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新築住宅の価格が高くなり、築年数の古い中古マンションも、住まい探しの現実的な選択肢になっています。同じ予算でも、立地や広さの希望をかなえやすくなることは、築古物件の魅力です。

国土交通省の推計では、築40年以上の分譲マンションは2025年末で約158.8万戸。2035年末には約313.1万戸と、ほぼ倍に増える見込みです。

日本経済新聞の2026年9月19日の記事も、築古物件の購入で注意したい点を取り上げていました。

築年数が古いから、悪い物件とは限りません。ただ、きれいにリフォームされた部屋を見て「これなら大丈夫」と決めてしまうのは危険です。室内の見た目だけでは分からない問題が、建物全体に残っていることがあるからです。

買う前に見るべきなのは、この建物がこれまでどう保たれ、これからどう保たれていくかです。

住宅価格が高くなっている背景や、暮らしの価値との関係は、前回の記事で整理しています。今回は、中古マンションを買う前の確認に絞って考えます。

室内は直せても、建物全体は一人では変えられない

内装や設備は、リフォームで新築のように整えられます。壁紙や床を張り替え、キッチンや浴室を入れ替えれば、見た目も使い心地も大きく変わります。

室内の内装だけで決めず、外壁、屋上防水、配管、共用部分など建物全体を確認する図
右は、室内のリフォームとは別に確かめたい建物全体の部分です。

しかし、それで建物全体の耐震性や断熱・遮音性能まで新築と同じになるわけではありません。外壁や屋上、エレベーター、共用の給排水管などの状態も、暮らしに関わります。

新聞では、都内の築約40年のマンションを購入した後、外壁の修繕が不十分だったことが原因とみられる雨水の浸入に悩む例が紹介されていました。室内をきれいにしても、外側から水が入る問題は、部屋の内装工事だけでは解決できません。

共用部分の修繕は、管理組合で方針を決め、費用を用意して進めるものです。一人の所有者が「直したい」と思っても、自分の判断だけで工事を行えるわけではありません。

築古マンションを買うということは、自分の部屋だけでなく、建物の修繕履歴や管理の仕組みも引き受けるということです。

修繕履歴は、回数より中身を見る

まず確かめたいのは、いつ、どこを、どのように修繕してきたかです。

新聞では、大規模修繕の実施回数について、築40年なら2~3回、築50年なら3~4回という目安が示されています。ただし、回数だけで合格・不合格を決めるものではありません。工事の周期は、部位や建物の状態、採用する工法などによって違います。

大切なのは、必要な時期に必要な工事が行われてきたかです。「大規模修繕済み」という説明だけでなく、外壁や屋上防水、設備の更新など、工事の範囲まで確認します。

外壁、屋上防水、設備、配管について、修繕の回数より工事内容と長期修繕計画を確認する図
外壁、屋上防水、設備、配管は、部位ごとに工事の時期が異なります。

特に築古で気をつけたいのが、給水管・排水管です。外観が整っていても、配管の老朽化が残っていれば、漏水などの問題につながります。

配管には、共用部分に属するものと、各住戸の専有部分に属するものがあります。「配管更新済み」と書いてあっても、建物全体の管なのか、室内の管だけなのかで意味が変わります。管理規約と工事記録で、どの範囲まで更新したのかを確かめたいところです。

過去の実績と合わせて、これからの長期修繕計画も見ます。次の大きな工事はいつなのか、何を直す予定なのか。過去と将来をつなげて見ることで、購入後の負担が見えてきます。

積立金の残高ではなく、これからの支払いまで確認する

修繕計画があっても、工事を行うお金がなければ実行できません。そこで確認するのが、修繕積立金と資金計画です。

見るべきなのは、現在の残高だけではありません。長期修繕計画で予定されている工事費と、今後の積立てで用意できるお金がつり合っているかです。

修繕積立金と今後の工事、増額や一時金など購入後の負担を確認する図
毎月の負担に加え、増額や一時金の予定も確認します。

大規模修繕を終えた直後なら、残高は一時的に少なくなります。反対に、残高が多くても、近いうちに高額の工事を控えていれば、余裕があるとは限りません。工事の時期と合わせて判断します。

毎月の修繕積立金が安い物件にも注意が必要です。今の負担が軽くても、将来の値上げや一時金の徴収が予定されていれば、購入後の家計は変わります。

管理組合が借入れをしている場合は、その理由と返済計画も確かめます。借入れがあるだけで悪い物件と決める必要はありませんが、返済原資は何か、積立金からどのくらい返すのか、次の修繕資金も確保できるのかまで見ておきます。

住宅ローンを返せるかだけでなく、管理費・修繕積立金の増額まで含めて払い続けられるか。購入価格と同じくらい、購入後の負担が重要です。

管理費や修繕積立金の増加をきっかけに、所有していた物件を売却した経験は、こちらの記事でも紹介しています。

管理の質は、資料と現場の両方で見る

マンションの管理では、管理組合と管理会社の役割を分けて考える必要があります。

管理組合は、区分所有者たちで建物の管理や修繕、資金計画を決める主体です。管理会社は、契約に基づいて管理業務を担います。管理会社が入っているからといって、所有者がすべてを任せきりにしてよいわけではありません。

所有者自身が住んでいれば、日々の不具合に気づきやすく、自分の住まいとして関心を持ちやすい面があります。一方、賃貸に出されている住戸が多い物件では、所有者が現場の状態を把握しにくくなります。

ただ、ファミリー向けか投資用かという区分だけでは、管理の良し悪しは決まりません。総会や理事会が機能し、修繕の決定と実施が滞っていないかを確認することが大切です。

議事録や決算書と、廊下の放置物、駐輪場、掲示板などの現場を合わせて管理の質を確認する図
放置物や掲示だけで決めず、管理側の対応も合わせて見ます。

頼んだことに対応しない管理会社もある

私も、所有する賃貸用物件の管理で苦労した経験があります。共用の廊下に放置物があり、管理会社に対応を求めても、処理されないままでした。

賃貸物件の管理と、分譲マンション全体の管理では契約や役割は違います。それでも、依頼したことが放置され、説明も十分に得られなければ、管理への信頼は持てません。共用部分が荒れれば、住み心地だけでなく、借り手や買い手からの評価にも影響します。

会社の名前や担当者の愛想だけでなく、必要なことに具体的に対応しているかを見る。その姿勢は、住まい選びでも同じです。

部屋の外を歩き、時間帯も変えてみる

現地では、廊下、ゴミ置き場、駐輪場、掲示板などを見てください。放置物がないか、清掃されているか、対応されない不具合が残っていないか。管理の状態は、こうした場所にも表れます。

住人同士の騒音や生活マナーの問題も、入居後に簡単に解決できるとは限りません。仲介会社や管理人に、把握しているトラブルがないかを聞き、可能なら平日の夜や休日にも訪れて、生活音や周辺の雰囲気を確かめておくとよいでしょう。

掲示板の注意書きがあるだけで、問題の多いマンションと決めつける必要はありません。問題に対して管理側が対応している場合もあります。掲示や議事録、質問への回答を合わせて見ます。

耐震性・住宅ローン減税・保険も見落とさない

耐震性は、築年数の印象ではなく資料で確認する

1981年5月31日以前に建築確認を受けた建物は、いわゆる旧耐震基準の物件です。完成した年だけで判断せず、建築確認の時期を資料で確かめます。

旧耐震の物件では、耐震診断の結果や、必要な耐震改修が行われているかも確認します。耐震性は価格や資産価値以前に、暮らす人の安全に関わる問題です。

耐震性、住宅ローン減税、管理組合の保険について見落としを防ぐ図
耐震性・減税・保険は、どれも購入前に書類で確かめたい項目です。

減税は、使える前提で資金計画を立てない

住宅ローン減税では、1982年1月1日以後に建築された住宅かどうかが、耐震性に関する要件の確認で一つの区切りになります。それ以前の住宅では、耐震基準適合証明書など、所定の書類で要件を満たすことを確認します。

ここで混同しやすいのが、耐震基準を判断する「建築確認日」と、減税の要件に出てくる「建築日」です。日付も意味も違います。

減税には、耐震性以外にも所得や床面積、借入期間などの要件があります。古い物件だから使えない、改修済みだから必ず使えると判断せず、必要な書類や手続きの時期も含め、契約前に確認しておきます。

管理組合の保険は、補償と自己負担を見る

新聞では、築古マンションで保険料が上がり、特約を外すなどして補償範囲を狭めている例も紹介されていました。

管理組合が保険に入っていることだけで安心せず、漏水などの事故で何が補償されるのか、免責金額などの自己負担はいくらかを確認します。保険の対象外となる部分や、補償しきれない費用があれば、管理組合や個々の所有者の負担になる可能性があります。

管理組合の保険と、自分の部屋や家財のために加入する保険は役割が異なります。契約内容を確かめ、どこまで備えられているかを整理しておきたいところです。

契約直前ではなく、検討中に資料を求める

ここまで見てきた修繕履歴や積立金、管理の状態は、資料で確かめられます。

重要事項説明は、売買契約を結ぶ前に受けます。管理費や修繕積立金、記録がある場合の修繕実施状況など、説明対象となる事項があります。

ただし、説明を受ける段階まで待ってからでは、資料を読み込み、分からない点を確かめる時間が足りなくなることもあります。購入を検討しているうちに、仲介会社を通じて資料を求めましょう。

購入検討中に修繕履歴、長期修繕計画、決算書、管理規約などを取り寄せ、契約前に確認する図
不明点を解消する時間を確保し、納得してから契約します。
確認する資料見ておきたい内容
修繕履歴・工事記録実施年、工事内容、配管などの更新範囲
長期修繕計画・資金計画次の工事の時期と費用、積立金の増額や一時金の予定
管理組合の決算書など積立金残高、滞納の状況、借入残高と返済負担
総会議事録など修繕や値上げの議論、未解決の問題、意思決定の状況
管理規約・使用細則専有部分と共用部分の範囲、リフォームや生活上の制限

資料を見ても分からないところは、質問し、根拠のある回答を求めます。仲介会社が管理会社や売主に確認する時間も必要ですが、回答が曖昧なまま契約を急がせるようなら、いったん立ち止まりたいところです。

売る側と買う側では立場が違います。「説明されたから安心」ではなく、理解し、納得できたかどうかで判断する必要があります。

まとめ ― 築年数より、これまでとこれからの管理を選ぶ

築古マンションには、価格や立地、広さの面で魅力があります。年数がたっていても、必要な修繕と管理が続けられている物件なら、住まいの選択肢になります。

修繕履歴、長期計画、管理体制、適切な修繕を確認し、築年数や見た目だけでなく管理を重視する図。2018年、2021年、2024年の修繕記録は説明用の仮例
図の修繕履歴・実施年は、説明用の仮例です。

反対に、室内だけがきれいでも、建物全体の問題や将来の費用負担が残っていれば、その問題も購入後に引き受けることになります。

新築・中古を問わず、見た目や業者の説明だけで決めず、資料や必要に応じた専門家の確認も利用する。分からないことを曖昧にしたまま契約しない。この姿勢が、後悔を防ぐために大切です。

マイホームは、長く暮らす場所であり、大きなお金を使う財産です。部屋のきれいさに目を奪われず、建物全体を維持していける仕組みがあるかまで、確かめて選びたいものです。

参考資料

※制度や数値は2026年10月時点の情報です。物件の状態、管理規約、保険の補償内容、住宅ローン減税の適用要件は個別に異なります。購入を検討する際は、仲介会社や管理会社、建築士、税理士など、内容に応じた専門家に確認してください。本文の経験は個別の事例であり、特定の物件や会社を評価・推奨するものではありません。