新聞記事で、おひとりさまの相続と死後事務の準備が取り上げられていました。
遺言を作っておくこと、死後の手続きを誰かに委任しておくこと、その費用を準備しておくこと。記事では、こうした備えの必要性が紹介されていました。
読みながら私が気になったのは、準備をしないまま亡くなった場合のことです。
相続人や頼れる家族がいなければ、財産の整理や部屋の明渡し、契約の解約などは、最終的に誰が行うのでしょうか。
そこが分からないままだと、備えの必要性も実感しにくいと思います。
今回は、「何も準備していなければ誰が動くのか」を出発点に、誰に何を頼めるのか、どのような費用が必要になるのかを整理します。

相談を受ける中で、相続人がいない方に出会うことがある
おひとりで暮らしている方は、今では珍しくありません。
一方、私がこれまでお受けしてきたご相談の中では、法律上の相続人がまったくいない方は、まだそれほど多くありません。
配偶者や子がいなくても、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースがあるためです。
ただし、単身世帯は増えています。兄弟姉妹がすでに亡くなり、甥や姪もいない方は、今後増えていくと考えられます。
また、法律上の相続人がいても、疎遠で連絡が取れない、相続人全員が相続放棄をするなど、実際には手続きを担う人がいないケースもあります。

今は少数に見えても、早めに備えを考えておく意味はあると思います。
相続人がいない場合、残った財産は最終的に国庫へ
誰が法定相続人になるかは、民法で順番が決まっています。
| 順位 | 相続人になる人 |
|---|---|
| 常に相続人 | 配偶者 |
| 第一順位 | 子。子が先に亡くなっている場合は孫など |
| 第二順位 | 父母。父母が亡くなっている場合は祖父母など |
| 第三順位 | 兄弟姉妹。兄弟姉妹が先に亡くなっている場合は甥・姪 |
配偶者は、各順位の相続人とともに相続人になります。第一順位の相続人がいれば、父母や兄弟姉妹は相続人になりません。

相続人の存在が明らかでない場合や、相続人全員が相続放棄をして相続する人がいなくなった場合には、家庭裁判所が相続財産清算人を選任することがあります。
相続財産清算人は、亡くなった方の財産を調べ、債権者への支払いや必要な換価処分などを行います。
内縁の配偶者や、亡くなった方の療養看護に努めた方などが、家庭裁判所の判断により「特別縁故者」として財産の分与を受ける場合もあります。
こうした手続きを経ても残った財産がある場合、その残余財産が国庫に帰属します。
亡くなった時点で、すぐに国のものになるわけではありません。
そして重要なのは、原則として、利害関係人または検察官から申立てがなければ、相続財産清算人の選任手続きは始まらないということです。
亡くなった後には、相続以外の手続きも発生する
亡くなった後には、財産の承継とは別に、さまざまな実務が発生します。

| 分類 | 主な手続き |
|---|---|
| 葬送関係 | 遺体の引取り、死亡届、火葬、葬儀、納骨 |
| 行政関係 | 健康保険・介護保険関係の届出、年金関係の手続き |
| 住居関係 | 賃貸借契約の終了、家賃や施設利用料の精算、家財の整理、明渡し |
| 契約関係 | 電気・ガス・水道、電話、インターネット、クレジットカード、サブスクリプションなどの解約 |
| 財産関係 | 預貯金、有価証券、不動産などの調査・換価・承継 |
| その他 | パソコンやスマートフォン、SNS、デジタル資産、ペットの引取り先 |
このうちデジタル資産や契約の整理については、デジタル終活のすすめ|自分でも分からなくなる前に、資産と契約を整理するで詳しく書いています。
このうちデジタル資産や契約の整理については、デジタル終活のすすめ|自分でも分からなくなる前に、資産と契約を整理するで詳しく書いています。
これらは、すべて同じ人が、同じ権限で行えるわけではありません。
遺言執行者が行うのは、基本的に遺言の内容を実現するための手続きです。葬儀や納骨、家財処分、公共料金の解約などまで当然に行えるわけではありません。
反対に、死後事務委任契約を結んでいても、不動産登記、遺産の処分、税務申告などは、契約だけで自由に行えるとは限りません。手続きの内容によって、相続財産清算人、司法書士、税理士、弁護士などの関与が必要になります。
そのため、「誰か一人を決めればすべて終わる」とは限らない点に注意が必要です。
相続財産清算人は、自動的に選ばれるわけではない
相続財産清算人の選任を申し立てられるのは、利害関係人と検察官です。
利害関係人には、亡くなった方の債権者、特定遺贈を受けた人、特別縁故者になり得る人、不動産の共有者などが含まれます。

申立てに必要な法定費用は、収入印紙800円、郵便料、官報公告料です。裁判所の案内では、官報公告料は5,582円とされています。
ただし、相続財産だけでは清算人の報酬や管理費用を賄えない可能性がある場合、家庭裁判所から予納金の納付を求められることがあります。
予納金には全国一律の金額があるわけではありません。財産の内容、管理や売却の難しさ、想定される事務量などによって、家庭裁判所が個別に判断します。
一般には数十万円以上になることもありますが、「必ず100万円かかる」と決まっているわけではありません。
申立人が納めた予納金は、相続財産から清算費用を支払える場合には、全部または一部が返還されることがあります。一方、財産が不足すれば、返還されない可能性があります。
そのため、債権額が少ない病院や施設、大家などにとっては、費用と時間をかけてまで申立てを行う合理性が乏しいことがあります。
「制度があるから誰かが手続きをしてくれる」とは限らないのです。
火葬を行う人がいなければ、市町村が対応する
身元が判明している方が亡くなり、遺体の埋葬または火葬を行う人がいない場合は、死亡地の市町村長が墓地埋葬法に基づいて対応します。
市町村が火葬等の費用を立て替えた場合、一定の法的根拠に基づき、亡くなった方の遺留金や預貯金をその費用に充てることがあります。
厚生労働省と法務省の手引では、生活保護法第76条が適用される場合、市町村は相続人や亡くなった方の債権者等に優先して、遺留金や預貯金を葬祭費用に充てることができるとされています。この場合、預貯金の払戻しに際して、相続人等への意思確認は必要ないと示されています。

同じ手引では、墓地埋葬法に基づいて市町村が火葬等を行った場合についても、行旅病人及行旅死亡人取扱法を準用する形で、同様に相続人や債権者等に優先して遺留金を火葬等の費用に充てられるとされています。生活保護の葬祭扶助による場合も、墓地埋葬法による場合も、費用の回収については同じ考え方が取られています。
ただし、これは市町村が葬儀、納骨、家財処分、賃貸住宅の明渡し、契約解約まで、すべて行ってくれるという意味ではありません。
また、生活保護受給者であれば必ず葬祭扶助が支給されるわけでもありません。生活保護法上の要件を満たし、葬祭を行う人から申請があった場合などに利用される制度です。
公的な仕組みで最低限の火葬等が行われる場合はありますが、その後の財産整理や住居の明渡しまで自動的に進むわけではないのです。
負担が周囲の人に移ることがある
手続きが進まなくても、現実の問題が消えるわけではありません。
賃貸住宅であれば、大家は部屋を次の人に貸せない状態になります。ただし、大家が相続財産である家財を自由に処分できるわけではなく、法的な手続きが必要になる場合があります。
連帯保証人がいれば、保証契約の範囲内で未払家賃などを請求される可能性があります。
一方、単に「緊急連絡先」として登録されているだけの人には、通常、未払家賃や処分費用を支払う法的義務はありません。連絡や協力を求められることはあっても、連帯保証人と同じ立場ではありません。
ペットがいれば、財産手続きとは関係なく、亡くなった日から誰かが世話をする必要があります。

財産が少ないケースで問題になるのは、「誰が遺産を受け取るか」だけではありません。
誰が動き、誰が費用を払い、どの権限で片づけるのかという問題です。
備えは四つの機能に分けて考える
必要な備えは、次の四つに分けると整理しやすくなります。

1.財産の行き先を決める
遺言で、財産を誰やどの団体に渡すのかを定めます。
相続人がいない場合は、単に遺言執行者を指定するだけでなく、「誰に、どの財産を遺贈するのか」を明確にすることが重要です。
なお、相続人がいる場合の備え方は、これとは考え方が変わります。相続税や保険の使いどころについては、1,500万円の相続対策に、保険は要りませんで整理しています。
なお、相続人がいる場合の備え方は、これとは考え方が変わります。相続税や保険の使いどころについては、1,500万円の相続対策に、保険は要りませんで整理しています。
2.死後事務を行う人を決める
葬儀、納骨、行政への届出、公共料金の解約、家財整理などは、死後事務委任契約で依頼内容を具体的に定めます。
遺言執行者と死後事務の受任者を同じ人にすることもできますが、それぞれの権限と報酬を契約書で区別しておく必要があります。
なお、遺言で遺言執行者に指定された人が、必ず就任してくれるとは限りません。遺言書に名前を書くだけでなく、事前に本人の承諾を得て、報酬、依頼する範囲、死亡時の連絡方法まで確認しておくことが大切です。
法人や専門職へ依頼する場合も、遺言への記載だけで済ませず、契約内容、報酬、必要書類、死亡時の連絡方法を事前に確認します。
3.費用の原資を準備する
死亡したからといって銀行口座が直ちに自動凍結されるわけではありませんが、金融機関が死亡を知れば、一般に取引が制限されます。
そのため、亡くなった直後の葬儀費用や家財処分費用を、誰がどのように支払うのかを決めておく必要があります。
預託金、信託、受取人を指定した生命保険などが選択肢になります。
死亡保険金は、原則として指定された受取人の固有財産となり、遺産分割を経ずに請求できます。ただし、実際の支払いまでには保険会社への請求と審査が必要です。また、受取人が死後事務に使うことについて、事前の合意や契約も必要になります。
4.死亡を知らせる仕組みを作る
契約を作っても、受任者が死亡を知らなければ動けません。
定期連絡、見守りサービス、緊急連絡カード、医療機関や施設への連絡先登録などにより、「誰が気づき、誰に連絡するか」を決めておく必要があります。
なお、判断能力が低下した後の財産管理まで備える場合は、これとは別に任意後見契約や財産管理等委任契約を検討します。
まとめて一つの窓口に依頼する方法
手続きをできるだけ一つの窓口にまとめたい場合は、信託銀行、高齢者等終身サポート事業者、弁護士や司法書士などに相談する方法があります。
ただし、「預けるお金」と「手数料・報酬」は分けて考える必要があります。

例えば、三井住友信託銀行の「おひとりさま信託(金銭信託タイプ)」は、最低預入額が300万円です。
この300万円はすべてが手数料になるわけではなく、死後事務に必要な費用を支払うための信託財産です。
公表されている信託報酬は、設定時33,000円、終了時110,000円に契約年数1年当たり6,600円を加えた額です。
ただし、この費用には、提携する一般社団法人との死後事務委任契約に関する費用や、同法人への報酬は含まれていません。
また、遺言信託は、遺言書の作成支援、保管、遺言執行を行う別の商品です。死後事務まで当然に含まれるものではありません。
同じ三井住友信託銀行でも、遺言信託の基本手数料はプランにより330,000円または880,000円で、遺言執行時の最低報酬もプランにより異なります。公正証書作成費用、登記費用、税理士報酬などが別に必要になることもあります。
したがって、「信託銀行なら総額○万円」と一律に示すより、次のように分けて比較する方が正確です。
| 比較する項目 | 内容 |
|---|---|
| 初期手数料 | 契約時や遺言作成時に支払う報酬 |
| 継続費用 | 年間管理料、見守り費用など |
| 実行時報酬 | 遺言執行、死後事務を行った際の報酬 |
| 預託金・信託金 | 葬儀、納骨、家財処分などに使う本人の資金 |
| 外部費用 | 葬儀社、納骨先、家財処分業者、司法書士、税理士などへの支払い |
| 解約時の取扱い | 返金される金額、返金されない手数料 |
窓口を一本化できることや、法人が継続的に対応することには価値があります。ただし、商品名や契約先ごとに、対応範囲と料金体系を確認することが欠かせません。
自分で組み合わせる方法
一つの窓口では完結しませんが、必要な機能を個別に組み合わせる方法もあります。

遺言
自筆証書遺言書を法務局に預ける自筆証書遺言書保管制度の手数料は、遺言書1通につき3,900円です。
ただし、法務局は遺言内容の法的な有効性まで審査するわけではありません。相続人がいない場合や、財産の種類が多い場合は、作成段階で専門家に確認してもらうことも検討したいところです。
公正証書遺言の手数料は、財産額と財産を渡す相手の人数などにより変わります。専門家に原案作成を依頼する場合は、公証役場の手数料とは別に専門家報酬がかかります。
死後事務委任契約
弁護士、司法書士、行政書士、法人などに依頼できますが、対応できる業務は資格や契約内容によって異なります。
契約書の作成報酬、死後事務を実行する際の報酬、葬儀や家財処分の実費を分けて確認する必要があります。
公正証書にする場合の公証人手数料は、契約内容や目的価額により計算されます。「公正証書化だけで5万~10万円」と一律に決まっているわけではありません。
費用の原資
預託金、信託、生命保険などを利用します。
預託金は手数料ではなく、将来の葬儀や家財処分などに使うための本人のお金です。使わなかった場合に返還されるのか、残金が誰に渡るのかも確認します。
見守りと連絡
地域包括支援センターは、高齢者の生活上の困り事について無料で相談できる窓口です。ただし、すべてのセンターが継続的な安否確認を直接行うわけではありません。
社会福祉協議会の日常生活自立支援事業は、主に認知症、知的障害、精神障害などにより判断能力が不十分な方を対象とする制度です。一般的な終活の見守りサービスとは対象や目的が異なります。
福岡市社会福祉協議会には二つの異なる仕組みがある
福岡市社会福祉協議会には、仕組みの異なる二つの終活支援事業があります。

| 事業 | 主な仕組み | 公表されている費用 |
|---|---|---|
| ずーっとあんしん安らか事業 | 預託金を社協が預かり、死後に葬儀・納骨・家財処分などを実施 | 入会金15,000円、年会費10,000円、預託金500,000円から。預託金の中から執行費用として50,000円がかかり、家財処分費は別途見積り |
| やすらかパック事業 | 月額利用料と保険の仕組みを利用して死後事務を実施 | 月額3,000円~8,500円。年齢・健康状態等により異なる。途中解約しても、支払済みの利用料は返金されない |
「ずーっとあんしん安らか事業」は原則70歳以上、「やすらかパック事業」は40歳以上90歳未満など、それぞれ対象要件が異なります。
また、やすらかパック事業では、遺言書の作成や保険会社の引受要件を満たすことなどが必要です。
名称や料金を混同せず、自分が対象になるかを窓口で確認する必要があります。
同じ福岡市社会福祉協議会の事業でも、預託金方式と保険を利用した月額方式では、途中解約時の取扱いや返還されるお金が異なります。契約時には、手数料、預託金、保険料を分けて確認する必要があります。
北九州市社会福祉協議会では終活相談を受け付けていますが、福岡市の事業と同じ内容の死後事務を一括して提供しているとは限りません。
自治体の支援は、地域によって要件が異なる
自治体の終活支援は、対象者や支援内容が地域によって大きく異なります。

| 項目 | 名古屋市 | 横須賀市 | 神戸市 |
|---|---|---|---|
| 事業名 | あんしんエンディングサポート事業 | エンディングプラン・サポート事業 | エンディングプラン・サポート事業 |
| 年齢等 | 65歳以上で一人暮らし | 高齢者等 | おおむね65歳以上 |
| 資産・収入要件 | 市民税非課税、預貯金1,000万円以下 | 月収18万円以下、預貯金等250万円以下程度 | 公表ページ上、明確な資産上限なし |
| 不動産 | 現在居住中のもの以外を所有していない | 固定資産評価額500万円以下程度 | 公表ページ上、明確な要件なし |
| 親族等 | 子・孫がおらず、葬儀等を行える親族がいないことなど | 原則、頼れる身寄りがないこと | 親族がいても疎遠で頼れない場合を含む |
| 遺言 | 原則、遺言執行者を定めた遺言が必要 | 明示なし | 明示なし |
| 預託 | 葬儀・納骨25万円、家財処分は見積額 | 協力葬儀社との契約内容による | 葬祭事業者との契約内容による |
| 生活保護 | 対象外 | 個別確認 | 対象外 |
名古屋市の預貯金要件は、2024年2月に350万円以下から1,000万円以下へ緩和されています。
横須賀市と神戸市は、市が葬儀・納骨を直接実施するというより、協力事業者との生前契約を支援し、連絡や履行確認などを行う仕組みです。
名古屋市の「あんしんエンディングサポート事業」の相談窓口は、名古屋市社会福祉協議会の権利擁護推進部です。対象になるか分からない場合も、まずは窓口へ確認してみるとよいでしょう。
ここで、公的な仕組みを分けて考える必要があります。福岡市社会福祉協議会の二つの事業、名古屋市と神戸市の事業では、生活保護を受給していないことが利用要件になっています。これらは、生前に本人が契約し、費用や預託金を準備しておく事前契約型の支援です。
一方、要件を満たす生活保護受給者等については生活保護法上の葬祭扶助があり、埋葬や火葬を行う人がいない場合には墓地埋葬法に基づいて市町村が対応します。事前契約型の終活支援事業と、葬祭扶助や墓地埋葬法による対応は、同じ制度ではなく別のルートです。
ただし、葬祭扶助や墓地埋葬法による対応があるからといって、家財処分、賃貸住宅の明渡し、契約の解約、相続財産の清算まで、すべて公費で行われるわけではありません。
ご自身の地域で制度が見つからない場合は、市区町村名と「終活支援」「身寄りのない高齢者支援」などの言葉で検索するほか、地域包括支援センターや社会福祉協議会に相談してみてください。
契約前に確認しておきたいこと
高齢者等終身サポート事業では、費用の一部を先に預ける場合があります。
契約前には、少なくとも次の点を確認したいところです。

- 入会金、年会費、利用時報酬、預託金の区別
- 預託金が事業者自身の財産と分別して管理されているか
- 信託銀行、弁護士など第三者が管理に関与しているか
- 預託金の残高や利用状況を確認できるか
- 解約できるか、どの部分が返金されるか
- 事業者が廃業・破産した場合の対応
- 判断能力が低下した後の契約管理
- 死後、契約が履行されたことを誰が確認するか
- 事業者への寄付や遺贈が契約条件になっていないか
- 弁護士、司法書士、税理士などが必要な手続きの費用
国が公表している「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」でも、重要事項説明、費用の内訳、預託金の管理方法、解約・返金、契約履行の確認などが重要とされています。
改正社会福祉法により、公的な支援の枠組みが広がる
2026年6月19日、「社会福祉法等の一部を改正する法律」が成立し、同年6月25日に令和8年法律第51号として公布されました。
改正法では、一定の要件の下で、日常生活支援、入院・入所の手続き、死後事務などを行う事業が第二種社会福祉事業に位置づけられます。

法律全体の原則的な施行日は2027年4月1日です。ただし、この支援事業に関する部分の施行日は「公布後2年以内の政令で定める日」とされており、原則施行日とは異なります。
そのため、この部分の具体的な施行日は2026年9月時点では決まっていません。公布日が2026年6月25日であることから、遅くとも2028年6月までに施行されることになります。
また、改正後も、全国すべての社会福祉協議会が一律に死後事務を引き受けるわけではありません。具体的な対象者、料金、実施主体、支援内容は、今後の政省令や各地域の体制によって決まります。
制度化されたからすぐに全国どこでも同じ支援が受けられる、と考えない方がよいでしょう。
まとめ:大切なのは、権限・実行者・資金・連絡方法をそろえること
相続人がいない場合、亡くなった後の手続きを始めるには、手続きを行う権限を持つ人と、費用を支払うための資金が必要です。
相続財産清算人という制度はありますが、自動的に選任されるわけではありません。申立人が必要であり、場合によっては予納金も必要です。
また、公的な仕組みによって火葬等が行われる場合はありますが、部屋の明渡し、家財処分、契約の解約、財産の整理まですべて自動的に行われるわけではありません。
備えを考えるときは、次の四つを確認します。
- 財産を誰に渡すのか
- 死後事務を誰が行うのか
- 必要な費用をどう確保するのか
- 死亡や緊急事態を誰に知らせるのか
資産に余裕があれば、一つの窓口にまとめて依頼する方法があります。
一方、費用を抑えたい場合は、遺言、死後事務委任契約、自治体や社会福祉協議会の事業、預託金や生命保険などを組み合わせる方法があります。
ただし、「数万円だけで死後の手続きがすべて完了する」とは限りません。遺言書や契約書を作る費用とは別に、葬儀、納骨、家財処分、住居の明渡しなどに使う資金が必要だからです。
まずは、次の三点を確認するところからで十分です。
- 自分に法律上の相続人がいるか
- 緊急時や死亡時に誰へ連絡が行くか
- 葬儀や家財処分に使える資金をどのように確保するか
早めに整理しておけば、選べる方法も多くなります。
参考資料
- 裁判所「相続財産清算人の選任」
- 裁判所「特別縁故者に対する相続財産分与」
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」
- 厚生労働省・法務省「身寄りのない方が亡くなられた場合の遺留金等の取扱いの手引」
- 内閣官房ほか「高齢者等終身サポート事業者ガイドライン」(令和6年6月)
- 名古屋市「あんしんエンディングサポート事業」
- 横須賀市「エンディングプラン・サポート事業」
- 神戸市「エンディングプラン・サポート事業」
- 福岡市社会福祉協議会「ずーっとあんしん安らか事業」
- 福岡市社会福祉協議会「やすらかパック事業」
- 三井住友信託銀行「おひとりさま信託」
- 日本公証人連合会「公証人手数料」
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律案の概要」
- 参議院「社会福祉法等の一部を改正する法律案・議案審議情報」
※この記事は、一般的な制度の仕組みを説明したものです。費用、対象要件、サービス内容は、2026年9月時点で各機関が公表している情報をもとにしています。相続財産清算人の予納金や各事業の利用条件は、個別の事情や地域によって異なります。具体的な法律手続きは弁護士・司法書士、税務手続きは税理士、各支援事業については実施機関へご確認ください。