ブログ一覧へ戻る

教育費、住宅費、老後資金。人生の3大資金と呼ばれます。

別々の問題に見えますが、実際にはつながっています。そして多くの家庭で、同じ時期に重なります。

前回は、家計管理で把握した数字を将来へつなげるライフプランについて考えました。

ライフプランを作ると、はっきり見えてくるものがあります。

それは、家計の山場がいつ来るかです。

住宅ローンを大きく組みすぎると、教育費や老後資金に影響します。教育費に大きくお金を使う時期と、老後資金を準備する時期は重なります。

一つひとつを別々に考えていると、この全体のバランスが見えません。

今回は、3つの資金がどのように関係し合っているのかを考えます。

3大資金は、全員に当てはまるわけではない

まず、前提から確認しておきます。

3大資金という言葉はよく使われますが、すべての方に当てはまるわけではありません。

生涯独身で賃貸に住み続ける方、結婚しても子どもを持たない共働き世帯、いわゆるDINKs(ディンクス)も増えてきました。

さまざまな家族のかたちを表すイメージ
暮らし方は多様になり、3大資金がそのまま当てはまらない世帯も増えています。

ライフプランを作る立場から見ると、教育費と住宅費を考えなくてよい場合は、試算がとても楽になります。

一概には言えませんが、そうした世帯は資産に余裕があることが多いと感じます。教育費と住宅費がかからない分を貯蓄に回せるためです。

考えるべきものが老後資金だけであれば、選択肢はかなり広がります。早期に退職して資産で暮らすFIREのような生き方も、現実的な選択肢になります。

ただし、教育費や住宅購入費がかからないからといって、必ず家計に余裕があるとは限りません。

賃貸で暮らし続ける場合、老後も家賃の支払いが続きます。住宅ローンのように、完済して支払いが終わるということがありません。

また、お子さんがいない場合、頼れる親族がいなければ、入院や介護のときに誰が支えるのか、身元保証をどうするのか、亡くなった後の手続きや財産を誰に託すのかを、あらかじめ考えておく必要があります。

この点については、身寄りのない単身高齢者を支える終活支援でも触れました。

どの状況にも、良い面と難しい面があります。大切なのは、自分の家庭にはどの資金が必要で、どれが必要ないのかを、まず整理することです。

多くの家庭は「住宅・教育・老後」の順で訪れる

お子さんがいるご家庭の場合、3大資金はおおむね順番にやってきます。

よくあるのは、お子さんが小学校に入る頃に家が手狭になり、住宅の購入を検討し始めるパターンです。

そこから、住宅資金、教育資金、老後資金という順番で山場が訪れます。

  • 30代から40代:住宅の購入と、ローン返済の始まり
  • 40代から50代:教育費が本格的にかかる時期
  • 50代から60代:退職を意識し、老後資金の準備が必要になる時期
住宅・教育・老後の順に訪れる家計の山場を示す図
多くの家庭では、住宅・教育・老後の順に大きな支出の時期がやってきます。

この順番であれば、一つずつ乗り越えていくこともできます。住宅ローンの返済が進み、教育費が終わってから老後資金を準備する、という流れです。

問題は、この順番が崩れて重なってしまう場合です。

晩婚化で、3つが重なる家庭が増えている

近年は晩婚化が進み、3大資金が同じ時期に重なることが珍しくなくなりました。

相談の場で、こういうお話をうかがうことがあります。

60歳で定年を迎えたが、子どもはまだ高校生。これから大学進学を控えている。
定年と子どもの進学が重なる時期を示すイメージ
退職の時期と教育費のピークが重なる家庭が増えています。

このとき、家計には3つのことが同時に起きています。

  • 住宅ローンの返済が、まだ残っている
  • これから大学の教育費がかかる
  • 退職により、収入が下がる

収入が下がる時期に、最も大きな支出がやってくる。これが、3つが重なるということです。

重なったとき、何が起きるか

この状況になると、住宅費を支払いながら、教育費を中心に家計を組み立てざるを得ません。

そして、この時点で老後資金が準備できていない場合、選択肢はかなり限られます。

率直に申し上げると、長く働き続けるしかないケースがほとんどです。

貯蓄がない以上、収入を得ながら老後資金を作っていくしか方法がないからです。

もちろん、働き続けること自体が悪いわけではありません。健康で、働く場所があり、本人が望んでいるのであれば、それも一つの生き方です。

ただ、「働き続けたい」と選ぶのと、「働き続けるしかない」と迫られるのとでは、意味がまったく違います

前者は選択ですが、後者は選択肢がない状態です。

そしてもう一つ、見落としてはいけないことがあります。

働き続けられる保証は、どこにもありません。

体調を崩すこともあれば、勤め先の事情で働けなくなることもあります。年齢が上がるほど、希望する条件の仕事が見つかりにくくなるのも現実です。

「長く働けば何とかなる」だけを前提に置いてしまうのは、危険だと考えています。

準備できている家庭は、何が違うか

一方で、同じように3つが重なっても、落ち着いて対応できているご家庭もあります。

何が違うのか。相談を通じて感じるのは、次のような点です。

進学の道筋を、早い段階で立てている

どの時期に、どのくらいの教育費がかかりそうかを、あらかじめ見込んでいます。金額を正確に当てるというより、時期を把握しているという感覚です。

共働きで世帯収入を増やし、長期で備えている

短期間で一気に貯めるのではなく、長い時間をかけて準備しています。

優先順位を、はっきり決めている

教育費と住居費の両立が難しいと判断し、住まいは賃貸や中古住宅と割り切って、教育費の確保を優先するご家庭もあります。

家族で優先順位を話し合うイメージ
何を優先するかを決めている家庭は、重なる時期にも対応しやすくなります。

持ち家が正解で賃貸が不正解、という話ではありません。

ただし、賃貸を選ぶ場合は、先ほど触れたとおり老後も家賃の支払いが続きます。そのことを織り込んだうえで、老後資金を少し厚めに準備しておく。そこまで考えて選んでいるかどうかが分かれ目になります。

その家庭が何を大切にしたいかによって、答えは変わります。あくまでも、その方の生き方や価値観によるものが大きいと感じます。

大切なのは、優先順位を自分たちで決めているかどうかです。

「同時に考える」とは、同時に貯め始めることではない

ここまで「3つを同時に考える」と書いてきましたが、一つ誤解のないようにお伝えしておきます。

同時に考えるというのは、教育費、住宅費、老後資金を、今すぐ同じ金額ずつ貯め始めることではありません。

そうしようとすれば、多くのご家庭で手が回らなくなります。

そうではなく、いつ、いくら必要になるのかを同じ時間軸に並べ、貯める順番と金額を決めることです。

  • 教育費が必要になるのは、いつ頃か
  • 住宅ローンは、何歳まで続くのか
  • 老後資金は、いつから、いくら準備するのか
  • 退職金や年金は、どのくらい見込めるのか

これらをライフプランに入れて並べると、家計の負担が大きくなる時期が見えてきます。

将来を完全に予測することはできません。それでも、支出が重なる時期を早めに知っておけば、住宅の予算を抑える、教育費を計画的に準備する、働き方を見直すなど、打てる手が増えます。

順番を決められること。それが、同時に考えることの意味です。

土台は「収入の8割から9割で暮らす」

では、3つの資金をどう築いていけばよいのでしょうか。

基本になるのは、収入の8割から9割で生活するベースを作ることです。

手取り収入をすべて使い切る生活では、どの資金も準備できません。まず、収入より少ない金額で暮らす形を作ります。

もっとも、8割から9割という数字は、絶対の割合ではありません。家族構成、収入、いま人生のどの時期にいるかによって、無理のない水準は変わります。目安として受け止めてください。

収入の8〜9割で生活し、残りを準備に回す考え方の図
収入をすべて使い切らない形を作ることが、3つの資金の土台になります。

この土台があると、残りを住宅、教育、老後のどれに配分するかを考えられるようになります。

具体的な方法は、これまでのシリーズで取り上げてきました。先取り貯蓄で貯める仕組みを作り、生活防衛資金で万一に備える。この二つが整っていれば、土台としては十分です。

人生には「貯め時」と「使い時」がある

ただし、ずっと同じ割合で貯め続ける必要はありません。

人生には、貯め時使い時があります。

  • 結婚前や、子どもが小さいうち。教育費がまだ本格化していない時期は、貯め時
  • 子どもの進学が重なる時期や、住宅を購入した直後は、使い時
貯め時と使い時のメリハリを示す図
時期によって強弱をつけることで、無理なく続けられます。

貯め時には、収入の7割で生活するくらいまで引き締める。使い時には、赤字にならない程度に抑える。

このようにメリハリをつけることが大切です。

ずっと我慢を続けるのは現実的ではありませんし、続きません。貯め時にしっかり貯めておけば、使い時に必要なお金を使えます。

いつが自分の家庭の貯め時なのか。それを知るためにも、3つの資金を並べて見ておく必要があります。

それでも苦しくなったときに、できること

準備をしていても、想定どおりに進まないことはあります。

収入が減る、病気になる、進路が変わる。そうしたときに支払いが苦しくなることもあります。

そういう場合でも、できることはあります。

教育費については、返済不要の制度から確認する

まず確認したいのは、高等教育の修学支援制度による授業料や入学金の減免、返還不要の給付型奨学金です。返済の必要がない制度から順に見ていきます。

そのうえで貸与型の奨学金を検討することになりますが、ここは慎重に考えてください。貸与型は、将来お子さん本人が返していく借金です。いくら借りるのか、卒業後にどう返すのかまで、家族で話し合っておく必要があります。

住宅ローンについては、金融機関に相談する

支払いに苦慮する場合は、金融機関へ返済の相談をすることができます。返済期間の見直しなどで、当面の返済額を抑えられる場合があります。

ただし、これも良いことばかりではありません。返済期間が延びれば、その分だけ総返済額は増えます。当面をしのぐための手段であって、負担がなくなるわけではない点は理解しておきたいところです。

専門家や金融機関に相談するイメージ
苦しくなったときこそ、早めに相談することが選択肢を広げます。

意外に思われるかもしれませんが、返済が難しくなったときに相談できることを知らない方は少なくありません。

延滞してから動くのと、苦しくなりそうな段階で相談するのとでは、取れる選択肢がまったく違います。

その状況によって方法は違いますが、何かしらの解決方法はあります。だからこそ、関係先への相談が欠かせません。

一人で抱え込まないことが、いちばん大切です。

まとめ:正解は一つではない

教育費、住宅費、老後資金。この3つは、別々の問題ではありません。

多くの家庭で順番に訪れ、そして重なります。だからこそ、一つずつではなく、並べて考える必要があります。

3つを並べたうえで、何を優先するのか。それを決めるのは、それぞれのご家庭です。

住宅を持つことを大切にする家庭もあれば、住まいは割り切って教育費を優先する家庭もあります。どちらが正解ということはありません。

なかでも住宅は、金額が大きく、返済も長く続きます。50年住宅ローンについて書いた記事でも触れましたが、月々払えるかどうかだけで判断すると、後の教育費や老後資金を圧迫することがあります。

家計の全体像を見渡すイメージ
全体を並べて見ることで、自分の家庭の順番が決められます。

大切なのは、目の前の商品や制度だけで判断しないことです。

住宅ローン、保険、NISA、教育資金。どれも単独で考えるのではなく、家計全体と人生全体の中で位置づけて考える。

お金の悩みは、つながっています。だからこそ、家計管理からライフプランへ進むことが大切なのです。

次回は、3つのうち最も家庭による差が大きい教育資金について、いつ、どのように備えればよいのかを考えます。

前の記事:
ライフプランは、家計管理の延長にある