私は、オルカンを長期の資産形成にお勧めしたい商品の一つだと考えています。米国株への偏りや為替リスクなどを踏まえても、その評価は変わりません。
弱点がないから勧めるのではありません。低いコストで世界の幅広い企業に投資でき、無理なく積み立てを続けやすい。リスクを理解したうえでも、選ぶ価値のある商品だと思うからです。
この記事を書くきっかけは、新聞の「『オルカン一択』再検討の時」というコラムでした。「本当にこのままでいいのか」と迷った方に、私が今もオルカンを勧める理由をお伝えします。
※この記事でいうオルカンは、「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を指します。
私がオルカンを勧める理由
長く持つお金だからこそ、低コストが大切
オルカンは購入時手数料がなく、純資産総額に対してかかる基本の信託報酬は年0.05775%(税込)以内です。運用中にかかり続ける費用を低く抑えられることは、長期で持つうえで大きな魅力です。
将来の値上がりは約束できません。しかし、あらかじめ費用を確認し、低コストの商品を選ぶことはできます。私は、ここを大切にしています。
※上記は費用全体の上限ではありません。有価証券の貸付による収益の一部を追加報酬とする場合があり、売買・保管・監査などの費用も別途かかります。費用の説明資料で確認できます。
一本で、世界の幅広い企業に投資できる
オルカンは、日本を含む先進国と新興国の株式に投資します。連動対象のMSCI ACWIには、2026年7月31日時点で2,460銘柄が含まれています。
自分で国や企業を一つずつ選び、買いそろえなくても、一本で広く投資できる。この分かりやすさも、私は高く評価しています。もちろん、世界の株式全体が下がるときの損失まで防げるわけではありません。
積み立てを続ける仕組みが、シンプル
自分が無理なく出せる金額を決めて積み立てる。次に買う銘柄を毎回探さなくても、世界の株式に投資を続けられます。投資のために生活のすべてを使う必要はありません。

低コスト、幅広い分散、続けやすさ。この組み合わせに、私は優良商品としての価値を感じています。
規模の大きさも、私は判断材料の一つにしています。ただし、人気の証明としてではありません。長く持つうえでの安心材料としてです。
投資信託は、受益権の口数が一定を下回ると繰上償還されることがあります。オルカンの純資産総額は三菱UFJ銀行の商品情報によると2026年8月26日時点で約13.8兆円あり、その心配は当面小さいと考えてよいでしょう。20年、30年と持ち続ける前提の商品では、これは軽くない条件だと思います。
もっとも、規模が大きいことは値下がりを防ぐものではありません。人気や規模だけで優劣を決めるのではなく、私は商品の仕組みを評価しています。
弱点があっても、評価が変わらない理由
では、「米国株に偏っている」「円安に助けられただけではないか」といった懸念を、どう考えるか。
私は、リスクの指摘を無視してよいとは思いません。ただ、リスクがあることと、選ぶ価値がないことは別です。特徴と、私の考えを並べてみます。
| 気になる点 | 確認しておく事実 | 私はこう考えます |
|---|---|---|
| 米国株に偏っている | 連動対象指数の米国比率は63.55% | 国ごとの均等配分ではありません。ただし、米国以外も含め、幅広い企業に投資する意味は残ります |
| 大型株の影響が大きい | 上位10銘柄で24.21%、情報技術セクターで30.28% | 集中による値動きには注意が必要です。それでも、少数の個別株を自分で選ぶ方法とは違う、分散の価値があると考えます |
| 円高になると不利ではないか | 原則として為替ヘッジをせず、円高は円換算の評価額を押し下げる要因になります | 為替の追い風がずっと続くとは考えません。その変動も引き受けて、長期で海外の企業に投資するという判断です |
| 債券が入っていない | 株式に投資する商品で、債券を含むバランス型ではありません | 家計の全財産を一本に集める必要はありません。預金や債券との配分は、資産全体で考えればよいと思います |
※構成比はMSCI ACWIの資料の2026年7月31日時点の数値です。実際のファンドの保有比率とは多少異なる場合があります。オルカンは、この指数の配当込み・円換算ベースへの連動を目指します。

「全世界に分散」という名前から、国や業種に均等に投資していると考えていたなら、その理解は改める必要があります。幅広く分散することと、偏りがないことは同じではありません。
一方で、これらはオルカンの仕組みを理解するときに知っておくべき特徴であって、指摘された瞬間に、低コストや分散の良さまで消えるわけではありません。
私が勧めているのは、「下がらない商品」ではなく、「値動きを引き受けながら、長期で世界の株式に投資するための商品」です。だから、弱点を踏まえても評価は変わらないのです。
否定的な話だけで、商品の良さを見失わない
オルカンのリスクを知り、債券や高配当株など、別の選択肢に目を向けることも大切です。ただ、選択肢が増えたときほど、自分の目的に照らして整理する必要があります。別の方法にも良さがあることは、オルカンの良さがなくなるという意味ではありません。
株価の割高感や為替の変動についても、投資を続けるうえで知っておきたい点です。そのうえで、「気をつける点がある」から「選ばない方がよい」へ、すぐに結び付ける必要はないと思います。
ほかの商品と比較する際には、リスクだけでなく費用にも目を向けたいところです。オルカンは、販売会社の収入となる購入時手数料がなく、信託報酬から販売会社に支払う報酬も低い水準です。この低コストという良さも、ほかの商品へ乗り換えるかを考える際の大切な比較材料になります。
そのうえで確かめたいのは、その指摘が、自分の選んだ理由を見直す必要のある内容なのかということです。

自分が見落としていたリスクなら、受け止める。理解したうえで選んでいる特徴なら、否定的な言い方に出会うたびに迷い直す必要はありません。私が伝えたい「雑音に惑わされない」とは、そういうことです。
お勧めの商品でも、合わないお金はある
オルカンを勧めることは、誰にでも、どんなお金にも勧めるという意味ではありません。
これから20年、30年かけて積み立てるお金と、数年後の生活費として取り崩すお金では、値下がりの受け止め方が違います。大切なのは年齢だけでなく、そのお金をいつ使うかです。
- 近く使う予定のお金や、生活を守るためのお金まで、株式に回さない
- 値下がりしたとき、生活費のために売らざるを得なくなる配分にしない
- 含み損が気になって眠れなくなるなら、投資額を抑えることも考える
取り崩す時期が近い人には、預金や債券を含めた資産全体の配分が重要になります。一方、長く積み立てる人には、すぐに使わないお金で投資を続ける時間があります。ただし、長期なら必ず利益が出るわけではありません。
また、オルカンは定期的な分配金を受け取ることを主目的とする商品ではありませんが、運用成果には投資先企業の配当も含まれます。定期収入が必要なら、分配金を受け取る方法と必要な分だけ取り崩す方法を比較します。高配当株やJ-REITにも値下がりや減配のリスクはあります。

商品の評価と、自分のお金への使い方を分けて考える。ここを押さえれば、「オルカンは良いのか、悪いのか」だけで悩まずに済むと思います。
比較で迷い続けるより、無理なく始める
「オルカンでいいのだろうか」と考え始め、債券も調べ、高配当株も気になり、そのうち「もう少し勉強してからにしよう」となる。そして、そのまま1年が過ぎる。
私は、始められる条件が整っているのに、商品の比較だけで止まってしまうことを心配しています。
生活に必要なお金を確保し、値下がりにも耐えられ、長期の株式投資が目的に合っている。それでも商品を決めきれないなら、オルカンから無理のない金額で始めるのは、十分によい選択だと思います。
以前の記事でも書いたように、長期積立に回す株式部分の候補は、オルカンか、S&P500に連動する低コストの投資信託の二択を基本に考えています。自分で目的を持って別の選択肢を選べる人まで、この二つに限るという意味ではありません。
なお、S&P500は指数の名前で、連動する商品によって費用は異なります。また、S&P500連動商品への乗り換えで、米国株への集中が解消されるわけではありません。

→ 関連記事:NISAは優先して使いたい。S&P500とオルカン、何を買う?
完璧な商品を探し続けるより、理解できる商品で無理なく続けることを大切にしたい。ただし、家計に余裕がない人や値動きに耐えられない人まで、急いで始める必要はありません。
始めた後も、雑音で方針を変えない
オルカンを選んだからといって、毎年順調に増えるわけではありません。大きく下がる局面もあります。
そのときに否定的な情報を見て、「やっぱり駄目だったのか」と売ってしまう。含み損で売れば損失が確定し、その後に相場が回復しても、すでに市場から離れていれば回復を取り逃すことがあります。もっとも、いつ回復するか、使う時期までに回復するかは分かりません。
だから、値下がりを経験してから慌てるのではなく、平常時に、どこまで耐えられるかを考えておく。私は、これが長期投資を続けるために大切だと思います。

もちろん、生活やお金を使う時期が変わったために売ることまで、狼狽売りではありません。相場への恐怖だけで動くのか、自分の計画に沿って見直すのかを区別することです。
まとめ ― リスクを知ったうえで、私は勧めたい
低いコストで、世界の幅広い企業に投資でき、積み立てを続けやすい。私は、この良さを踏まえ、オルカンを長期の資産形成にお勧めしたいという考えを変えていません。
その良さを生かすために、確認してほしいのは次の二つです。
- 何のために、いつ使うお金を運用するのか
- どれくらい値下がりしても、家計と気持ちの両面で持ち続けられるのか

金融リテラシーを高めるのは、次々に新しい商品を探すためだけではありません。自分が選んだ理由を理解し、必要な見直しと、振り回されるだけの迷いを区別するためでもあります。
否定的な意見があるから駄目なのでも、人気があるから安心なのでもありません。良さも弱点も知ったうえで、それでも選ぶ。私は、オルカンはその候補に十分値する商品だと考えています。
※この記事は、2026年8月時点の情報をもとに、筆者の考えをまとめたものです。すべての方に特定の商品が適するという趣旨ではありません。投資信託は元本保証ではなく、長期投資でも損失が生じる可能性があります。購入前に最新の目論見書でリスクや費用を確認し、ご自身の目的・資金状況・リスク許容度にもとづいて判断してください。
- 三菱UFJ銀行:オルカンの商品情報 ― 購入時手数料、純資産総額(2026年8月26日 137,558.49億円)。リンク先は随時更新されます。
- 松井証券:オルカンの確定拠出年金向け説明資料 ― ファンドの基本の信託報酬、追加報酬・その他費用、販売会社への配分。2026年8月27日確認。
- MSCI「MSCI ACWI Index (USD) Index Factsheet」 ― 2026年7月31日時点(銘柄数2,460/米国63.55%/上位10銘柄24.21%/情報技術30.28%)。リンク先は随時更新されます。
- 三菱UFJアセットマネジメント:オルカンの分配方針
- 金融庁「資産形成の基本」
- 執筆のきっかけ:日本経済新聞 2026年8月22日朝刊「大機小機」(『オルカン一択』再検討の時)