずれも12兆円を超え、約3倍の規模があります。十分な純資産総額があることは、ファンドの運用継続性を判断するうえでの安心材料の一つです。

ただし、ファンドの規模と値下がりリスクは別の問題です。どちらも株式へ投資するため元本は保証されず、市場環境によっては大きく値下がりします。オルカンも、世界へ分散しているから安全という意味ではありません。

S&P500とオルカン、どちらを選ぶか

両者の違いを簡単に整理すると、次のようになります。

考え方選択肢の例
米国の成長性を重視し、米国への集中を受け入れるS&P500
特定の国を選ばず、世界全体へ分散したいオルカン
米国を重視するS&P500と世界へ分散するオルカンを比較する図
過去の成績で選ぶと、選び直すたびに判断が揺れます。

どちらが将来、高い成果を上げるのかは事前には分かりません。直近の成績ではなく、米国を重視するのか、世界全体へ分散するのかという考え方で選びます。

「迷うから半分ずつ買う」という考え方もありますが、オルカンにも米国株式が多く含まれています。両方を持つなら、分散を増やすためではなく、米国への配分を高めたいなど、目的を理解して組み合わせることが大切です。

どうしても迷うのであれば、まずは世界全体へ分散できるオルカンから始めるのが、初心者には分かりやすい選択だと思います。

商品を選んだ後は、投資額を家計から決める

NISAの年間投資枠をすべて使う必要はありません。投資額は、制度の上限ではなく家計から決めます。

  • 毎月いくら黒字なのか
  • 年間の不定期支出はいくらあるのか
  • 生活防衛資金は確保できているか
  • 教育費、住宅費、車の購入など、数年以内の支出を分けているか
家計の黒字、生活防衛資金、近い将来の支出からNISAの投資額を決める図
NISAの枠ではなく、家計に残る余裕資金から投資額を決めます。

これらを確認した後に残る余裕資金が、投資を考えられるお金です。最初から大きな金額を積み立てる必要はありません。少額から始め、家計の変化に合わせて積立額を調整すればよいと思います。

生活防衛資金の考え方は「生活防衛資金はいくら必要か。万一に備えるお金を先に確保する」で、数年以内に重なる大きな支出については「教育費・住宅費・老後資金は、なぜ同時に考えるのか」で説明しています。

NISAは、家計に合わせて利用する制度です。NISAのために生活を苦しくしては、本末転倒です。

始めた後に避けたいこと

特に避けたいのは、次のような行動です。

  • 値上がりランキングを見て、頻繁に商品を乗り換える
  • 相場が下落したときに怖くなり、すべて売却する
  • NISAを使っているだけで安心し、資産全体の偏りを確認しない
NISA開始後に頻繁な乗り換えや狼狽売りを避ける図
下落したときに何をするかを、買う前に決めておきます。

購入後は日々の値動きだけで方針を変えず、当初の目的に合った運用を続けられているかを確認することが大切です。

まとめ:NISAは、非課税の利点と投資のリスクを理解して使う

NISAは利益を保証する商品ではなく、投資で得た利益を非課税にする制度です。家計の土台が整い、長く運用できる余裕資金があるなら、資産形成で優先して活用したい制度だと思います。

S&P500は米国の成長を重視し、オルカンは世界全体へ分散する選択肢です。どちらにするか迷う初心者には、まずオルカンから始める方法も分かりやすいと思います。

家計を整えてNISAを使いS&P500かオルカンを選び無理なく続ける流れを示す図
制度と商品の特徴を理解し、家計に合う金額で続けます。

大切なのは、NISAの枠を埋めることではありません。商品の投資先やリスクを理解し、家計に無理のない金額で長く続けることです。それが、NISAを人生の選択肢を増やすために活用する第一歩になります。

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教育費はいくら必要か。そして、どう備えるのか

参考資料

※本記事は、NISAと投資信託について一般的な情報を提供するものです。商品に関する記載は執筆時点の情報にもとづく筆者の見解であり、将来の運用成果を保証するものではありません。運用コストや純資産総額などの数値は変わります。投資判断は、商品の交付目論見書などを最新の情報で確認したうえで、ご自身の判断と責任で行ってください。