「結婚したい気持ちはあるけれど、お金のことを考えると踏み出せない」
そのように感じている方は、少なくないと思います。
2026年9月12日の日本経済新聞には、「『一生結婚しない』2割超」と「生活不安で結婚ためらう」という二つの記事が掲載されました。
収入、住居費、結婚生活の準備、子育てや教育にかかるお金。将来を真剣に考えるほど、不安が大きくなるのは自然なことです。
ただ、見出しから受ける印象だけで、「今の収入では結婚できない」と選択肢を閉じる必要はありません。結婚するかどうかは本人が決めることですが、本当は望んでいるのに、お金の不安だけで諦めようとしているなら、一度立ち止まって考えてほしいと思います。
今回は、最新の調査結果と、自治体の相談窓口で家計改善を支援してきた経験から、結婚とお金について考えます。
「一生結婚するつもりはない」が初めて2割を超えた
国立社会保障・人口問題研究所は、2026年9月11日、第17回出生動向基本調査の結果を公表しました。調査は2025年6月に実施され、有効票は独身者調査6,756票、夫婦調査5,024票です。

18~34歳の未婚者のうち、「一生結婚するつもりはない」と答えた人は、男性24.0%、女性21.5%でした。男女とも、調査開始以降初めて2割を超えています。
反対に「いずれ結婚するつもり」と答えた人は、男性75.1%、女性77.8%です。前回調査の男性81.4%、女性84.3%から低下し、初めて8割を下回りました。
希望する子どもの数も減っています。「いずれ結婚するつもり」と答えた未婚者では、男性1.64人、女性1.70人でした。夫婦が予定している子どもの数は1.95人となり、初めて2人を下回りました。
日本経済新聞が京都大学の柴田悠教授の協力を得て試算した「希望出生率」は1.46です。コロナ禍前の1.8前後、前回調査時の1.6程度から、さらに低下しました。
数字だけを見れば、結婚や子どもを望まない人が急速に増えているように見えます。
「結婚したくない」と「今は考えられない」は同じではない
同じ調査には、もう一つ見ておきたい数字があります。

「一生結婚するつもりはない」と回答した人のうち、4~5割は、相手が現れたり、収入や貯蓄が増えたりした場合には、結婚を望む可能性があると答えています。
そのうち、結婚を望む可能性があると答えた人の中で、収入や貯蓄の増加をきっかけとして挙げた人は、男性56.1%、女性44.6%でした。
つまり、「結婚したくない」という回答の中には、生涯を通じて結婚を望まない人だけでなく、「今の状況では考えられない」という人も含まれています。
現在の回答は大切な意思表示ですが、すべてが将来まで変わらないと決まったものではありません。見出しの「2割超」だけでは、その内側にある迷いや条件の違いまでは見えてきません。
お金の不安は、現実にある
経済的な不安を軽く扱うことはできません。

日本経済新聞によると、1年以内に結婚すると仮定した場合の障壁として、男女とも約3割が「挙式や新生活の準備に必要な資金」を挙げ、最も多くなりました。次に多かったのは住居の問題です。
理想の数の子どもを持たない理由では、「子育てや教育にお金がかかりすぎる」が52.9%で最多でした。「高年齢で生むのはいやだ」は35.0%、「育児の心理的・肉体的負担に耐えられない」は27.8%です。
内閣府の経済財政白書でも、30代の男性有業者では、年収が高いほど未婚率が低い傾向があり、この傾向は2012年からほとんど変わっていないと分析されています。
収入、住居、子育てにかかる費用は、結婚や出産の判断に影響しています。「お金は関係ない」と言うことはできません。
しかし、お金だけですべてを説明することもできません。
相談窓口で見てきた、収入だけでは説明できない家族の姿
自治体で生活に困っている方の相談を受けてきた中で、収入は決して高くなくても、結婚し、何人もの子どもを育てている家庭に数多く出会いました。

これは統計ではありません。相談窓口には、すでに家計が苦しくなった家庭が集まりやすいという偏りもあります。収入が少なくても問題なく暮らせる、と言いたいわけでもありません。
実際、住居費、教育費、病気や失業によって、家計が立ち行かなくなる現実も見てきました。必要な支援を受けられず、一人で抱え込んでいる家庭もあります。
それでも、現場で見てきた家族の姿は、「一定以上の収入がなければ家庭を持てない」という単純な説明とは一致しませんでした。
子どもが増えれば、生活費や教育費が増え、一人当たりで見た家計の余裕が小さくなる方向に働きます。経済的に余裕があるから子どもを持てる、という一方向だけで捉えることはできません。
お金が家族形成の前提条件になることはあります。しかし、家庭を持てるかどうかが、収入だけで決まるわけではありません。
結婚が減った理由は、お金だけではない
以前も、すべての若者が経済的に豊かだったわけではありません。それでも、多くの人が結婚していました。
ただし、昔と今を所得だけで比べることはできません。以前は、年齢とともに賃金が上がり、長く同じ会社で働くことを前提に、将来の計画を立てやすい面がありました。今は、将来の収入や働き方を見通しにくいと感じる人も多いでしょう。
社会のあり方も変わりました。

女性が経済的に自立できるようになり、結婚が生活のための必須条件ではなくなりました。進学する人が増え、働き始める時期や結婚、出産の時期も後ろへ移っています。
そして、結婚するかどうかを、本人の意思で選べる社会になりました。これは大切な進歩です。結婚しない生き方も、当然に尊重されるべきです。
一方で、自由に選べるようになったからこそ、出会い、交際、結婚までを自分で進めなければならなくなりました。お金の問題に加え、出会い方や人間関係の築き方も、以前より個人に委ねられています。
自由と引き換えに、仲介する人が減った
かつては、親戚、近所の人、職場の上司などが、結婚相手を紹介することが珍しくありませんでした。

そこには、望まない結婚を迫ったり、結婚しない人を追い詰めたりする問題もありました。以前の仕組みに戻すべきではありません。
ただ、社会の中にあった「人と人をつなぐ機能」まで薄くなり、その代わりを個人の努力だけに任せてきた面はあります。
調査では、25歳以上の未婚者が独身でいる理由として、「適当な相手がいない」が最も多くなっています。恋人がいる人は男性19.6%、女性27.8%にとどまり、未婚者の3人に1人は交際そのものを望んでいません。
その空白を埋め始めているのが、マッチングアプリなどの新しい仕組みです。調査時点から遡って5年以内に結婚した夫婦では、アプリ等で知り合った割合が20.2%となり、前回調査の11.0%から大きく増えました。
出会いの形は変わっても、人と人をつなぐ機能は必要とされています。本人の意思を尊重しながら、安心して出会える環境をどう整えるかも、少子化を考えるうえで重要です。
支援の重心が、結婚後に寄っていないか
国は、児童手当、保育、育児休業給付、教育費負担の軽減など、結婚後や出産後の支援を拡充してきました。

その成果もあります。第1子の妊娠が分かったときに働いていた妻に限ると、第1子出産前後の就業継続率は80.5%となり、2015~2019年の69.9%から上昇しました。
夫の育児参加も増えています。第1子が3歳になるまで、育児を「ひんぱんに」または「日常的に」行う夫の割合は、第1子が2005~2009年に生まれた夫婦の54.5%から、2020~2022年に生まれた夫婦では74.0%へ上昇しました。
子育てと仕事を両立しやすくする支援は、これからも必要です。
一方、日本経済新聞によると、政府は2023年に少子化対策の「加速化プラン」を策定し、国と地方で3.6兆円の予算増額を進めています。こども家庭庁の2027年度予算の概算要求7.7兆円のうち、保育園・学童の運営費や補助金、児童手当、育児休業給付など、結婚後の支援が4分の3を占めます。
では、その手前にある出会い、交際、結婚生活の準備への支援は、十分に知られているでしょうか。
出産後の支援を厚くしても、結婚を望む人が出会えず、経済的不安から入口で立ち止まったままでは、支援へたどり着く人は増えません。支援の重心が、少し後ろに寄りすぎていないかという疑問が残ります。
結婚すると、家計が必ず苦しくなるわけではない
結婚には支出が増える面があります。結婚式、引っ越し、家具や家電、子どもを持つ場合の養育費や教育費などです。

一方、二人で暮らすことで、一人当たりの生活費を抑えやすくなる面もあります。
家賃、光熱費、通信費、家具や家電は、一人暮らしの費用がそのまま2倍になるわけではありません。共働きを続けられるなら、収入源も二つになります。どちらかの収入が一時的に減ったとき、もう一方の収入で支えられる場合もあります。
もちろん、働き方や住む場所、子どもを持つかどうかによって結果は変わります。二人で暮らせば必ず家計が安定する、という意味ではありません。
大切なのは、世間で示される平均額を、そのまま自分にも必要な金額だと思わないことです。
挙式をどうするのか。どこに住むのか。家具や家電をどこまで新しくするのか。子どもを望む場合、教育にどの程度お金をかけるのか。選択によって必要額は大きく変わります。
「結婚にはいくら必要か」ではなく、「自分たちは、どのような暮らしを望んでいるのか」から考える必要があります。
漠然とした不安は、数字に置き換える
お金の不安があるとき、すぐに結婚するか、諦めるかの二択にする必要はありません。

まず、現在それぞれが負担している家賃、光熱費、通信費、食費などを一覧にします。次に、二人で暮らした場合に、何が一つになり、何が増えるのかを確認します。
結婚生活の準備費用も、「必要なもの」「できれば用意したいもの」「後からでもよいもの」に分けます。一度にすべてを揃える必要はありません。
子どもを望む場合は、出産、保育、教育にかかる時期を並べ、利用できる公的支援も含めて考えます。
漠然とした不安は、数字にすると具体的な課題へ変わります。足りない金額と時期が分かれば、貯め方、働き方、住む場所など、考えられる対応も見えてきます。
若いうちから家計を整える基本については、以前の記事でも説明しています。
まとめ――お金だけを理由に、選択肢を閉じないでほしい
「一生結婚するつもりはない」と答えた未婚者は、男女とも初めて2割を超えました。ただし、その4~5割は、相手との出会いや収入・貯蓄の増加など、状況が変われば結婚を望む可能性があると答えています。

経済的不安は現実にあります。30代の男性有業者では年収が高いほど未婚率が低い傾向があることも、結婚生活の準備費用や住居が障壁になっていることも、調査に表れています。
それでも、結婚できるかどうかが、現在の収入だけで決まるわけではありません。二人で暮らすことで共有できる費用もあり、選ぶ暮らし方によって必要なお金も変わります。
結婚しない生き方を選ぶ自由は、尊重されるべきです。誰かに結婚を迫られる必要はありません。
ただ、本当は結婚を望んでいるのに、「今の収入では無理だろう」という漠然とした不安だけで諦めようとしているなら、先に数字を整理してみてください。
結婚するかどうかは、そのうえで決めても遅くありません。見出しや平均額に人生を決めてもらうのではなく、自分が望む暮らしと、自分の家計を見て選んでほしいと思います。
出典・参考資料
- 国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2026年9月11日公表)
- 国立社会保障・人口問題研究所「第17回出生動向基本調査 結果の概要」
- 内閣府「令和5年度 年次経済財政報告」第2章第2節
- 日本経済新聞「『一生結婚しない』2割超」(2026年9月12日)
- 日本経済新聞「生活不安で結婚ためらう」(2026年9月12日)
※結婚するかどうか、子どもを持つかどうかは、本人の意思によって決めるものです。本記事は結婚や出産を勧めたり、特定の生き方を否定したりするものではありません。掲載した数値は調査対象者全体の傾向であり、個人の考えや状況を示すものではありません。制度や数値は2026年9月時点のものです。